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Take action!未来へのきっかけをつかもう

The Cover Story 鶴田浩之さんに聞く、「自分の未来を見つける」5つの方法

もの作りの喜びを知ること。 それが「変わるきっかけ」になった

大学生であり、会社経営者でもある鶴田浩之さん。最初にやりたいことを見つけたきっかけは何だったんだろう?
「今のようなインターネットのサービスを作り始めたのは、中学2年生の頃でした。もともと体が強くなかったので、学校に行けない時期があったんですよ。何もすることがなくて、閉塞感があって。そんなときに自分の好きなゲームの情報などについてのインターネットサイトを作って発信してみたら、たくさんの人が見に来てくれたので驚きました」
将来に不安を感じていたとき、自分が作ったものが10万人や100万人という単位の人々に受け入れられた。この 『もの作りの喜びを知る』という経験が、鶴田さんを変えるきっかけになった。
「インターネットによって、住んでいる場所や通っている学校、年齢は関係なく、自分のスキルや学んだことで自由に発信できる時代が来ているんじゃないかなと感じました。そこからガラッと生き方が変わったんですよ。自分が興味のあるものは、自分で勉強する。能動的に動いたり、あえて難しいことにチャレンジするようになりましたね」

彼が最初にインターネットに触ったのは、Windows98搭載のパソコンが自宅に来た7、8歳のとき。父は会社員、母は専業主婦の、ごく一般的な家庭で育ったのだそうだ。
「当時は長崎に住んでいて、自分の持っているものが十分に発揮できない環境だったので、フラットなインターネットの世界では好きなことがやれて、同じような価値観をもった人とつながれるということが大きかったですね」
そのときにインターネットを介して知り合った人たちと、鶴田さんはいまもつながっている。彼が設立した『株式会社Labit』の6人の創業メンバーのうち、1人とはチャットサイトで出会ってメールやSkypeで交流を続け、一緒にインターネットサービスの運営などをしてきた。そして知り合って3年後、やっと実際に会ったのだという。こういう友達のことを、鶴田さんは『WEB幼馴染』と呼んでいる。その友達とは7年ほどの付き合いになるが、誰よりもお互いのことがよくわかる仲になっているそうだ。

鶴田さんと5人のメンバーが働くオフィスでの仕事風景

「試行錯誤」がキーワード。トライ&エラーの繰り返しが大切

自分がやりたいことを形にするために、鶴田さんはどんなことをしてきたのか聞いてみた。
「僕はいままでの人生で、『○○をしよう』と思ってやったことがあまりないんです。自分が好きなことをやっていたら、それに必要な技術や知識が集まってきたというか。すごく自然にやってきたので、勉強や調べ物も苦にならないんですよ」
まず作りたいものがあって、そのために何が必要なのかを考えて、積み上げていく。そして小さいものから改善を続けていくうちに、プログラムの基本的な仕組みやデザイン、どういった企画が受けるかなど、そういうことが自然とわかるようになってきたのだそうだ。

「『試行錯誤』っていうキーワードが僕にはぴったり来るんですよね。試行錯誤ができるのは一番重要なスキルではないかと思っています。例えばWEBデザイナーやプログラマーでトライ&エラーが快感になっていて、試行錯誤するのが純粋に好きな人間っているんですよ。僕もその1人だったりします(笑)」
作ってみてダメだったら直すということを繰り返す。答えがないものを作っているから、プログラミング一つをとっても無限の表現の仕方があるのだと言う。
「もっとよくしよう、もっとプログラムを短く書こうとか、日々試行錯誤なんですよ。僕は14、15歳の時から試行錯誤を繰り返していたので、そのときに培った考え方が土台になって、いまを支えているんだと思います」

