【経済学部・経営学部】合格者の志望理由書を公開!NG例・プロの解説付き
この分野の志望理由書では、ニュースなどで目にする世界規模の大きなテーマから、自分が暮らすの街の“シャッター商店街”などの身近なテーマまで、幅広い切り口がある。合格者はどのような切り口を選び、自分なりの考えを表現していたのか、実例を見てみよう。
注意したいポイントの一つは、大きなテーマを選んだ場合、新聞・ニュースでよく目にする「ありがちな主張」に終始してしまうこと。具体的な志望職種などをからめて、テーマを自分に引き寄せる工夫が重要になる。先生の解説から、志望理由書に求められる視点や構成の考え方を、しっかりと身につけておこう。
目次
合格した先輩の志望理由書①
私立大学 商学部 経営学科 総合型選抜 合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
私は貴学で経営学を学び、グローバル社会で活躍できるビジネススキルと高いコミュニケーション能力を身につけることで、将来は商社や国際関連の職に就き、仕事を通して、言葉だけでなく、その国の世界観や歴史観、価値観までも踏まえたビジネスパーソンになりたいと考えます。また、そのスキルを生かして日本企業の発展に貢献することを目標としています。
経営学に関心を持ったのは、実際に中国とメキシコに暮らした経験から、両国は同じ発展途上国であったのに、すさまじい成長を遂げた中国と、豊かな資源を持っているにも関わらず緩やかな成長しか見せなかったメキシコを目の当たりにしたためです。なぜその差が生まれたのか、両国の政策や企業のあり方、国民性がどのように関連しているのかについて興味を抱きました。
高校では、現在の日米中の複雑な関係を中国三国志と照らし合わせて、「現代版三国志」というテーマで研究発表を行いました。歴史は未来の鏡のごとく、歴史を通して日本のあるべき姿を先取りしました。コロナ禍という厳しい環境のなか、中国人の友人50人以上にアンケート調査を実施し、中国発展の背景の理解を深めました。『中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ』(岡野寿彦著/日経BP 日本経済新聞出版)などの書籍を読んでさらに関心を深めるなかで、やりがいのあるテーマと感じ、大学進学後も継続して研究したいという意欲が強くなっていきました。
貴学との出会いは、パンフレットや大学説明会、また、貴学在学中の姉からのヒアリングです。経営史、経営理論といったオーソドックスな内容の基礎部分をしっかり固められる教育に大きな魅力を感じ、まさに今、私が必要としている知識をしっかりと定着させることができると感じました。さらに、留学プログラムが充実しており、経済・経営の視点を身につけたうえで、再び中国やメキシコに留学することで、子どもの頃とは違った視点からさらなる理解を深められることにワクワクしています。
今後は、日本的経営からダイバーシティ経営に舵取りする企業が増えるなか、豊かな発想を持つ人材の確保や多言語・多文化を理解しようとする力が求められると考えます。その力こそが新しい経営イノベーションを起こす原動力であると考えており、経営学の歴史や変革をよく学び、海外で培ったコミュニケーション能力を持って、日本企業に貢献できるよう、しっかりとベースを固めたいと意欲しています。
先生の解説
ここからは、志望理由書指導のプロ・小柴大輔先生に、上の志望理由書の「よいところ」を解説していただき、「よりよくするための視点」をアドバイスしていただこう。◎はVery Good、○はGood、△は修正するとよりよくなるポイントだ。
※本解説はスタディサプリ進路の講師が、志望理由書のよい点とその理由を解説したものであり、合否の判断基準を示すものではありません
教えてくれるのは
小柴大輔先生
Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)や司法試験受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。スタディサプリでは、現代文のほか、小論文や総合型選抜・学校推薦型選抜対策講座を担当。
△①「コミュニケーション能力」の使い方には注意が必要
「コミュニケーション能力」は、志望理由書における頻出ワードの一つ。ただし、仲の良い友だちと楽しくワイワイやるのも、問題解決のために難しい交渉をするのも、いわば「コミュニケーション能力」。実は、指す範囲が広く、何かを伝えているようで的確には伝わらない言葉でもある。どのような「コミュニケーション能力」なのか、もう一段掘り下げた記述に置き換えると、より伝わる表現になる。
次の行で、「その国の世界観や歴史観、価値観までも踏まえた」という記述があるので、この志望理由書の場合は、どのようなコミュニケーション能力なのかがわかります。だから、NGとまではいきませんが、言葉を代えたほうがよりよくなります。例えば、「ビジネスの場で通用する異文化理解能力」などに置き換える方法もあるでしょう。
◎②自分の経験がテーマと結びついているのはVery Good!
