一緒に考えようというスタンスが大切だと思います。アドバイスではなく、子どもの横に並んで、同じ方向から同じものを見ながら一緒に考えるのです。実際、並んで座ってみるのもよい方法ですよ。食卓をはさんで座るのと違って、新聞だってテレビだって同じ目線で見られますから。
一緒に考えていけば、当然、社会経験のある大人ならではの意見も出てきます。でもそれは、あくまでも提案に止めてください。子どもに苦労させたくない気持ちから「そんなには甘くない」などと口を出したくなるものですが、実は自分が安心したいだけなのです。そこは自分自身と戦わないといけません。
私自身にも経験があります。息子の就職活動のときのことです。ありがたいことに数社から内定をいただいたのですが、そのうち1社は息子に合うとは思えない業界でした。私自身は大反対でしたが、将来、自分で出した答えに責任を取らない人間にはなってほしくなかったので、彼が意思決定するまで一切意見を言わないと決めました。本人が考え抜いた後に伝えることにし、すべて「お楽しみ貯金」にしました(笑)。幸い期待どおりの選択をしてくれ平穏に過ぎましたが、そんな我慢も保護者には必要でしょう。
社会を知っている人ほど、そうした言い方をしてしまうのかもしれません。景気がどうなるのか、どの業界が伸びるのか自分にもわからなくてつい、「好きな道に進め」という格好のいい言い方で逃げてしまう。でも、それは一種の放任ですよ。大人ですらわからない未来の進路を17、18歳の高校生がひとりで決められるはずがないですから。
保護者が立派なモデルである必要はないのです。わからないなら「わからない」、「自信がない」と言っていい。自分の歴史だって語ってもいい。もちろん絶対にダメなときはダメだと言う必要もありますが、子どもの将来は子どものものであることを十分理解し、その子にとっての幸せを一緒に探してあげたいものです。
そのためには、学費の問題なども子どもとじっくり話し合ってほしい。高校生からの相談でも、保護者から言われた「大学は厳しい」という一言に悩んでいる子が非常に多いんですよ。保護者としては家計の厳しさを明らかにするのは忍びないですが、それでは子どもも納得できません。家計の実態がどうで、どれだけ苦しく、進学資金にいくら割け、志望校の学費はいくらなのか、一緒に考えれば、奨学金やアルバイトなど、解決の道もみつかるかもしれません。
1962年生まれ。就職情報会社、出版社を経て1997年キャリアコンサルタントに。
企業や学生対象のハートフル&パワーあふれる講演、執筆活動を展開中。