本を読む、物事を知る。自分に投資することを惜しまない

高校生のとき、鶴田さんはどんなことを考えて、何をしたいと思っていたのだろうか?
「当時はいくつか方針を立てていました。試行錯誤する、人と違うことをする。そして自分自身に投資する。投資ってお金だけじゃなくて、いろんなものに当てはまると思うんです。あの頃は年間400冊くらい本を読んでいて、週末に10冊くらいまとめ読みをしていました」
インターネットのサービスを始めたときに、自分が作ったものを誰かに提供することによって、最終的にお金になるという仕組みを理解して驚いたという。そこからビジネスや経済の勉強を始めて、そこで得たお金を自分に投資したのだそうだ。
「外見より、自分の内面を磨くためにお金を使っていましたね。本は何でも読みました。最初はインターネットの技術的な本を読み始めて、有名なIT企業の創業記もひととおり読み漁ったんですよ。企業の成り立ちがわかる本を読むと、自分も追体験ができるんですよね。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズのような、20歳くらいで創業した人の本を15歳で読み始めたので、『あと5年あれば何かできそうだな。日本にはまだ成功事例が少ないから、いつか自分がやってやろう』と思っていました。

失敗を恐れずに、とにかくやってみる!

「受験に失敗したくない」「落ちるのがイヤだ」と志望校のランクを下げてしまう高校生の話を聞くけれど、「まずはやってみること」と鶴田さんは言う。「失敗を恐れずに、とにかくやってみるという姿勢は大切だと思います。僕も実は取り返しがつかないくらいの失敗を繰り返して来ましたが、それでもなんとかやってるんですよね」
実は一度受験に失敗したという鶴田さん。ある大学に入学したのだが、どうしても行きたかった慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)を同じ年の9月に再受験し、晴れて合格した。
「僕が通っていたのは商業高校で、就職する人がほとんどでした。東京の私立四大に行く人は周りにいなかったので、独学で受験勉強をしていたんですが、先生にも『絶対に無理だからやめろ』と言われていたんですよ」
そこまでして、どうしてSFCに行きたかったのだろうか。
「SFCは先生も各分野の第一人者が揃っているし、ワークショップも充実していて、毎日楽しいです。天才プログラマーがいたり、僕みたいにビジネスをやっている人間がいたり。日本中からいろんな人が集まってきているので、刺激的ですね」

そんな彼が大学に入ったことがきっかけで、作ったサービスがある。
「僕が運営しているサービスは、全部自分の興味あることか、周りにある問題がベースになっているんです。大学に入ると高校までとは違って自分で受ける授業を選ばなくてはいけないんですけど、その時にすごく迷ったんですね。それで作ったiPhoneのアプリが『すごい時間割』だったんです」
このアプリはどの授業を選択するかという情報だけでなく、時間割を共有することで友達とのコミュニケーションにも役立つという優れもの。いまでは全国で数万人の大学生に使われている。大学生たちのいろんな意見を取り入れつつ改良を続けて、この春のアップデートでは新機能も搭載されるそうだ。

『すごい時間割』

大切なのは、「今日をどんな風に生きるか」

「実は僕、目標や夢をあえて立てないようにしているんです。重要なのは『今日をどんな風に生きるか』だと思っているから。今日の自分を3年後の自分が誇りに思えるような生き方をしたいですね。高校生の頃にやりたいと考えていたことで、まだできていないことも多いんですけど、まったく予想していなかったのにできたことも多いんです。『PRAY FOR JAPAN』もそうでした」

『PRAY FOR JAPAN』という言葉を、みんなは聞いたことがあるだろうか。2011年3月11日に起こった東日本大震災の当夜、鶴田さんが立ち上げたWebサイト『prayforjapan.jp』は、現在までに国内外から700万人を超えるアクセスがあり、大きな反響を呼んだ。そして2011年4月に書籍化された『PRAY FOR JAPAN - 3.11 世界中が祈りはじめた日』では、印税の全額を復興支援のために寄付。いまでは教科書に採用されたり、授業に使われるなどしている。
「東北には1,100冊寄贈して、避難所などに置いてもらいました。1年近く経ったいまでも、『本を読みました』という手紙を中学3年生の女の子からもらったりしています。いままでにもらった手紙やメールは1,000件近くにもなるんですよ」