国際経済やグローバル経営は、高校生が自分に引き寄せて語ることが難しいテーマ。つい、ニュースなどで見たよそ行き、借り物の言葉に終始してしまいやすいところだ。しかし、この志望理由書では、自分が実際に外国で暮らしたことで感じたこと、得た視点を起点としており、非常にオリジナリティーが高い。高評価が得られる記述だ。
しかも、中国、メキシコと似て非なる2カ国での経験を生かして、比較経済論的な視点を示していることは、学問的な広がりの可能性をも感じさせる素晴らしいポイント。単に特殊な経験を書いているだけではなく、「政策」「企業のあり方」といった点に目を向けていることで、個人的な経験を学部・学科での学びへと接続することができています。
◎③関心の深め方にも独自性があってVery Good!
前の段落の、志望する学問分野に関心をもつ「きっかけ」の記述に続けて、その関心の「深め方」について記述しているブロック。一般的に、経済・経営といったテーマは、社会経験や十分な学問的土台がない高校生が独自の視点から掘り下げて「深める」ことが難しいものだが、この志望理由書では、自分の経験も生かして「現代版三国志」という独自性の高い研究発表に結びつけている点がVery Good。
中国人の友人50人にアンケート調査を行っているなど、この受験生でなければなかなかできない方法を取り入れている点も非常によいですね。志望理由書に基づいて面接を行う際にも、詳細を質問され、話が広がりそうです。それだけ、大学側も関心を抱く内容だということです。
また、高校の段階でこのような研究に取り組んでいるということは、それ以前の海外で暮らした経験を通して抱いた興味関心をずっともち続けているということの証明にもなっています。ストーリーの一貫性という意味でも優れています。
○④在学中の家族からの情報収集はアピール材料になるので Good!
大学説明会などのオフィシャルな情報収集手段と比べると、身内に聞いた話は「プライベート感が強いし、あえて書くまでもないかな」と考える高校生もいるかもしれない。しかし、「在学中の姉」からの情報は、大学の良いところも悪いところも包み隠さず伝わっているはず。そのうえで志望するということは、それだけ志望する気持ちがホンモノだということのアピールになるのでGood。
○⑤経営の専門用語を適度に使うのは Good!
「日本的経営」「ダイバーシティ経営」「経営イノベーション」といった言葉は、ビジネスの世界では一般的に用いられているが、高校生には身近感がないかもしれない。しかし、経済・経営に関する書籍を読んでいれば当たり前のように出会う言葉なので、このレベルの専門用語が文章の中に盛り込まれていると、基礎的な勉強をしていることのアピールになる。
ただし、意味をよく理解しないでむやみに使うと、読む側の大学の先生には簡単に見透かされてしまいます。十分意味を調べ、自分のものにできた用語を、適切に使うことを心がけましょう。この志望理由書ではそれができていますね。
合格した先輩の志望理由書②
私立大学 経済学部 経済学科 総合型選抜 合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
私が貴学で経済学を学びたい理由は3つある。1つ目は高校生徒会の総務部書記としてお金に関して携わる仕事をしたことだ。予算会議に出席し、学校内でのお金の使い道を知った。また、毎年年度末に発行する学校誌を決まった予算でよりよい1冊を作るために印刷所の方と交渉した経験も大きい。さらに、文化祭でのクラスの模擬店の中心メンバーとして、原価から利益をできるだけ多く出し、しかもお客様が買いやすい価格設定を考える経験をした。このような活動をしていくうちに、もっと広い意味で社会のお金の働きや流れを学びたいとの関心にいたった。そのため、『経済の考え方がわかる本』(柳川範之著/岩波ジュニア新書)などの書籍を読んで経済の基本的な考え方を学んだ。
2つ目は施設が充実していることである。オープンキャンパスで経済研究所やGIS(地理情報システム)研究施設があることを知った。大学入学後も自主的に勉強できるところも魅力だ。
