【社会学部】合格者の志望理由書を公開!NG例・プロの解説付き
社会学が扱う対象は幅広いため、「自分は何に関心があるのか」を具体的に示すことが重要だ。
合格者は、自分の関心をどう深め、どのように志望理由書にまとめていたのか、実例を見てみよう。
さらにライバルに差をつけるためには、その関心を大学でどう探究するかまで踏み込んで示すことが効果的だ。
先生の解説から、志望理由書に求められる視点や構成の考え方を、しっかりと身につけておこう。
目次
合格した先輩の志望理由書①
私立大学 社会系学部 社会系 学科 学校推薦型選抜(指定校) 合格者
志望理由書
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私は幅広い知識と実用的なスキルを身に付けながら、自分の関心のある分野への理解を深めることができるという点に魅力を感じ、貴学の○○社会学部を志望します。
高校3年生の春、私は子ども食堂で食事の配膳や子どもたちの世話の手伝いをするボランティアに参加しました。ボランティアに参加する中で私は子ども食堂の人々が日々培ってきた繋がりに感動すると共に、人間関係における繋がりは生きていく上で非常に大切なものだと感じました。デジタル化の進展により現実での人々の関わりが希薄になっている現代ですが、人々の繋がりはかけがえのないものであり、失ってはいけないものだと考えています。
この経験から、情報化が進んでいく中で、対面的な人間関係に内包する重要性を学んだ上でコミュニケーションによってより良い人間関係を構築できるような社会にするための貢献をしたいと考えるようになりました。そのような社会貢献を実現するためには、社会にある問題を発見し、解決策を考える力を養う必要があります。そこで出会ったのが、社会学における幅広い分野を学ぶことができる貴学の○○社会学部でした。貴学ではアプローチ科目で社会科学の多様な学問分野に触れながら、関心のある分野を探すことができると共に、他のコース科目を横断して学ぶことができるという点に、自分の探究心がくすぐられました。また、フィールド・ワークや企業インターンシップ、他大学との合同ゼミなど、学外で学べる機会が豊富なため、様々な人とのコミュニケーションを通して、自分の視野を広げることができるという点にも魅力を感じました。
また、貴学のオープンスクールに参加した際、肌にスッと馴染むような空気感を覚え、学内の雰囲気や先輩方の優しい様子が私に合っていると感じました。さらに、貴学では女子大学ならではの少人数教育が実践されており、きめ細かな指導が行われているので、仲間と意見を共有し合うことで学問への理解を深めることができたり、生徒と教員の距離が近いため、安心して先生方に相談することができると感じました。
以上のように、様々な社会問題に対し探究していく中で自分の視野を広げ、現代社会においてより良い人間関係の構築ができるような貢献がしたいです。私はボランティア活動と日々の学習で培った探究心と実践力を活かして、貴学で学ぶことを強く志望します。
先生の解説
ここからは、受験指導のプロ・神﨑史彦先生に、先輩の志望理由書の「良いところ」を解説していただき、「より良くするための視点」をアドバイスしていただこう。
※本解説はスタディサプリ進路の講師が、志望理由書のよい点とその理由を解説したものであり、合否の判断基準を示すものではありません
教えてくれるのは
神﨑史彦先生
株式会社カンザキメソッド代表取締役。スタディサプリ講師。私立学校研究家。
高大接続・教育コンサルタント。21世紀型教育機構リサーチ・フェロー。
大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。
延べ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文・志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。
現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。
GOODポイント
①◎「子ども食堂でのボランティア」という自分自身の体験をもとに、社会学という学問につながる問いを見い出したことが明確に伝わってきます。
②◎「人間関係を構築する」という軸がしっかりしていて、読んでいてブレがありません。
