【教育学部・児童教育学部】合格者の志望理由書を公開!NG例・プロの解説付き
この分野の志望理由書では、「どんな教育者を目指しているのか」という思いや目標を、具体的に述べることが重要だ。
合格者は、どのようにそれを表現していたのか、実例を見てみよう。
そして忘れてはならないのが、「教育を通して何を伝えたいのか」といった使命感をしっかりと盛り込むこと。
先生の解説から、志望理由書に求められる視点や構成の考え方を、しっかりと身につけておこう。
目次
合格した先輩の志望理由書①
国立大学 教育学部教科教育専攻美術・書道教育コース 一般選抜 合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
私は将来、教師という仕事を通して、書道の魅力を子どもたちに広めたいという目標を持っており、そのために貴学への入学を希望します。
教師になろうと思ったきっかけは、小学六年生のとき、低学年の子と交流する行事に参加したことです。そこでは折り紙の折り方を教えたり、学校案内を行ったりし、子供ながらにとてもやりがいを感じました。それからは先生の授業の進め方や、生徒との関わり方に注目するようになり、気づけば自分もこんな仕事がしたいと考えるようになりました。その中でも書道教育コースを志望する理由は、幼少期から学んでいた書道をより深く研究し、そこで学んだことを活かして子どもたちに書道を教えたいからです。
以前参加した○○先生の模擬授業では、「小学生に書道を教えるときは、オーバーな擬音語を使って動きを分かりやすく伝えることが大切だ」という説明を聞いて深く納得させられたことや、人数が少ないゆえの学科内の親密さが垣間見えたことで、私もこの空間で学びたいという気持ちが強まりました。
以上のことから、私は貴学への入学を志望します。そして卒業後には、4年間で得た知識を用いて「書く」ことの楽しさを子どもたちに伝えたいです。
先生の解説
ここからは、志望理由書指導のプロ・小柴大輔先生に、上の志望理由書の「よいところ」を解説していただき、「よりよくするための視点」をアドバイスしていただこう。
◎はVery Good、○はGood、△は修正するとよりよくなるポイントだ。
※本解説はスタディサプリ進路の講師が、志望理由書のよい点とその理由を解説したものであり、合否の判断基準を示すものではありません
教えてくれるのは
小柴大輔先生
Z会東大進学教室や巣鴨にある大学受験塾ワークショップで講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)や司法試験受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。
感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。
スタディサプリでは、現代文のほか、小論文や総合型選抜・学校推薦型選抜対策講座を担当。
○△①冒頭で将来の目標を書いているのはGood!
このように将来の目標を冒頭で書くのは、志望理由書の構成として効果的。
また、教育学部・児童教育学部の場合は、当然ながら「教師(または保育士など)になりたい」という目標を持っている人が大多数なので、「教師になって何をしたいのか」まで書いているところは評価ポイントだ。
志望理由書の草案を作る段階では、時系列で、どんな経験をしてきて、どんなきっかけがあり、なぜ教師を目指すようになったのかをまとめるのが一般的ですが、実際に志望理由書を書く段階では、構成を工夫して、このように冒頭に目標をもってくるのは、アピールとして効果的です。
惜しいのは「書道の魅力」という言葉が誰にもわかる自明の表現として使われており、補足説明がないところ。
これだけでは、何が「書道の魅力」なのか読み手にはわかりません。
この人が感じている、そして広めたいと思っている「書道の魅力」とは、詳しく説明するとどういうことなのかを、この後の段落でも構わないので説明できると、なお良くなります。
○②経験に基づいて「教師になろうと思ったきっかけ」を書いているのはGood!
自分自身が児童・生徒として教わった経験、あるいは上の合格者の例のように、自分自身が教えた経験に基づいて「教師になろうと思ったきっかけ」を書くと、リアリティが増して読み手に伝わりやすい。
△③どのような「やりがい」なのかを掘り下げるとさらによくなる
「やりがい」という表現だけだと、やや漠然としてしまう。
この前の一文では具体的に何をしたかまで書いているので、そこを掘り下げて記述するとさらに良くなる。
具体的に、「どのような工夫をした結果、どのような反応が得られたか。その結果、どう感じたか」といったところまで記述すると、その後の「やりがい」が、より読み手に伝わる言葉になるはずです。
△④書道の何をより深く研究したいのかまで言及したい
大学で学びたいことを記述している点はGood。
ただし、せっかく触れるのであれば、書道の何をどういう切り口で研究したいのか(例えば、歴史、美学、現代的意識)まで言及できているとさらに良くなる。
◎⑤大学の模擬授業で得た気づきを詳しく書いているのはVery Good!