3つ目は経済学科内でも理論・数量コース、政策・産業コース、歴史・国際・地域コースの3つに2年次から分かれることだ。私の母は銀行に勤めていて、責任ある大切な仕事をしている母の姿を幼いころから私は見て、尊敬していた。金融という仕事やお金の働きに興味を持ち、私も将来金融関係の仕事に就きたいと考えている。そのため、政策・産業コースで金融の仕組みや歴史、さらに国内外の課題や問題を学びたい。
3年次の産業論では、大手の企業の方、実務家の方、官公庁の方から、今、女性の幹部社員の少なさをはじめとするジェンダーギャップなど日本が未だ十分に改善できていない問題や、逆に国内半導体産業の発展など豊かな可能性につながる業務戦略を生でお聞きする貴重な体験ができる。そこで、将来の仕事に活かせる知識を得たい。また大学で学ぶ意義、社会的に自立していくためのこと、自分の専門分野以外の分野も同時に学べ、主要専攻を豊かにできることも魅力的だ。
私は貴学のスクールモットーのもと将来の夢のために努力し、チャレンジし、他者に貢献できる知性を養いたいと考えている。
貴学は、ITとビジネスの基礎から応用までを幅広く学べる科目が充実しており、また、それらを体系的に学ぶことで専門性を高められるため、私が求めるスキルを効果的に身につけることができると考えます。よって、貴学への進学を強く志望します。
先生の解説
○①要点を箇条書きでまとめる方法もアリ
小柴先生は、志望理由書のまとめ方として、「過去(きっかけ)→現在(関心の深め方)→未来(大学での学び、将来像)」を一貫性のあるストーリーとしてまとめる手法を推奨している。しかし、人によっては、一つの軸に沿ったストーリーでは記述しにくいこともあるはず。特に、経済学部・経営学部の場合、ニュースなどで見る情報がきっかけであるとき、世界規模・国家規模のテーマと自分の生活とをうまく接続することが難しいこともあるだろう。
また、経済学部・経営学部を卒業した後の進路も多様なので、例えば、看護学部や教育学部など将来の仕事がイメージしやすい学部と比べて、将来像が現段階ではまだまだ不明確ということも多いはずだ。そんなときは、無理矢理、一つの軸のストーリーにまとめなくても、上の例のように志望理由を箇条書きでまとめるという方法もアリだ。
この志望理由書では、自分自身の高校での体験、大学・学部の施設の充実度、大学・学部のカリキュラム、親の仕事からの影響という、大きく4つの要素があります。この受験生はこれらを無理に一つのストーリーにまとめるのが難しいと考えたのか、箇条書きという方法を選択しました。この方法のほうがわかりやすくまとめられるのであれば、箇条書きでももちろんOKです。
なお、親の仕事の影響は、カリキュラムのブロックに組み込まれていて、ブロック内でストーリーができている点もポイント。まとめられるところはストーリーでまとめたほうが、単に要素を羅列するよりも読みやすくなります。
◎②高校生らしい素朴な経験をきっかけに据えるのはリアリティがあってVery Good!
人によっては、高校の生徒会での会計役や学園祭の模擬店の経験などは、経済学に関心をもったきっかけとしては「素朴すぎるのではないか?」と考えるかもしれない。しかし、これから本格的に学びたいと考えている高校生が大学・学部を志望するきっかけとしては、むしろリアリティがある。
高校生は、「自分はまだ経済活動のプレーヤーではない」と思いがちですが、例えば、コンビニで買い物をして消費税を払うのも、お小遣いを管理して使い道を工夫するのも、小さいとはいえ経済活動。自分が高校に通うためにいくらかかっているか、大学に進学するためにいくら必要か、そのコストが将来どのようなリターンにつながるかを調べ、考えることも、お金(=経済)に関する理解を深めることにつながります。このようなごく身近なテーマをきっかけに据えると、高校生の経済・経営学部の志望理由としては、むしろ説得力が高まります。
経済・経営という一見スケールが大きいテーマだからこそ、きっかけの部分で等身大の自分を引き寄せて語ることが、自分と学問を結びつける意味をもつのです。
◎③書籍を通して経験したことへの理解を深めているのがVery Good!
