
2023/03/01
身体や発達に障がいのある子どもたちにおこなわれている特別支援教育。通っていた学校に特別支援学級があった人は馴染みがあるかもしれませんね。「特別」と言うだけに、限られた子どものためのものと思いがちですが、実はそうではありません。今回は、すべての子どもをやさしく支える、特別支援教育を紐解いていきましょう。

特別支援教育がスタートしたのは平成19年4月。障がいのある子どもの自立や社会参加を支援するため、一人ひとりのニーズを把握して支援をおこなうことを目的に、学校教育法に位置づけられました。簡単に言うと、特別支援学級で進められているのは、それぞれの子どもの特性に寄り添う教育。得意なことを見つけて伸ばす指導、やる気や自信を引き出す声掛け、落ち着いて学習できる環境づくりなど、さまざまな取り組みがおこなわれています。

もちろん、特別支援学級では障がいの状態に合わせて個別の対応がなされますが、たとえば、気の散りやすい子も授業に集中できるよう、黒板周りの掲示物を外すなど、学級全体に向けて簡単にできる支援もたくさんあります。つまり特別支援教育とは、「どうしてできないの?」ではなくて、「どうすればできるかな?」という視点に立った、やさしい配慮や工夫。障がいの有無に関わらず、あらゆる子どもにとっての学びやすさにつながるのです。

だからこそ特別支援教育は、通常学級でも必要とされています。たとえば、いわゆるグレーゾーンの子どもたちへの支援。知能や発達に関する検査の結果は標準範囲内なのに、学校での学習や行動が上手くいかない。そんな個性を持つ子どもが近年増加しています。こうした子どもには一定の支援が必要なのに、「やる気がない」「努力が足りない」と勘違いされてしまうことも。通常学級でつらさを抱える子どもを救うためにも、特別支援教育の知識が役立つのです。

近年、さまざまな場で他者を評価・判断したり、批評したりする風潮が広がっていますよね。しかし、多様な個性を持つ子どもとのかかわりにおいて、「評価的視点」だけでその子を見ると、長所や変化を見逃したり、何を訴えようとしているのかを感知できなくなったりする危険性も。そしてそれは一般的な人間関係でも同じ。だから、評価や判断をする前に、まず相手の気持ちや声に耳を傾けてみて。そうすれば、身近な人にも自分にも、もっとやさしくなれるはずです。