東日本大震災が起きた当日は、誰もが混乱していた。そんななか、誰よりも早く鶴田さんが『prayforjapan.jp』のサイトを立ち上げたのには理由がある。
2010年の夏、17歳の鶴田さんは北インドのラダック地方を旅していた。ちょうどそのとき、ヒマラヤの山々から流れ込んだ鉄砲水による大洪水が起きて、1,000人近い人々が亡くなるという大惨事があった。そのとき鶴田さんは現地でできることをと、土砂を掻き出す作業などを手伝ったのだそうだ。
そして、その半年後、東日本大震災が起こった。
半年間に2回も大きな災害を経験した彼は強いショックを受け、人間の無力さ、自然の脅威を思い知らされたのだという。その経験があったからこそ、自動車免許合宿中に栃木県那須で被災したとき、停電と断水のなか、身近にあるものを使って『prayforjapan.jp』のサイトをすぐに立ち上げたのだそうだ。そしてこのサイトを基にして、4月には本が出版された。
「長期的に人の支えになるようなものが必要だと感じました。1年後、2年後、心の中にぽっかり空いた穴を抱えている人たちの支えになりたいというのが、この本のコンセプトです」
2012年2月27日には、7つの言語に対応した電子書籍が配信された。日本国外でもダウンロードでき、海外の人たちにも見てもらいたいという思いをこめて作ったのだそうだ。

『PRAY FOR JAPAN』のウェブサイトと本。そして出版社に寄せられた読者からのたくさんの手紙

旅でインスピレーションを得ることが多いという鶴田さん。彼が撮影したニュージーランドの風景

未来に向かって、まず一歩踏み出してみよう

大学生で、会社経営者。そして彼の文章を楽しみに待つファンが数多くいるブロガーでもあり、フォトグラファーでもある。一見すると、鶴田さんはいろいろな才能に恵まれた特別な人のようだ。だけど彼がいまあるのは、自分のやりたいことにチャレンジし続けて、一つひとつ乗り越えてきたから。それがまた次の成果につながることもあるし、思わぬことが起きることもあるけれど、それも柔軟に受け止めて、また新しい道を探していく…。そうやって日々、彼は進んでいるのだ。
だから明日が見えないと怖がらずに、まず一歩踏み出してみよう。みんなの未来も、そこから始まるのだから。

鶴田浩之さんの、「自分の未来を見つける」5つの方法

1 「試行錯誤」することを好きになる

2 使う人から作る人になろう

3 自分自身に投資をする

4 旅するように生きる

5 全体像を把握する

トライ&エラーは重要なキーワード。最初から考え込むのではなくて、まずはいろんなことをやってみる。その中から自分が試行錯誤してできることを見つけられたら、それはすごく幸せなことだと思います。

何かを作ってみると、世界の見え方がそれ以前と以後で大きく変わります。与えられたものをただ使っているだけだと思考停止してしまうので、「自分だったらどう作ろうかな、こういうのがあったらいいな」という視点をもつのがいいと思います。

「この本を読むだけで自分がバージョンアップできるぞ」というような感じで、自分にいろんな経験をさせてあげましょう。時間を無駄にしない、旅行に行く、本を読む、映画を観る…。自分を成長させるつもりで、いろんなことにチャレンジを。

自分の人生だから、肩の力を抜いて、自由に生きるのもいいと思います。いままで行ったことがない場所に行く、知らない人に出会う、話しかけてみる。僕はそうやって旅から学んだことがとても多いんですよ。

物事を俯瞰して見ることも必要ですね。ゴールがどこで、それまでに何が必要なのか。モチベーションを上げるためにも、未来を見つめるという意味でも、いまの自分をより客観的に見られるようになって、視野が広がります。

鶴田浩之(@mocchicc)
1991年長崎県生まれ、21歳。
株式会社Labit代表取締役/慶應義塾大学環境情報学部2年。
中学時代からWebサービスを作り始め、16歳で起業、独立。東日本大震災の夜、停電中の避難所で『prayforjapan.jp』を設立し、700万人がアクセス。講談社から『PRAY FOR JAPAN - 3.11 世界中が祈りはじめた日』を監修・出版。2011年4月、株式会社Labitを創業。大学生向けのアプリケーション『すごい時間割』など運営。フォトグラファー・ブロガーとしても活動中。

The Beginning Story
未来へのきっかけをつかんだ高校生たち

The Beginning Story
未来へのきっかけをつかんだ高校生たち

東京都立山崎高等学校3年 小野 朋生さん

2年生のときには生徒会長を務め、中学・高校と6年間続けたバスケットボール部では常にスタメンという体育会系男子。でも実は小さい頃からよくスイーツを作っており、パティシエになるのが今の目標。

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構成・取材・文/平林朋子
撮影/金田邦男 デザイン/マイティ・マイティ