高校生が身近な範囲で経済活動にかかわる経験をしたとしても、それだけで大学での学びに結びつけることは難しいし、飛躍がある。そこで重要になるのが、経験をきっかけに経済分野の基礎的な本を読んで、経験したことを理論的に整理するプロセスだ。
とにかく、志望分野に関連する本を読んだら、志望理由書に書籍名を書くことがポイントです。なんとなく興味をもったというだけでは大学・学部の志望理由としては弱いですから、そこで抱いた関心をどのように深めていったかもしっかりと記述する必要があります。本を読んで勉強した経験はその「深める」プロセスのわかりやすいアピール材料になりますから。面接で質問されることもあるでしょうから、どのような内容の本だったか、どんな気づきや発見があったかなどは、志望理由書に書けなくても、面接対策として準備しておきましょう。
△④外部講師の話だけでなく、内部の先生についての言及も
実務家などの外部講師による授業に興味があることを記述するのはOKだが、大学のカリキュラム・授業の魅力がそれだけで終わってしまうと、大学の先生としては「自分たちの授業には興味がないのか」という印象をもってしまうかもしれない。できれば、その大学に所属する先生の授業やゼミについても触れると、アピール度は高くなる。
○⑤「日本が陥っている問題」の具体例を挙げているのがGood!
経済・経営に関する諸問題は、社会的に広く共有されていることが多いので、「いちいち書かなくてもわかるだろう」と大雑把に記述してしまいがち。しかし、「日本が未だ十分に改善できていない問題」としか書いていない場合、何と何が問題なのか、本当にこの受験生はわかっているのかという目で見られてしまう恐れも。そのため、「女性の幹部社員の少なさをはじめとするジェンダーギャップ」と具体例を挙げて記述することは、理解度をアピールする意味でもポイントになる。自分の関心の一つがそこにあることを伝えるうえでも有効だ。
合格した先輩の志望理由書③
国立大学 経営学部 経営学科 総合型選抜 合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
私は、ビジネスの現場で活かせる高いプレゼンテーション力を身につけるため、貴学の経営学部を志望します。私は小さい頃から人前で話すことが好きで、中学生のときには生徒会長を務め、高校でも発表の機会が多くありました。その一方で、話す内容が本当に伝わっているのか不安に感じることもありました。
貴学のオープンキャンパスで在学生の方のプレゼンテーションを拝見し、そのスキルの高さに圧倒されました。テーマは「地域のお店の売上向上のための企画」で、データをもとに現状を分析し、課題を整理してわかりやすく提案されていました。発表を通して、話す力だけでなく、相手の立場を考える力や、情報をわかりやすく伝える構成力の大切さに気づきました。そして、人や組織がどのように考え、成果を生み出しているのかという仕組みに興味を持ち、経営学を学びたいと思うようになりました。
貴学では、まず経営の基礎を体系的に学び、企業や社会の動きを理解する力を身につけたいです。そのうえで、マーケティングの知識を深め、データや分析をもとに自分の意見を根拠を持って伝えられるようになりたいと考えています。将来は、企業で企画や広報の仕事を通して、人に伝える力を生かしながら、新しいことを生み出せるようになりたいです。
先生の解説
△①志望動機が学部の学びと直結していないので修正が必要
冒頭の一文で志望動機をまとめようとしているが、「プレゼンテーション力を身につけたい」から経営学部を志望するというのでは、動機と学部内容が直接リンクせず、読み手に疑問を抱かせてしまう。しかし、次の段落まで読み進んでいけば、「先輩のプレゼンテーションに感銘を受けたが、ポイントは話し方だけではなかった。経営学の理解に基づいた分析力や構成力が重要であることがわかった」から、経営学部を志望していることが記述されているので、言いたいことは理解できる。
この場合は、冒頭の一文で無理にプレゼンテーションと経営学部を結びつけて、結論のように書かないほうがいいでしょう。きっかけは先輩のプレゼンテーションだったが、その結果、背景知識としての経営学の重要さがわかったから経営学部を志望するということなので、「貴学の経営学部を志望します」の記述は2段落目の終わりにもってきたほうがストーリーとしての整合性は高くなります。
◎②OCでの経験を経営学部の志望動機にうまく結びつけているのがVery Good!
