【獣医学部・動物看護学部】合格者の志望理由書を公開!NG例・プロの解説付き
大学での学びが職業に直結する分野であるため、「なぜその職業を目指すのか」「将来どのように活躍したいのか」を明確に述べることが重要になる。
合格者は、その思いや目標をどのように志望理由書にまとめていたのか、実例を見てみよう。
そして見落としがちなポイントは、「なぜ人ではなく“動物”なのか」を自分の言葉で明確にできていること。
先生の解説から、志望理由書に求められる視点や構成の考え方を、しっかりと身につけておこう。
目次
合格した先輩の志望理由書①
私立大学 動物看護学系学科 総合型選抜合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
私は将来動物看護師になり、健康管理やリハビリの介護を通して、飼い主とのコミュニケーションを取り、サポートする力を身につけたいと考えています。そのため、貴学では特に高齢動物看護学やリハビリテーションについて学びたいです。また、貴学は設立当初から国際的な活動に力を入れており、海外の知識や技術を学ぶ機会が豊富で、グローバルな視野を持つことが出来ると感じました。
さらに、キャンパス内にはホームドクターと連携して、高度な動物医療を提供する二次診療施設があり、3年時の実習で最先端の医療を学べる点も魅力的だと思います。
貴学での経験や学びを通じて幅広い視野を持ち、飼い主と動物の不安を和らげる事が出来る動物看護師になりたいです。
先生の解説
ここからは、受験指導のプロ・神﨑史彦先生に、先輩の志望理由書の「良いところ」を解説していただき、「より良くするための視点」をアドバイスしていただこう。
※本解説はスタディサプリ進路の講師が、志望理由書のよい点とその理由を解説したものであり、合否の判断基準を示すものではありません
教えてくれるのは
神﨑史彦先生
株式会社カンザキメソッド代表取締役。スタディサプリ講師。私立学校研究家。
高大接続・教育コンサルタント。21世紀型教育機構リサーチ・フェロー。
大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。
延べ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文・志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。
現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。
GOODポイント
①◎「高齢動物看護学やリハビリテーションについて学びたい」と大学で学びたいことが明確に書かれています。
②◎「設立当初から国際的な活動に力を入れている」「キャンパス内にはホームドクターと連携して、高度な動物医療を提供する二次診療施設がある」など大学の研究活動や施設についてよく調べられています。
③◎「飼い主と動物の不安を和らげる事が出来る動物看護師」と将来なりたい職業像にまで言及されています。
こうしたらBETTERポイント
○海外に向けた視点は評価できる一方、「海外の知識や技術を学ぶ機会」と「高齢動物看護学やリハビリテーション」の関係性が不明瞭なので、ここを明確にするとより良くなるでしょう。
合格した先輩の志望理由書②
私立大学 獣医学部 動物看護学系学科 一般選抜合格者
志望理由書
※下線をタップすると先生の解説に遷移します
家族の一員の犬がマスクを誤食したことで腸閉塞を起こし、複数回の手術を受け苦しむ姿を見て胸が締め付けられた経験から、動物の苦しみを和らげる治療に携わりたいという強い思いが芽生え、この道を志すきっかけとなりました。
貴学を志望する理由は、実習内容が充実していることに大きな魅力を感じたからです。特に「動物トレーニング学実習」で犬のしつけを基礎から学び、的確な判断力と対応力を養いたいと考えています。また、動物医療センターでの実習をはじめとする多様な経験を通じて、専門知識を深め実践的な技術を磨きたいです。
さらに、貴学の高い国家資格取得率や獣医学科との連携によるチーム医療の学びに魅力を感じ、同じ志を持つ仲間とともに切磋琢磨できる環境だと確信しています。
以上の理由から、私は貴学への入学を志望します。
こちらも「動物看護師」を目指す人の志望理由書。
神﨑先生はどのような点を評価しているのだろうか。
先生の解説
GOODポイント
◎自身の経験をきっかけに「動物の苦しみを和らげる治療に携わりたい」と考えるようになり、そのための環境として志望校が最適であると考える…と締めくくっており、興味をもったきっかけから志望校を選んだ理由までのストーリーができています。
①◎具体的な実習内容や国家資格の取得率、獣医学部との連携など、大学についてよく調べていることが伝わります。
②◎「犬のしつけを基礎から学び、的確な判断力と対応力を養いたい」「専門知識を深め実践的な技術を磨きたい」と、大学での学びを通して身につけたいことが明確に記されています。