この部分は、オープンキャンパスの模擬授業で得た気づきについて詳しく具体的に書かれていて、高く評価できる。
この大学・学部で学びたいという志望理由にも直結しており、アピール度が高い。
合格した先輩の志望理由書②
国立大学 教育学部教育協働学科 一般選抜 合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
私は、日本文化を日本国内はもちろん、世界の人々にも伝えられる国語教員になりたいと考え、貴学を志望しました。
国語を学ぶことは多くの日本文化の理解に必要な存在です。例えば、俳句や短歌は日本語の特異性を生かした独自の文化であり、これらへの理解を深めるためにも国語教育は必要です。このことから私はまず国語教員を志しました。
また、私が高校2年で参加したオーストラリアへの留学プログラムの中で現地の学生と話す機会があり、そこで日本の高校への留学希望者の多さを感じました。マンガ等の現代日本の文化の中に潜む、翻訳されたものを通しては感じ取れないニュアンスを日本語で直接受け取りたいという方が多かったです。そこで、私は外国人に日本語を教えるノウハウを学び、自分自身もさらに自国への知識を深めていきたいと考えました。
よって私は国語教育と日本語教育、両方のスキルを同時に身につけることのできる貴学での学びを通して、日本文化を日本を含めた全世界の人につなぐきっかけとなる国語教員になりたいと考え、貴学を志望しました。
こちらは、国語教師として日本文化を世界に広めることをめざす人の志望理由書。
小柴先生はどのような点を評価しているのだろうか。
先生の解説
○⑥「日本文化」について俳句・短歌という具体例を挙げて説明している点がGood!
「日本文化を世界の人々に広めたい」という目標を冒頭で記述している点もいいが、そのすぐ後の段落で、俳句や短歌などの例を挙げて日本語の特異性を説明していることで、ここでいう「日本文化」が何を指しているのかが、読み手にすんなり伝わる。
◎⑦具体的な経験をきっかけとして記述している点がVery Good!
オーストトラリア留学の際の経験を通して得た発見が、国語教師を目指すきっかけになったという記述は、具体性があり、Very Good。
留学時の経験・気づきに関する具体的な記述が、続くストーリーに説得力を生み出しています。
△⑧国語教師としての働き方にまで言及するとさらに良くなる
同様の記述は冒頭にもあるので、ここでは国語教師としての働き方にまで具体的に言及すると、目標とする将来像がより明確に伝わるはずだ。
読み手は、ここまでの内容を踏まえて、「世界の人々に日本文化を広めたいなら、単に日本の学校で日本人の生徒を相手に国語教師をしたいというだけではないのだろう」と感じるはず。
その疑問に対して、「海外で日本への留学を希望する子どもや若者に日本語や日本文化を指導する教師になりたい」など具体的な答えが書いてあると、志望理由書のクオリティーが一段上がります。
教育学部・児童教育学部の志望理由書NG例
教育学部・児童教育学部の志望者は、入学前の段階で保育士・教師などめざす仕事が明確になっていることが多い。
そのため、卒業後の進路について、単に「小学校の教師になりたい」「保育士になりたい」と記述するだけでは、ほかの受験生との差別化は難しい。
また、教師を目指すきっかけも、自分自身が教わった経験にあることが多いので、その経験で自分にどんな変化や成長があったかなどをより掘り下げて記述することが必要だ。
いくつか具体的なNG例を紹介しておこう。
「小学校の教師になりたいです」で終わるのはNG!
<やりがちNG例>
私は、小学生の頃から、将来は小学校の教師になりたいという希望をもっています。
\改善ポイント/
目標に関する記述がこれだけで終わるのはNGです。
小学校教員を養成するコースの志望者はすべて小学校教師志望なので、これだけでは、ほかの受験生との差別化ができません。
必ずどのような教師をめざしたいのか、具体的に記述しましょう。
例えば、「多様な得意分野をもつほかの教師と連携しながら、児童が抱える諸問題に関して、チームで解決を図ることができる小学校教師になりたい」といった記述があれば、読み手は将来像を具体的にイメージしやすくなります。(小柴先生)
「保護者に勧められたから」を志望理由にするのはNG!
