【医学部・薬学部】合格者の志望理由書を公開!NG例・プロの解説付き
大学での学びが職業に直結する分野であるため、「なぜその職業を目指すのか」「将来どのように活躍したいのか」を明確に述べることが重要になる。
合格者は、その思いや目標をどのように志望理由書にまとめていたのか、実例を見てみよう。
さらにライバルに差をつけるには、自分が何に関心を持ち、大学でどのような研究をしたいのかまで掘り下げて表現することが求められる。
先生の解説から、志望理由書に求められる視点や構成の考え方を、しっかりと身につけておこう。
目次
合格した先輩の志望理由書①
公立大学 薬学部 薬学科 学校推薦型選抜合格者
志望理由書
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貴学を志望したのはレギュラトリーサイエンス研究室があるからです。また医学部、看護学部との合同実習があり、チーム医療を含め広い視野で医療について学ぶことができると考えています。
私は高校の探究活動でサリドマイド薬害について調べました。不十分な審査で承認されたことにより被害が広がった事を知り、医薬品の審査の重要性を痛感しました。それにより有効で安全な医薬品を確保することが人々の健康維持に繋がるのではないかと考えました。そして患者に安心して医薬品を使用してもらうために欠かせない重要な役割を果たしている、レギュラトリーサイエンスという分野に興味を持ちました。患者ごとに副作用を予測することが出来ればオーダーメイド医療や在宅医療にも貢献できるはずです。
大学では副作用の発生メカニズムや毒性の予測について学びたいと考えています。特に妊婦や高齢の患者へ薬が及ぼす影響について研究し、どの患者でも安心して使用出来る医薬品開発に貢献したいです。将来は保健所に勤めて薬事衛生の管理や安全な使用法の情報発信をし、患者が安心して薬を使用できるような環境作りに尽力したいです。
先生の解説
ここからは、受験指導のプロ・神﨑史彦先生に、先輩の志望理由書の「良いところ」を解説していただき、「より良くするための視点」をアドバイスしていただこう。
※本解説はスタディサプリ進路の講師が、志望理由書のよい点とその理由を解説したものであり、合否の判断基準を示すものではありません
教えてくれるのは
神﨑史彦先生
株式会社カンザキメソッド代表取締役。スタディサプリ講師。私立学校研究家。
高大接続・教育コンサルタント。21世紀型教育機構リサーチ・フェロー。
大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。
延べ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文・志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。
現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。
GOODポイント
◎自身が高校で取り組んだ探究学習を起点にレギュラトリーサイエンスに興味をもち、レギュラトリーサイエンス研究室のある大学(志望校)で学びたいと考えた…というストーリーに一貫性があり、流れがとてもスムーズです。
①◎薬害という課題意識に基づき、「副作用の発生メカニズムや毒性の予測」という大学で学びたいことが明確になっています。
②◎「どの患者でも安心して使用出来る医薬品開発に貢献したい」「保健所に勤めて〜〜をし、〜〜な環境作りに尽力したい」と、将来どのように社会に貢献したいかまで考えていることが伝わってきます。
こうしたらBETTERポイント
◎「高校の探究活動で〜〜について調べました」とあり、調べ学習で終わってしまっているのが残念。もう少し深掘りして、薬学の領域でどこまでわかっているかを探ったうえでレギュラトリーサイエンスに結びつけられるとより良い志望理由書になるでしょう。
合格した先輩の志望理由書②
国立大学 医学部 保健系学科 学校推薦型選抜合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
私は将来、癌治療に重点を置く診療放射線技師になりたいと考えています。きっかけは、祖父の癌の闘病生活を見ていた中で、癌検診の受診や放射線の重要性を感じたことです。祖父の癌の発見が遅れて全身に転移し、治療が緩和ケアのみになった際にも、祖父の生きたいと思い続ける姿が強く心に残り、放射線治療やその開発について学びたいと考えました。そのため、私は貴学の医学部保健学科放射線技術科学専攻を志望します。
大きな魅力を感じたのは医用量子科学の研究室がある点です。より副作用が少なく効果の高い治療を実現したいため、貴学で行われている、開発中の放射線治療法に関する研究に携わり、知識や能力を身につけたいと考えています。私は、より治療の効果を得るためには癌検診受診による早期発見、その後の早期治療が大切だと考えます。よって貴学で学ぶことで、将来的には癌検診の啓発や技術力のある放射線治療を行い、医療に貢献したいです。
こちらは「診療放射線技師」を目指す人の志望理由書だ。
神﨑先生はどのような点を評価しているのだろうか。
先生の解説
GOODポイント
◎「祖父の癌の闘病生活」をきっかけに「放射線治療やその開発について学びたい」と考え、大学で専門的に学んで診療放射線技師になりたい…というストーリーはよくできています。