この段落では、「先輩のプレゼンテーションに圧倒された経験」を「経営学を学びたい理由」にわかりやすく接続できている。冒頭の一文では論理の飛躍を感じさせたが、ここで全体のストーリー性をしっかりと形作っているところが評価できる要素だ。
あと、つけ加えるとすれば、先輩のプレゼンテーションが「この大学・学部で学んだからこその質の高さなのだろう」ということに触れると、大学での学びへの接続はなおスムーズになりますね。
○③将来の目標として具体的な職種を挙げているのがGood!
経済学部や経営学部は、志望段階では、卒業後の具体的な職種まで明確になっていない人も多いはず。「企業で働く」という漠然としたイメージはもっていても、研究職や技術職ではない経済・経営系の出身者は実際に入社してみないと配属先はわからないということも多く、それも無理のないところかもしれない。それにもかかわらず、一般的に企業内にどのような仕事があるのかを調べて、希望職種まで明確に記述している点はGood。
実際にその仕事に就けるかどうかはわからなくても、目標が明確であるほど学ぶモチベーションは高まりますし、将来のキャリアについて考えていることのアピールにもなります。また、この受験生の場合、経営学と同時にプレゼンテーション力の習得がもう一つのテーマとなっており、将来目標の「伝える力を生かして」という記述にうまく接続できている点も、ストーリーに説得力を与えています。
経済学部・経営学部の志望理由書NG例
経済や経営は非常に幅が広いジャンル。そのため、「経済について学びたい」「経営について学びたい」だけでは漠然としていて、本当は何を学びたいのかが読み手には明確に伝わりづらい。例えば、「人口が減少するなかでの経済成長」であるとか、「働き方改革が進むなかでの人材マネジメント」など、もう一段細分化して掘り下げたアプローチが必要になる。その点の掘り下げが不十分だと、浅くてありきたりな志望理由書になりがちだ。また、経済・経営の専門用語の使い方についても注意が必要。いくつか具体的なNG例を紹介しておこう。
風呂敷を広げすぎるのはNG!
<やりがちNG例>
現在の日本経済は、人口減少が続くなかで成長の鈍化が懸念されている。また、労働者の実質賃金が30年以上上昇していないのも大きな問題だ。女性の管理職割合もOECD平均と比べるとまだまだ低い状況にある。国際的な視点では、アメリカのトランプ大統領が進める関税政策が、国内経済にどのような影響を与えるかも大きな問題となっている。(以下、問題点の羅列が続く)これらの問題解決に貢献するため、貴学で経済学を学びたい。
\改善ポイント/
前述のように経済学は非常に幅が広い分野です。そのため、このようにあれもこれもと風呂敷を広げすぎると収拾がつかなくなります。もっと切り口を絞って、経済学のうち、どのような問題に関して、どのような貢献をしたいのかを論じる必要があります。
起業家志望なのに事業構想が書かれていないのはNG
<やりがちNG例>
私は、20代で起業することを目標としている。そのため、貴学経営学部で経営学について基礎から幅広く学び、自分に合った事業分野を探しながら、経営者としての力を高めていきたい。
\改善ポイント/
将来は起業したいから経営学部を志望するという人もいるでしょう。しかし、起業できれば事業内容は何でもいいというのでは、「単にお金が稼ぎたいだけ?」「社長の肩書きに憧れているだけ?」という疑念を抱かれてしまう可能性もあります。起業したいと言うからには、「何かしら解決したいと思う社会課題があるのだろう。それが既存のビジネスではできないから自分で会社を起こしたいのだろう」と読み手は考えます。しかし、「それはこれから考える」では、起業したいという思いの本気度も疑わしくなってしまいます。もちろん在学中に目標が変わってもまったく問題はないのですが、少なくとも起業を目標に掲げる以上は、「どんな分野の何を解決したいのか」を、現段階でしっかりと考えることが大切。このNG例を読むと、「経営学部に入れば経営者になれそう」という安易な発想が透けて見えてしまいます。
常識レベルの経済・経営用語が使えないのはNG!