<やりがちNG例>
中学校教師をしていた父親から教師の仕事の素晴らしさを教わり、熱心に勧められたことが、私が教師を目指す理由です。
\改善ポイント/
医師などもそうですが、教師も、「保護者がその仕事に就いていて、勧められたから自分もめざす」という人が少なくありません。
しかし、実際にそうであっても、保護者に勧められたことだけが志望理由というのでは、主体性に欠ける印象を与えてしまいます。
そのような場合は、保護者から教師の仕事の内容ややりがいについて具体的にどのような話を聞き、それに対して自分はどう感じたかということまでしっかり書く必要があります。(小柴先生)
「子どもと遊んで楽しかったから」などの志望理由はNG!
<やりがちNG例>
高校1年生のとき、地域の保育園で子どものお世話をするボランティア活動に参加し、子どもと遊んで楽しかったことが、保育士をめざす理由です。
\改善ポイント/
「子どもが好きだから」「子どもと触れ合って楽しかったから」という志望理由には、「教育者としての視点」が欠けています。
大学に進学して、保育や教育のプロフェッショナルを目指すのですから、きっかけの部分にも必ず「教育者の視点」を盛り込むようにしましょう。
例えば、保育士や幼稚園の先生は、子どもと遊んでいるように見えるときも、子どもの心の発達などを意識しながら教育の一環として取り組んでいます。
現場の先生たちに質問すれば、そのような答えが返ってくるはず。
それを受けてどう感じたか、自分の子どもへの接し方がどう変わったかといったことこそ、志望理由書に書くべきことです。
教育学部・児童教育学部の志望理由書のポイント
では、改めて教育学部・児童教育学部の志望理由書を書く際のポイントをまとめておこう。
小学生までさかのぼってきっかけ探しを
教育学部・児童教育学部を志望している人の場合、自分自身が児童・生徒として先生から教わった経験がきっかけになっていることが多いもの。
そのため、志望理由書を書く際には、自分自身の小学生時代や中学生時代を丹念に振り返って、メモを取りながら、各時期の先生とのかかわりを思い出してみよう。
その過程で、自分でも気づいていなかった「先生になろうと思ったきっかけ」が見つかることもある。
小学生・中学生の頃の通知表を引っ張り出して、そこに書かれた先生からの言葉を読み直してみるのがおすすめです。
「そういえば、あの先生、良い先生だったな。そうだ、確かこんな思い出があった」と志望理由書にきっかけとして盛り込めるエピソードを記憶から引っ張り出せるかもしれません。
「幼児」「児童」「生徒」の使い方は要注意
文部科学省では、保育園や幼稚園に通う子どもを「幼児」、小学生を「児童」、中学生や高校生を「生徒」と定義している。
ちなみに「学生」は大学生や専門学校生を指す。
一般的には、小学生を「生徒」と言ったり、高校生を「学生」と言ったりすることもあるが、教育学部・児童教育学部を目指すのであれば、これらの用語は正しく使えるよう気をつけたい。
教師としての使命感についても論じたい
2本の合格者の志望理由書のように、「教師としてどのような専門性を身につけたいか」を志望理由書の柱に据えるのは正しい作戦。
ただし、柱が「教える技術」だけだと、「それなら、将来の目標は塾講師でもいいのでは?」といった指摘も想定される(志望理由書は面接の際の資料にもなる)。
教師の仕事は教科指導だけにとどまらず、児童・生徒の人間性を育てる、いじめや不登校などの問題を解決するといった多様な役割がある。
その点も意識して全体を組み立てたい。
そのため、「教える技術」に加えて、「教師としての使命感」をもう一つの柱に据えると、志望理由書の内容に厚みが増すはずです。
「教育問題の解決」もテーマとなり得る
今、日本の教育界は、「詰め込み型教育からの脱却」「いじめ・不登校問題」「教員の労働時間」などさまざまな問題を抱えている。
このような教育問題の解決も志望理由書のテーマとなり得る。
興味がある問題あれば、ぜひ関連する本などを読んで研究してみましょう。
問題意識をもって、自分が通う高校の教育や先生の日々の取り組みを現場で見つめることもポイントです。
それらを踏まえて、「現場の教員として何ができるか」という視点で問題について論じれば、読みごたえのある志望理由書になるはずです。
「地元で働きたい」もアピール要素になる