③◎「アプローチ科目、フィールド・ワークや企業インターンシップ、他大学との合同ゼミ」など志望校のカリキュラムをよく調べたうえで、大学での学びに魅力を感じていることが伝わってきます。
こうしたらBETTERポイント
①○「子ども食堂でどのような人間関係が構築されていたのか」についての自身の観察・考察を盛り込むと、より良くなるでしょう。
②○「デジタル化の進展により現実での人々の関わりが希薄になっている現代」「情報化が進んでいく中で、対面的な人間関係に内包する重要性」の部分が、自身の観察による推論ではなく思い込み感があるのがやや難点。
なぜそう考えるのかという根拠があるとベターでしょう。
合格した先輩の志望理由書②
私立大学 社会系学部 社会系学科 総合型選抜合格者
志望理由書
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私が貴学部を志望する理由は、〇〇教授のもとで教育社会学を学びつつ、不登校経験者による居場所づくりについての自身の研究を並行して行いたいからだ。
私は小・中学生時代に2度、不登校を経験した。当時の私は、学校に行けない自分に価値を見いだせず四六時中自己否定感に苛まれた。その経験を活かし、在籍校において、不登校経験者の高校生が不登校・苦登校の子どもたちに居場所を提供する団体「△△」に所属し活動している。活動を通して出会う不登校の子どもたちは、かつての私と同様に、学校に行けないことにより自責感を募らせていた。この活動は、不登校であるというだけで子どもに自己否定感を抱かせ、不登校を極端に問題視する社会とは何かという問いが芽生える契機となった。
この問いを端緒に、教育を社会事象とみて不登校に対する公教育や社会全体のあり方を問う教育社会学に強く惹かれるようになり、貴学の○○教授のことを知った。不登校の経験を持つ研究者であり、不登校を「生きづらさとしての不登校」という枠組みで捉え、学校から漏れ落とされた者の視座から社会を問いなおす研究をされていることに衝撃を受け、どうしてもこの教授のもとで学んでみたいと強く思った。○○教授のもとで、不登校を問題視する社会とは何かという自身の問いを足掛かりに、子どもを取り巻く社会の理想的なあり方を研究したい。また、○○教授が研究手法としてフィールドワークを用いるのに倣い、貴学に入学後も引き続き不登校経験者による居場所づくりの内実を研究し続けたい。
不登校経験者による当事者支援は可能かという問いや行政は子どもの居場所づくりを実現できるのかという問いに対する答えを、貴学で学びつつ「△△」の実践を続け、4年後の卒業論文で導き出したいと考えている。
以上のことから、私は貴学の社会学部を志望する。
こちらは、「不登校経験者による居場所づくりについての研究をしたい」という人の志望理由書だ。
神﨑先生はどのような点を評価しているのだろうか。
先生の解説
GOODポイント
◎自らの不登校という経験を起点に当事者として居場所づくりに携わり、そこで立った問いを大学で実践研究したいテーマにつなげる…と、全体のストーリーがよくできています。
①◎「不登校であるというだけで子どもに自己否定感を抱かせ、不登校を極端に問題視する社会とは何か」という問いからは、当事者ならではの課題への主体性が伝わってきます。
②◎大学でやりたい研究をするために最適な環境を求め、大学の教授の研究テーマや手法をしっかりと調べていることがわかります。(神﨑先生)
こうしたらBETTERポイント
○被害者意識がやや感じ取れるので、「不登校を問題視する社会」について、客観的な視点で冷静に分析・考察するとより良くなるでしょう。
○「不登校経験者による居場所づくり」の実践研究と「子どもを取り巻く社会の理想的なあり方」の研究とをどう融合させるかという視点があると、より良くなるでしょう。(神﨑先生)
社会学部の志望理由書NG例
ストーリーに一貫性がない、経験や実績ばかりが強調され「問い」が立っていない、オリジナリティーが感じられない…といった志望理由書はNG。
具体的にどのようなものがあるのか見てみよう。
「どのような」が欠けて具体が伝わらない例
<例>
私は今までに多くの地域活動を企画・実行して、リーダーシップを養ってきた。この経験を活かし、大学では……
\改善ポイント/
具体的にどのような地域活動をしたのか、その活動を通して何を考えどのような問いが立ったのかを盛り込みましょう。
「なぜ」が抜けて動機が伝わらない例
<やりがちNG例>
私はすべての人に寄り添い支える公務員になるため、さまざまな社会学分野の研究ができる貴学の社会学部に入学したいと考えている。