<やりがちNG例>
現在、国際的な経営競争は非常に厳しくなっている。経営やサービスをよりよくするための改革をスピーディに実現するため、経営にITをどのように取り入れるかは、企業の事業分野や規模にかかわらず重要なテーマだ。そのため、私は貴学でITを取り入れた経営について学びたい。
\改善ポイント/
上記の記述はまったくのNGとまでは言えません。しかし、「経営やサービスをよりよくするための改革」は「経営やサービスのイノベーション」という言い方ができますし、「ITを取り入れた経営」は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉で置き換え可能です。NG例の表現でも意味は伝わりますが、「イノベーション」や「DX」は今やニュースなどで頻出するキーワード。新聞や経済・経営系の書籍にある程度目を通していれば、当たり前にインプットされているはず。そういったワードが出てこないということは、「経済・経営についての基礎的な勉強や情報収集もしていないのかな」と思われてしまう可能性がないとは言えません。ただし、意味を十分に理解していない専門用語を背伸びして使うのは考えもの。使い方を誤っていればマイナス評価になる可能性もあります。
経済学部・経営学部の志望理由書のポイント
では、改めて経済学部・経営学部の志望理由書を書く際のポイントをまとめておこう。
大きなトピックから入るか身近なトピックから入るか決める
経済・経営に関心をもつきっかけの記述は、世界規模の大きな経済問題から、高校生活・日常生活でのごく身近な経験まで、非常に振れ幅の広い切り口が考えられる。どちらのトピックを選んでもOKだが、大きなトピックから入る場合は、どこかで問題を自分に引き寄せる工夫が、また、身近なトピックから入るなら、「関心を深める」プロセスで、経済学・経営学という学問に接続する工夫が必要だ。
大きなトピックから入る場合、注意したいのは、新聞やニュースなどの一般的な論調と同じような記述に終始してしまうこと。そうなってしまうと、オリジナリティーという点で物足りないありきたりな内容の志望理由書になってしまいます。一方、身近なトピックから入った場合、「自分だからこそ」という要素は表現できますが、「だから経済(経営)を学びたい」と一足飛びにストーリーを展開させると、幼稚で、掘り下げが足りない印象を与えてしまう危険も。いずれの場合も、説得力があって独自性を感じさせるストーリーをどう設計するかがポイントになりますね。
経済学・経営学につながる自分の経験を振り返る
経済や経営は、高校生の日常生活とは縁遠いように思える。しかし、すでに説明したように、高校生でもお金を動かしたり、管理したりという経験は小さいながらしているものだ。また、例えば、部活のリーダーとしてチームをまとめた経験は、経営学の領域であるマネジメントに関連付けることもできる。「自分には経済学や経営学につながるような経験はない」と考えている高校生は多いかもしれないが、丹念に振り返ってみれば、高校生活や日常生活から、志望理由書に使える経験を見つけることができる可能性は十分ある。
そこでおすすめしたいのが、経済学や経営学に関する本を読むこと。入門編的な本で構いません。例えばですが、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海著/新潮社)などは高校生にも読みやすく、高校生活と経営学との関連性のヒントを得るには格好の教材。自分の経験と照らし合わせながら、「このエピソードに似た経験は自分にもある」という気づきが得られるはずです。
経済学・経営学がどういう学問なのかを理解する
高校にも科目として「政治・経済」はあるが、高校の段階で学べるのはあくまで経済や経営の基本中の基本。それに、選択科目なのでそもそも学んでこなかったという高校生もいるはずだ。また、「家庭」や「公民」でも経済・経営について扱うが、学べるのはあくまでごく一部。特に、経済学のうち、数学を使った分析的なアプローチなどは高校で触れる機会は少ない。そのため、経済学や経営学がそもそもどのような学問なのか、あまり理解しないで志望する高校生も実は多い。自分自身で、経済学や経営学の基礎に関する体系的な知識をある程度学んでおく必要がある。
ここでもおすすめは本を読むことですね。とはいえ、経済学や経営学の分野の最先端のトピックを取り上げた専門的な書籍にいきなりチャレンジするのは、ビジネス経験があるわけでもない高校生にはハードルが高すぎます。どちらの分野も高校生向けの入門書が充実していますから、まずはそのような本から手を付けるのがいいでしょう。入門書を読むことで、経済学や経営学のなかにどのようなテーマがあるのかを俯瞰的・体系的に知ることができますし、自分に合った分野なのかどうかを判断する視点も養えるはずです。