国立大学の教育学部は47都道府県すべてに一つ以上存在しており、その地域で働く教員の養成を担っている。
大学にとっても、大学がある地域での勤務を希望する受験生は歓迎しているため、志望理由書に「地元の学校の教師として働きたい」と書くことはアピール要素になると考えていい。
都道府県ごとに教育の課題や取り組みには違いがあります。
国立大学の教育学部では、その地域の教育の特色なども学ぶことができますから、地元で働くことを希望していることが、その大学を志望する理由になるのです。
教育学部・児童教育学部志望者におすすめの本
志望理由書を書くにあたっては、関連する本を読んで理解や考察を深めておくことも重要。
そこで、教育学部・児童教育学部に関連する分野のおすすめ本を小柴先生に紹介してもらった。
関心を広げ、志望動機を言語化する助けになるものなので、ぜひ読んでおこう。
『変わる保育園 ─量から質の時代へ─』普光院亜紀(岩波ブックレット)
保育園を考える親の会代表による、現代の保育園の解説書。
同じ筆者の『日本の保育はどうなる─幼保一体化と「こども園」への展望─』(岩波ブックレット)もおすすめ。
『子どもにかかわる仕事』汐見稔幸編(岩波ブックレット)
助産師・小児科医・保育士・小学校教師・養護教諭(=保健室の先生)・スクールカウンセラー・フリースクール主催者など各自の仕事内容を紹介。
『保育士という生き方』井上さく子(イースト新書)
東京都目黒区立保育園で保育士として38年勤務した筆者が、保育士の仕事や生き方、やりがいなどを解説。
『いのちはどう生まれ、育つのか─医療、福祉、文化と子ども』道信良子編著(岩波ジュニア新書)
看護師・助産師・小児科医・障害のある子どものための作業療法士や理学療法士・社会福祉士・各国の子ども文化を比較研究する文化人類学者・医療人類学者など14人の現場がわかる。
『子どもは40000回質問する─あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力』イアン・レズリー(光文社)
心理学者ミシェル・シュナイードとハーバード大教育学教授ポール・ハリスの研究によると、生後3~5年で子供は4万回質問するという。
子どもが中心テーマというより大人になっても知識と結びつけてどう好奇心を生き生きと保つのかがテーマ。
『まねが育むヒトの心』明和政子(岩波ジュニア新書)
生後数日の赤ちゃんが生き物らしい動きに反応するバイオロジカルモーション知覚やヒトの顔らしいものに注目する先天的能力は興味深い。
同じ筆者の『ヒトの発達のなぞを解く─胎児期から人類の未来まで』(ちくま新書)もおすすめ。
『なぜヒトは学ぶのか─教育を生物学的に考える』安藤寿康(講談社現代新書)
人間の行動や知性に対する遺伝要素と環境要素の影響の研究。
国内外のこれまでの研究データも多数紹介されている。
『いじめ問題とどう向き合うか』尾木直樹(岩波ブックレット)
「尾木ママ」で知られ、カウンセリングの資格ももつ教育学者である筆者がいじめ問題を論じる。
『国語教育の危機─大学入学共通テストと新学習要領』紅野謙介(ちくま新書)
高校国語教科書の編集に携わってきた筆者が、大学入学共通テストの試行テストの内容を分析し、問題点を論じる。
まとめ
教育学部・児童教育学部の志望者は、将来は教師や保育士になりたいと決めていることが多い。
そのため、志望理由書に「教師になりたい」「保育士になりたい」とだけ書いても、ほかの受験生と差をつけることは難しい。
どんな教育者を目指しているのか、自分の思いや目標を具体的に伝えることが重要だ。
また、教える技術だけでなく、「教育を通して何を伝えたいのか」といった使命感をしっかり盛り込むことで、教育のプロを目指す志望理由に説得力が生まれる。
自身で書いた内容を、ここで紹介した合格者の実例やNG例と見比べながら、少しずつブラッシュアップしていこう。
取材・文/伊藤敬太郎 監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(編集部)
学校パンフでイメージを膨らまそう
この分野の志望理由書では、「どんな教育者を目指しているのか」という思いや目標を、具体的に述べることが重要だ。
合格者は、どのようにそれを表現していたのか、実例を見てみよう。
そして忘れてはならないのが、・・・・・・