\改善ポイント/
なぜ「すべての人に寄り添い支える公務員」になろうと考えたのか、背景にある自身の経験や動機のエピソードを盛り込むようにしましょう。
社会学部の志望理由書のポイント
社会学の特徴は、どのような事象もアプローチ次第で「社会学」として研究が可能なほど対象が幅広いこと。
それゆえ、志望理由書では自分は何に関心がありどのようにアプローチしたいのかをできるだけ具体的に伝える必要がある。
まずはテーマを絞り込んで軸を作り、自分のこれまでの経験や問いと結びつけながら、大学での学びにつなげるストーリーを作っていく。
その際に大切なのが、「何をしたか」にとどまらず、「どのように」や「なぜ」をしっかりと盛り込むこと。
そしてその結果、「どのような問いが立ったか」、「その問いを大学でどう深めたいのか」に結びつけていこう。
社会学部の志望理由書の3つのポイントを、神﨑先生に教えてもらった。
経験を通して得た「問い」を自分の言葉で記す
社会学を目指す人は、ボランティア活動など現場での体験がきっかけになっているケースが多く、志望理由・動機を明確にしやすい分野と言えます。
志望理由書には、どのような経験をきっかけに社会学を学ぼうと思ったのか、興味・関心の発端を具体的に書きましょう。
大事なのは、その経験を通して自分は何を感じ、考え、どのような問いが生まれたのか、という部分です。
大学は学問を追究する場であり、問いの視点は不可欠です。
探究に熱心に取り組んだ人は、その問いを追究するためにどのようなアクションを起こしたのか、まで書けるとなお良いでしょう。
ここの内容が薄かったり当たり障りのないものだったりすると、説得力に欠ける志望理由書になってしまいます。
自分は何に関心があるのかを具体的に記す
社会学が扱う対象は幅広く、研究にもさまざまな視点やアプローチ法があります。
多様であるがゆえに漠然とした志望理由書になりがちなのが、この分野の特徴。
自分は何に関心があるのかを具体的に記し、その問いを明らかにするためにどのような手法を用いたいのか(理論に興味があるのか、フィールドワークをやりたいのかなど)まで書けると良いでしょう。
例えば、「人と人とのコミュニケーション」だけではボンヤリしていますが、深掘りして「人と人とのコミュニケーションが地域社会に及ぼす影響」などとすると、クリアになります。
「なぜ社会学なのか」という理由を明確にする
社会学は、社会における人と人との関係性やつながりを探る学問です。
さまざまな学問と融合しやすいため、志望理由書では「なぜ(他の学問ではなく)社会学なのか」という理由を明確にすることを意識しましょう。
その際、志望大学の社会学の特色(例えば、心理学寄りの社会学、教育学寄りの社会学、地域密着型の社会学など)を掘り下げると、「この大学で社会学を学びたい」理由とからめやすいでしょう。
社会学部の志望者におすすめの本
志望理由書を書くにあたっては、関連する本を読んで理解や考察を深めておくことも重要。
そこで、社会学に関連する分野のおすすめ本を神﨑先生に紹介してもらった。
関心を広げ、志望動機を言語化する助けになるものなので、ぜひ読んでおこう。
『新体感する社会学: Oh! My Sociology』 金菱清(新曜社)
日常の出来事を通して社会のしくみや人間関係をリアルに捉え直す、体感型の社会学入門書。
『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』 小熊英二(講談社)
雇用・教育・福祉の歴史から日本社会の構造を読み解く一冊。
まとめ
社会学は、志望理由書が比較的書きやすい分野。
大学は学問を追究する場であることを念頭に置き、軸となる「問い」を明確にするところから始めよう。
「何をしたか」「その結果、どのような力が身についたか」という経験や実績、成長をアピールするだけの志望理由書は評価されない。
「何を(したか)」に「どのように」という具体や「なぜ」という理由や背景を肉付けし、「その結果、どのような問いが立ったか」「その問いを大学でどう深めたいのか」に結びつけていこう。
取材・文/笹原風花 監修/神﨑史彦 構成/寺崎彩乃(編集部)
学校パンフでイメージを膨らまそう
社会学が扱う対象は幅広いため、「自分は何に関心があるのか」を具体的に示すことが重要だ。
合格者は、自分の関心をどう深め、どのように志望理由書にまとめていたのか、実例を見てみよう。
さらにライバルに差をつけるためには、・・・・・・