「データ分析」や「数学」について言及する
経済学や経営学は、文系に分類されるが、経済学では微分・積分をはじめとする数学の知識が必須。また、統計学を使ったデータ分析などはどちらの学問でも重要な要素だ。そのため、高校で文系を選択して数学をしっかり勉強してこなかった学生が、文系だからと経済学部・経営学部に進学した後に、「思っていたのと違う!」とギャップを感じるケースは非常に多い。大学側でもその点は問題視していて、最近は、経済学部の入試科目で数学を必須とする大学も出てきている。そのため、志望理由書で、「データ分析」や「数学」に関する興味や勉強した経験などに触れておくと、経済学・経営学という学問に何が必要かを理解していることのアピール材料になる。
数学が苦手だったとしても、「苦手意識を払拭するよう、今、勉強に取り組んでいる」と伝えるだけでもアピールにはなります。
実際、数学を切り捨ててしまうと大学に入ってから苦労するので、経済学部・経営学部を目指すなら高校の段階でしっかり学んでおいたほうがいいですね。
経済学部・経営学部志望者におすすめの本
志望理由書を書くにあたっては、関連する本を読んで理解や考察を深めておくことも重要。そこで、経済学・経営学に関連する分野のおすすめ本を小柴先生に紹介してもらった。関心を広げ、志望動機を言語化する助けになるものなので、ぜひ読んでおこう。
『高校生のための経済学入門 新版』小塩隆士(ちくま新書)
「需要と供給の決まり方」「市場メカニズムの魅力」「なぜ政府が必要」「お金の回り方を探る」「税金と財政のあり方を考える」などのテーマを基礎からわかりやすく解説。
『高校生のための経済データ入門』吉本佳生(ちくま新書)
ほぼ毎ページに図表やグラフがあり、読み取り方のトレーニングにもなる。各章の最後には、ジャガイモの値段とポテトチップスの値段にあまり相関関係がないのはどうしてか、などの練習問題付き。
『経済の考え方がわかる本』新井明、柳川範之ほか(岩波ジュニア新書)
エコノミストならぬ〝ネコ先生(ネコノミスト)〟というキャラとともに会話スタイルで進む、楽しい経済学入門書。
『日本経済図説 第5版』宮崎勇(岩波新書)
簡潔に日本経済の現状を解説する一冊。ほぼ毎ページに統計資料あり。類書の『世界経済図説 第4版』も併せて読みたい。
『地元経済を創りなおす─分析・診断・対策』枝廣淳子(岩波新書)
一極集中ではない地域分散型の持続社会の模索。
『会社はだれのものか』岩井克人(平凡社)
イエール大、プリンストン大、ペンシルバニア大の教員を経て、東大経済学部長を務め、ノーベル経済学賞に一番近い日本人と言われる著者が「会社」についてわかりやすく解説。
『個人尊重の組織論─企業と人の新しい関係』太田肇(中公新書)
経営組織論を専門とする著者が、日本的集団主義の問題点をテーマに論じる。
『マネジメント 基本と原則』ピーター・ドラッカー(ダイヤモンド社)
著者は経営学の神様と呼ばれ、学者としてだけでなく人格者としても知られる。その主著で「選択と集中」という経営戦略を有名にした一冊。日本でも世界でもウルトラベストセラー。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?─身近な疑問からはじめる会計学』山田真哉(光文社新書)
おもしろい、わかりやすい、かつてない会計・商学の入門書。
『統計学が最強の学問である─データ社会を生きぬくための武器と教養』西内 啓(ダイヤモンド社)
統計学が科学のあつかえる範囲を拡大させたことがよくわかる。疫学・計量経済学・計量文献学・社会調査法・心理統計学・生物統計学についても詳しくなれる。
まとめ
経済学部・経営学部は文系の中では、受験生からの人気が高い学部。しかし、その一方で、それぞれどのような学問なのか、高校生に十分理解されていない面もある。よい志望理由書を書くために大切になるのは、まずは経済学・経営学という学問について知ること。そのうえで、自分の日々の生活との接点を探すことで、アピール度の高いストーリーを作ることができる。これらのことを踏まえて、しっかり準備して志望理由書に取り組もう。
取材・文/伊藤敬太郎 監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(編集部)
学校パンフでイメージを膨らまそう
この分野の志望理由書では、ニュースなどで目にする世界規模の大きなテーマから、自分が暮らすの街の“シャッター商店街”などの身近なテーマまで、幅広い切り口がある。合格者はどのような切り口を選び、自分なりの考えを表現していたのか、実例を見てみよう。
注意したいポイントの一つは、・・・・・・