①◎「医用量子科学の研究室がある」「開発中の放射線治療法に関する研究」など、志望校(学部・学科)でどのような研究が行われているかをよく調べていることが伝わります。
こうしたらBETTERポイント
○祖父の闘病について、「もし癌を早期発見できていたら、放射線治療が可能だった(が、できなかった)」という部分が抜けており、読んだ際にやや飛躍が感じられます。もう少し文章をブラッシュアップできるとより良くなるでしょう。
医学・薬学部の志望理由書NG例
興味をもったきっかけから大学で学ぼうと決めるまでのストーリーに一貫性がない、経験や実績ばかりが強調され「問い」が立っていない、オリジナリティーが感じられない…といった志望理由書はNG。
具体的にどのようなものがあるのか見てみよう。
内容が薄くオリジナリティーのない例
<やりがちNG例>
私は、幼い頃から人の役に立つ仕事に就きたいと考えてきました。特に、病気で苦しむ人々を助ける医療の道に魅力を感じ、医師になることを志望しました。
\改善ポイント/
なぜ医療の道に魅力を感じたのか、きっかけや理由にまつわるエピソードを盛り込み、オリジナリティーを出しましょう。
大学で何を学びたいのかが曖昧な例
<やりがちNG例>
入学後は、基礎から臨床まで幅広く医学を学び、将来は地域医療に貢献できる医師を目指したいと考えています。地域の方々の健康を守り、安心して生活できる社会の実現に尽力したいです。
\改善ポイント/
「基礎から臨床まで幅広く医学を学ぶ」というのは、医学部なら当然のこと。「地域医療に貢献できる医師」になるために、大学でどのようなことを学び、研究したいのかを盛り込みましょう。
医学・薬学部の志望理由書のポイント
医学・薬学の特徴は、大学での学びが将来の職業に直接つながること。
志望理由書では自分はなぜその職業に就きたいと考えたのかにとどまらず、何に関心があり大学でどのような研究がしたいかまで掘り下げる必要がある。
まずはテーマを絞り込んで軸を作り、自分のこれまでの経験や問いと結びつけながら、大学での学びにつなげるストーリーを作っていく。
その際に大切なのが、「何をしたか」にとどまらず、「どのように」や「なぜ」をしっかりと盛り込むこと。
そしてその結果、「どのような問いが立ったか」、「その問いを大学でどう深めたいのか」に結びつけていこう。
医学・薬学部の志望理由書の3つのポイントを、神﨑先生に教えてもらった。
職業に就きたい理由や職業観の先まで深掘りを
医学・薬学は、医者をはじめとした医療従事者や薬剤師など、将来の職業に直接つながる学問です。
そのため、志望理由書はその職業に就きたいと考えた理由や職業観(どのような〜になりたいか)がストーリーの軸になりがちです。
しかも、親が医療従事者で、自分が患者として医療を受けて…などと、きっかけとなる経験が似たり寄ったりになる傾向が顕著です。
興味・関心の発端を書く際には、その経験を通して自分は何を感じ、考え、どのような問いが生まれたのかまで掘り下げることが、差別化につながります。
大学で追究したいテーマや問いを明確に
大学は学問を追究する場であり、問いの視点が不可欠です。
志望理由書では職業の話に終始せず、大学で何を学びたいか、どのような研究がしたいかまで語れるようにすると良いでしょう。
その際には、高校時代に取り組んだ探究学習と紐づけるのが理想。
探究に熱心に取り組んだ人は、その問いを追究するためにどのようなアクションを起こしたのか、まで書けるとなお良いでしょう。
どのような課題を解決したいかを盛り込む
「〜の職に就くために大学で勉強したい」という表現では、受け身の姿勢だと捉えられかねません。
志望理由書では、医療の地域格差や妊産婦の受け入れなど「自分はこういう課題を解決したい」「そのために大学では〜を学びたい」という志や主体性を伝えることが大切です。
将来、どのようなかたちで社会に貢献したいのかまで含めて、しっかりと深掘りをしましょう。
医学・薬学部の志望者におすすめの本
志望理由書を書くにあたっては、関連する本を読んで理解や考察を深めておくことも重要。
そこで、医学・薬学に関連する分野のおすすめ本を神﨑先生に紹介してもらった。
関心を広げ、志望動機を言語化する助けになるものなので、ぜひ読んでおこう。
『泣くな研修医』 中山祐次郎(幻冬舎)
命と向き合う現場で葛藤しながら成長していく若き研修医のリアルを描いた青春医療小説。
『世界史を変えた薬』 佐藤健太郎(講談社)
歴史の転換点で重要な役割を果たしてきた薬の知られざる物語を描いた一冊。
まとめ
医学・薬学は、大学での学びが将来の職業に直接つながる学問。
それゆえ職業の話が中心になりがちだが、大学ではどのようなことについて追究したいのか、なぜそう考えたのか、その学びを活かしてどのような社会課題を解決したいのか、といった本質まで掘り下げることが重要だ。
志望理由書をありきたりなものにしないためにも、自分の経験と結びつけて自分の言葉で表現することを心がけよう。
取材・文/笹原風花 監修/神﨑史彦 構成/寺崎彩乃(編集部)
学校パンフでイメージを膨らまそう
大学での学びが職業に直結する分野であるため、「なぜその職業を目指すのか」「将来どのように活躍したいのか」を明確に述べることが重要になる。
合格者は、その思いや目標をどのように志望理由書にまとめていたのか、実例を見てみよう。
さらにライバルに差をつけるには、・・・・・・

