文系・理系どっちを選ぶ? 「好き」から考える 文理選択の方法

文系・理系どっちを選ぶ?「好き」から考える文理選択の方法

文系・理系コースに分かれる文理選択の時期を迎え、文系と理系のどちらを選べばいいのか、
悩んでいる高校生はきっと多いはず。
そこで、文理選択についてのみんなのお悩みを、リクルートが発行する進路指導・キャリア教育の専門誌である『キャリアガイダンス』編集部の林 知里さんと
リクルート進学総研の池内 摩耶さんに聞いた。

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文理選択って何?どうして重要なの?

「文系コース」と「理系コース」にクラス分けして受験に対応

「文系コース」と「理系コース」にクラス分けして受験に対応

文理選択とは、文系・理系どちらのコースに進むかを決定すること。多くの高校で、1年生の後半に選択し、2年生からは文系コース・理系コースにクラス分けされて、それに沿った教科や科目の勉強をすることになる。また、文理選択は大学の受験科目や入学後に学ぶ分野につながり、その先の就職にも影響するため、とても大事な機会だと言える。

池内さん
池内さん

以前は、1年生の12月か1月にパッと決めていましたが、将来を見すえて、じっくり時間をかけて選んでもらおうと、文理選択を考え始める時期が早まっています。一般的には、1年生の夏休み前に文理選択調査票が配られ、7月〜8月に開催されるオープンキャンパスへ行くなどして進学先を検討。9月から12月にかけて文理選択についてじっくり考えて、1月以降に文系・理系を決定しています

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文系・理系はどうやって決めればいい?

学びたい学問から考える

学びたい学問から考える

大学の学部は主に、文系・理系と、最近では文理融合型に分けられている。法学・経済学・文学・教育学などを学びたい場合は文系、医・薬・看護学、工学、理学、農学などを学びたい場合は、理系を選択するのが基本。文理融合型の場合は学部によって必要な科目が大きく異なるので、学校ページなどでしっかりチェックしておこう。

文理関係なく、いろいろな学部を見て、例えば『動物』『福祉』『環境問題』『心理』など、ちょっとでも気になるキーワードがあれば、深掘りをしてみて、違うなと思ったら引き返せばいいんです。文理選択をする高校1年生の今なら、いくらでも変更できますから

林さん
林さん

将来就きたい仕事・職業から考える

将来就きたい仕事・職業から考える

資格取得の必要な職業はもちろん、企業への就職においても大学で何を学んだかが重要視されるようになってきている。そこで、将来就きたい仕事・職業から、大学で学びたいことを考えて文理選択につなげるのも一つの手だ。

例えば職業カタログを見て、やってみたい、やりたくないでマルバツを付けていってもいいですね。
興味のある仕事に関係する学部のオープンキャンパスに行ってみて、本当にその学問がおもしろいかどうか考える。大学の先生の話を聞いたら、自分のイメージとは違った、ということがあるかもしれません。自分が学びたいと思える、もっと深く知りたい、やり続けられそう、という基準で選べばいいと思います

林さん
林さん

学びたい学問をオープンキャンパスでみつける

学びたい学問をオープンキャンパスでみつける

学びたい学問を考えるとき、実はオープンキャンパスへ行くことがとても役に立つ。

ぜひオープンキャンパスで見極めてほしいのは、入試科目ではなく、その大学の学部や学科で学べる内容と、『自分は、何の勉強だったら本気で取り組めるのか?』ということ。大学名よりも『おもしろそう』と思えるかどうかを大切にしてほしいですね。
大学では、高校までと違って、誰も勉強しろとは言ってくれません。最近は、大学も厳しくなってきて、しっかり勉強して、課題をクリアしたり、テストで合格点を取ったりしないと、卒業できなくなっています。さらに、入社試験や仕事に就いた後でも、自分が何を学んできたか、専門性や身につけた力を発揮していくことが求められます。
それを考えて、大学で、誰かに強制されなくても、積極的に授業を受けたり、本を読んで調べたり、課題に取り組むことができることは何なのか、ということを、オープンキャンパスの学部・学科紹介や模擬授業を受けながら探ってほしいのです。
同じ学部名でも、大学によって学べる内容が違ったり、学び方も、座学が多い・地域などに出るフィールドワークが多い・プレゼンテーションが重視される・卒論などの論文が必須などの特長があるので、自分が何をどんなふうに学びたいのか、リアルに想像しながら文理選択や大学、学部選びをしてほしいと思います

林さん
林さん
池内さん
池内さん

実際、オープンキャンパスの参加は早期化しています。1年生から参加する高校生が増えていて、2年生の参加者数が最多。1人あたりの参加した学校数と回数も、どんどん増えてきています

03

好きなことと得意な教科が違う場合は、
どうすればいい?

