振動工学研究室
立体構造の複雑系。
配管の揺れを評価して
原子力施設の安全を守る。
立体構造の複雑系。
配管の揺れを評価して
原子力施設の安全を守る。
原子力施設の安全性を高めること。それが私の仕事です。
地震国である日本は、いつも揺れています。
建屋を頑丈にすることだけではまだ十分ではなく、
重要な機器たちも揺れから守って、
しっかり機能させなければいけません。
特に配管は、原子力施設にとっての血管です。
立体的な構造をもつ、大小さまざまな配管は、
揺れに対してとても多様な動きを見せます。
設計想定を超える地震の時に、配管はどのように揺れるのか。
壊れるとしたら、どこから、どのように壊れていくのか。
実験とデータの解析を繰り返し、
振動を評価する方法を探っています。
私が生まれたのは阪神淡路大震災が起きた年。
東日本大震災は、中学3年の期末試験の日でした。
テストが終わって、家に着いて、
昼ご飯を食べ終わったら、ガーっと揺れて。
たいへんな惨状を目の当たりにした
そんな時に、頭に浮かんだのは、
安全な世の中をつくるために、
自分は何かできないのか、という問いです。
そして今、私がこの仕事に就いている。何か運命的な気がします。
子どもの頃はロケットが大好きで、
大きくなったらロケットエンジニアになるんだ、と夢みてました。
大学でも、ロケットに少しでも関わりたくて、
最初は流体工学とか、ロケットエンジンを勉強しようと考えていました。
でも、縁とは不思議なものです。
振動工学の古屋先生と出会って、振動工学のことを知って、
すっかり夢中になってしまいました。
古屋研で研究していたのは、機器の「空気浮上免震装置」。
空気の力で機器を浮かせて揺れる地面から切り離せば、
そもそも揺れないよね、という考え方です。
昔からたくさんアイデアは出されています。
エアホッケーとか、ホバークラフトのイメージ。
もちろん制御は簡単ではないんですけど。
偶然ですが、想定したよりも良い結果が取れたんですよ。
連続で揺らしてやっても免震されていたんです。
浮いてられたんですよ、そんな長い時間を。
興味があったら、ぜひふらっと古屋研を訪ねてみてください。
皆さんの先輩方はきっと、大歓迎してくれるはずです。
金属の飛翔体をコンクリート壁に衝突させ、中にある機器模擬体がどれぐらい振動するかを計測する実験なども行います。原子力施設を飛来物の衝突などから守ることも、耐震研究に並び、重要なテーマのひとつです。
振動で壊れないようにするとか、低減するための解決方法は、
手段を選ばなければ、ほぼ必ずあります。
例えば、世の中すべての建物の壁の厚さを10倍にして、
すごく頑丈なものを作ればいい、
それはみんなわかっているんだけど、
それじゃ人が住む場所ではない建物になってしまいます。
建物本来の機能を犠牲にしたらなんの意味もありません。
細長いものを作れば揺れるし、
大きなものが揺れれば、力がかかる。
実構造物に制約がある以上、振動だけを狙ったとおりにコントロールするのは難しい。
でも、そこには何かしらのブレイクスルーへの道があるはずなんです。
それは簡単にできることじゃないし、一人でできることでもありません。
いっぱい考えて、たくさんの知恵を集めて、
なんとか、みんなが幸せになれるアプローチを見つける。
そのために私は研究を続けています。
2025年の春から、東京電機大学大学院の博士後期課程に入学して、
古屋先生のもとで引き続き振動の研究をすることになりました。
2足のわらじ、自費での進学——
でも、これからが楽しみですよ。
寝ても覚めても、電車に乗っていても
振動のことは頭のどこかでいつも考えていますね。
好きなのは実験なのか、解析なのか、
まだちょっと自分でもよくわからないんですが
日々の生活の中に、人生の中に
組み込まれてしまっているのかもしれないですね。
楽しいですからね、考えるのは。
Profile
滝藤 聖崇さん
理工学研究科[修士課程]
電子・機械工学専攻(現 機械工学専攻)
小さい頃は本の虫
大学受験は国文科も受けました
子どもの頃から本が大好きで、「大どろぼうホッツェンプロッツ」に夢中になったし、いろいろな小説やエッセイなどをたくさん読んできました。
「神秘の島」は工学への興味を掻き立てるきっかけになったかもしれません。
高校時代は理系クラスでしたが、文系への道も捨てきれず、2度目の大学入試では、国文科の大学も受験したほどです。進学先はずいぶん迷いました。最後は未来の自分がイメージできるかどうかで決めました。
その当時は、文系で活躍できる自分の姿が思い浮かべられなかったのですが、ロケットとか大きな機械を相手にする姿はイメージできたんです。
でも、まさか自分がこんなに振動工学にハマることや、原子力の安全に携わる仕事ができるということまでは
予想していませんでした。
Corporate
国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構(JAEA)は、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構を統合再編して設立された、原子力に関する研究と技術開発を行う研究機関。2025年に設立から20周年を迎えた。
振動工学研究室のいま
設備や機器の故障を予知できれば、
適切なタイミングでのメンテナンスが可能に
設備や機器の安全性を高め生産性を向上させるためには、それらが万全な状態で稼働するようにしっかりと「保全」する必要があります。保全には、事後保全、予防保全、予知保全があります。事後保全は、トラブルが起こった時に対処することですが、重大な事故につながり、損害額が大きくなる可能性があります。そうしたトラブルが起きないようにすることが予防保全と予知保全です。予防保全は定期的な点検やメンテナンスを行いますが、人員と労力がかかってしまいます。その点、故障の予兆を発見して保全する「予知保全」は、適切なタイミングでメンテナンスを実施できるため、他の方法と比べて部品やシステムの寿命を延ばすことができ、コスト削減、安全性の向上、生産ラインの安定稼働につながります。ただ、予兆は熟練した技術者でも発見がとても難しいのが現実です。私の研究は予知保全に必要な、機器の状態を判断するための膨大なデータ収集と、データから適切な情報の抽出と故障傾向の察知を、AIの技術を用いて行うこと。膨大なデータをAIにどのように学習させれば、高度な予知保全が可能になるかをテーマに研究に取り組んでいます。
振動工学研究室とは
古屋 治 教授
身近な振動から地震まで、「耐える、抑える、活用する」をキーワードに研究。また企業との共同研究などにより実験的、解析的に社会システムの機能安定化要素技術を研究します。
はDependable(信頼できる)人から信頼されるように、
謙虚に、まじめに
人とのつながりを大切にしたいといつも思っている。人間関係を円滑に進めるためには、誠実であることが大事。何事にも、謙虚になって、まじめに取り組んでいきたい。