目や脳は重要な器官であり、血管内皮細胞の密着結合による高度なバリア機能が存在しています。このため異物として認識され得る薬物を身体の中へ送り込むことは簡単ではありません。網膜の疾患では、硝子体内に直接針を挿入するという薬物治療が行なわれていて、想像しただけでも患者さんの精神的・身体的負担が大きいことがわかると思います。現在取り組んでいる、核酸(短い塩基長のRNA:siRNA)を“くすり”とするための製剤化研究では、患者さんに負担のない形態および経路で体内に送り込み、さらに標的の細胞内に到達させるためのナノキャリア(運搬体)の設計を行っています。毎月、病院で注射が必要だった患者さんが、自宅で目薬をさすだけでよくなったら…治療の負担やリスクは一変します。この研究では、そんな未来の可能性を追いかけています。
「製剤設計学教室」では院生+4・5・6年生でチームを組み、技術を伝達し合っています
高島先生が指導するのは、薬を人に投与できる形に仕上げるための『製剤設計学講義』、錠剤を製造する『製剤設計学実習』、副作用を減らし効果を高める薬物送達技術を学ぶ『薬物送達学講義」など。薬を実際に「製剤化」するところまで体験できるカリキュラムが魅力です。既存医薬品の利便性を高めたり、付加価値をつけた形で再生するプロダクトライフサイクルマネジメント戦略が進められており、製剤はまさにニーズの高い研究分野。先生の所属する『製剤設計学教室』では、卒業生の約4割が企業研究者として活躍しているのも特長です。
チームで討論したり、学会での発表を経験するなど、社会に出て役立つスキルも身につけます
「雲外蒼天」。学生にはよくこの言葉を贈ります。失敗も貴重な経験です。辛いと感じる時は、成長している瞬間でもあります。ぜひそれを楽しんでください。頑張ってよかったと思える日が待っています。
東京薬科大学卒業。同大学の助手として、錠剤や顆粒などの固形医薬品の製造技術および薬物送達システムの開発に関する研究に従事。博士(薬学)の学位を取得後、核酸(短い二本鎖RNA:siRNA)を“くすり”とするための製剤設計研究に従事。同大学講師を経て、09年より准教授となり現在に至る。08年~09年にヘルシンキ大学薬学部(フィンランド)に客員研究員として留学。
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