こうしたらBETTERポイント
○「動物の苦しみを和らげる治療に携わりたい」とありますが、現状では獣医学ではなく動物看護学を学びたいと考えた理由が不明瞭なので、ここを深掘りするとより良くなるでしょう。
獣医・動物看護学部の志望理由書NG例
興味をもったきっかけから大学で学ぼうと決めるまでのストーリーに一貫性がない、経験や実績ばかりが強調され「問い」が立っていない、オリジナリティーが感じられない…といった志望理由書はNG。
具体的にどのようなものがあるのか見てみよう。
「なぜ動物なのか」が伝わらない例
<やりがちNG例>
高校に入り、生物の授業を通して生命の神秘に触れ、動物の体の仕組みや生態について学ぶうちに、その奥深さに魅了されました。
\改善ポイント/
なぜ、「人体」ではなく「動物の体の仕組みや生態」に魅了されたのか…を深掘りして盛り込むと説得力が生まれます。
動機が弱くオリジナリティのない例
<やりがちNG例>
私は幼い頃から動物が好きで、犬や猫をはじめさまざまな動物と触れ合うことが私の喜びでした。動物園や牧場に行くたびに、彼らの愛らしい姿や力強い生命力に心を惹かれ、いつか動物たちの役に立つ仕事がしたいと願うようになりました。
\改善ポイント/
動物が好き、心惹かれる…というのはきっかけとしては弱いため、どのような課題があるのか、どのようなかたちで動物の役に立ちたいのかを掘り下げましょう。
獣医・動物看護学部の志望理由書のポイント
獣医・動物看護学の特徴は、動物をケアや研究の対象とすること。
志望理由書では「なぜ(人ではなく)動物なのか」という説得力のある理由を提示する必要がある。
また、獣医師や愛玩動物看護師といった職業と直結するため、職業の話に終始しがちなのも注意点。
なりたい職業像でとどまらず、大学では何を追究し、どのような力を身につけたいのかまで掘り下げよう。
獣医・動物看護学の志望理由書の3つのポイントを、神﨑先生に教えてもらった。
職業に就きたい理由や職業観の背景まで深掘りを
獣医・動物看護学は、獣医師や愛玩動物看護師など、将来の職業に直接つながる学問です。
そのため、志望理由書はその職業に就きたいと考えた理由や職業観(どのような〜になりたいか)がストーリーの軸になりがちです。
さらに、幼い頃から動物が好き、ペットの病気や死を経験したなど、きっかけとなる経験が似る傾向にあります。
興味・関心の発端を書く際には、その経験を通して自分は何を感じ、考え、どのような問いが生まれたのかまで掘り下げることが、差別化につながります。
大学で追究したいテーマや問いを明確に
大学は学問を追究する場であり、問いの視点が不可欠です。
志望理由書では職業の話に終始せず、大学で何を学びたいか、どのような研究がしたいかまで語れるようにすると良いでしょう。
その際には、高校時代に取り組んだ探究学習と紐づけるのが理想。
探究に熱心に取り組んだ人は、その問いを追究するためにどのようなアクションを起こしたのか、まで書けるとなお良いでしょう。
どのような課題を解決したいかを盛り込む
「獣医師・愛玩動物看護師の職に就くために大学で勉強したい」という表現では、受け身の姿勢だととらえられかねません。
志望理由書では、「自分はこういう課題を解決したい」「そのために大学では〜を学びたい」という志や主体性を伝えることが大切です。
その際、「なぜ(人ではなく)動物の医療にこだわるのか」を課題とからめて語れると、説得力のある志望理由書になるでしょう。
獣医学・動物看護学部の志望者におすすめの本
志望理由書を書くにあたっては、関連する本を読んで理解や考察を深めておくことも重要。
そこで、獣医学・動物看護学に関連する分野のおすすめ本を神﨑先生に紹介してもらった。
関心を広げ、志望動機を言語化する助けになるものなので、ぜひ読んでおこう。
『獣医学を学ぶ君たちへ』 中山裕之( 東京大学出版会)
命と真剣に向き合う獣医学の本質と覚悟を問いかけるメッセージブック。
『高遠動物病院へようこそ!』 谷崎泉(KADOKAWA)
動物と人をつなぐ心温まる物語が展開する獣医師の青春ミステリー。
まとめ
獣医学・動物看護学は、大学での学びが将来の職業に直接つながる学問。
それゆえ職業の話が中心になりがちだが、大学ではどのようなことについて追究したいのか、なぜそう考えたのか、その学びを活かしてどのような社会課題を解決したいのか、といった本質まで深掘りすることが重要だ。
志望理由書をありきたりなものにしないためにも、自分の経験と結びつけて自分の言葉で表現することを心がけよう。
取材・文/笹原風花 監修/神﨑史彦 構成/寺崎彩乃(編集部)
学校パンフでイメージを膨らまそう
大学での学びが職業に直結する分野であるため、「なぜその職業を目指すのか」「将来どのように活躍したいのか」を明確に述べることが重要になる。
合格者は、その思いや目標をどのように志望理由書にまとめていたのか、実例を見てみよう。
そして見落としがちなポイントは、・・・・・・

