圧倒的に多いのが「やりたいこと」に関する悩みなんですよ。これには2つのタイプがあって、「やりたいこと」はすでにあって、どうしたらなれるのか、自分にできるのかで悩んでいる場合と、「やりたいこと」自体わからない、みつからないという場合があります。
いずれについても、保護者や学校の先生の反対がからんでいるケースはとても多いというのが実感です。表立って反対されているわけではなくても、例えば、親は絶対専門学校より大学進学を望んでいる、仕送りは無理だから東京の学校はあきらめるしかない、国立を目指さないと先生にいい顔をされないといったことも、自分がやりたいことを考えるときの壁になってしまうんですね。
極端な例ですが、親御さんが医療関係の仕事をされていて、その子が自分の希望の進路を話したら、「医療関係以外はダメだ」と言って数日間口をきいてもらえなかったというのも、実際にあった相談なんですよ。
親は誰でも自分の子どもの幸せを願っているものですが、知らず知らずのうちに、それが自分自身の理想にすり替えられていたり、自分が生きてきた歴史のなかでこうと思い込んでしまっていたりすることがあります。
それに親と子では育った時代も違います。かつての右肩上がりの時代は大企業に就職できれば安定した人生が保障されていたけれども、バブル崩壊以降、誰もこの生き方が正解だとは言えなくなってしまいました。「成長社会」ではひとつの正解を出す力が求められたが、今後の「成熟社会」ではいろいろな正解を出す力が求められると、多くの識者も語っています。保護者が信じる生き方が唯一絶対の正解である保証は、今後ますますなくなっていく。だから、保護者は子どもの進路に正解を出してはいけないのです。
1962年生まれ。就職情報会社、出版社を経て1997年キャリアコンサルタントに。
企業や学生対象のハートフル&パワーあふれる講演、執筆活動を展開中。