文理選択では、好きなことを優先して選ぶ

文理選択では、好きなことを優先して選ぶ

迷っているなら、好きなことを選んでほしいと思います。

文理選択は、大学選択につながり、将来の就職にも、ずっとつながっていくもの。もちろん途中で変えることも可能ですが、後悔しない選択をしたいですよね。
そう思ったときに、例えば『今数学が得意』というのは、今の自分の一部を切り取った状態。たとえ数学の偏差値が高くても、数学の勉強が好きではなかったら、それを続けていくことはしんどいですよね。
でも、好きなことならずっと勉強しても苦痛ではないし、やり続けていくことで専門性が高まり、得意になっていくと思うのです。
迷ったら、好きな方向に向かったほうがいい。そのほうが学び続けられるから。
今、高校1年生の時点での偏差値でいける大学や学部・学科を選ぶための文理選択はしないほうがいいと思います

林さん
林さん

受験の先、学ぶ分野や将来の仕事まで見すえた文理選択を

例えば、文系の学部に進んでも、調査や研究においては、実は数字から逃れられません。
一方、いろいろな企業の方から言われるのが、理系の人ほど英語をちゃんと学んでおいてほしいし、できれば留学も経験してほしいということ。
理系の学問や企業の最先端では、英語の論文があり、海外に進出する機会も多い。日本という狭い世界に閉じこもっていて、英語ができない研究者なんていらないと言われているほど。
大学入試という一時のために文理選択をしても、切り捨てた科目から逃れられるわけではないのです

林さん
林さん
池内さん
池内さん

今までの文理選択は、入試科目を考えて、文系だから数学はいらない、理系は古典を学ばなくていい、と切り落としていく傾向がありました。経済学部は文系だと思っている人が多いのですが、実は経済学を学ぶには数学が必須と言われています。そのため、例えば早稲田大学の政治経済学部は入学試験で数学を必須科目にすると発表しています。今、入試科目がこれだから、と決めても、自分が受験するころには変わっている可能性もあるので、入試科目を文理選択の決め手にしないほうがいいと思いますね

04

まだやりたいことがみつからない。
文理選択で迷ったら理系が正解?

安易な選択はNG!理系から文系にスイッチするのも実は大変

安易な選択はNG!理系から文系にスイッチするのも実は大変
池内さん
池内さん

保護者や先生の意見で文理選択をしてしまう人は少なくありません。
理系のほうが手に職をつけられるとか、給料がいいとか、就職率が高いと勧められている人もいるでしょう。そういうときによく『途中で理系から文系には変わることはできるけど、文系から理系にはいけない』と言われますが、これは間違いです。
例えば、2年生で理系コースに進んで、3年生から文系コースに変更した場合、文系コースの2年生の1年間で履修した国語の科目を個人的に勉強して追いつくのは大変なこと。
文系・理系どちらも途中で変更するのは難しいと覚悟したほうがいいと思います。
実際、就職率が下降すると、大学入試で理系学部の倍率が上がっていました。現在は就職率が安定しているから、文系の倍率が戻ってきていますが、就職しやすいという理由だけで決めて、仕事がつまらないと後悔したら悲しくありませんか

大学は、社会に出る前の最後の学生時代。高校までと違って、好きなことを勉強していいと言われているんだから、何がしたいか本気で考えて、文理選択をしたほうが幸せになれると思います。
大学入試でも、ペーパーテストの比率は段階的に下がってきて、主体的に、自分が何をやりたいと思っていて、そのために高校時代は何をしてきたのかが問われる入試も増えています。
好きなことがない、という人は、まだ出会っていないだけ。出会うためにも、世の中にはどんな学問があるのかを調べたり、関連する本を読んだり、オープンキャンパスで模擬授業をたくさん受けて、自分は何の学問だったら、4年間、勉強し続けられるのか、じっくり考えてほしいのです。
自分が興味のある分野がみつかったら、高校時代から、いろいろなことを体験したり、チャレンジして、それを入試も含めた自分の人生の武器へとつなげていってほしいと思います

林さん
林さん

プロフィール

  • 林 知里さん
    林 知里さん
  • 池内 摩耶さん
    池内 摩耶さん

「スタディサプリ」「スタディサプリ進路」を展開する株式会社リクルートマーケティングパートナーズにおける、高校生や高等教育の調査研究機関。進学〜高等教育〜就職(キャリア)までを視野に入れ、マーケット全体の動向を発信している。

2020年03月13日時点の情報です。