地球の生き物を知り尽くせ。

昆虫の謎と不思議を
実験と観察で解き明かす

動物学科 西村 知良 教授

「昆虫生態学」

夏に子育てをやめる、ヨツボシモンシデムシ
あなたは、いつも畑で深い穴を掘っている人を見かけたとします。「どうして穴を掘っているんですか?」と聞いてみたくなりませんか? 私が昆虫生態学を研究する理由は、そんな感覚にとても近いものがあります。この虫はなぜ土の中に卵を産まなければいけないか? なぜ土を掘っているのか? そんな、昆虫の行動の謎を解き明かすのが昆虫生態学です。
例えば、リスが冬眠するように、昆虫にも厳しい季節を乗り切るために「休眠」するものがいます。ヨツボシモンシデムシは、昆虫の中では珍しく子育てをする虫として知られていますが、なぜか夏に見かけることはあまりありません。飼育実験でわかったのは、気温が25度を超えると、成虫は繁殖行動をやめてしまうということ。成虫は活発に動き回りエサも食べるのに、卵を産まず子育てもしません。実はこれが「休眠」です。休眠とは動かずに眠りにつくことではなく、ライフサイクルの次の段階に進まないということです。ヨツボシモンシデムシの卵は25度を超えると死んでしまいます。そのため夏の間は繁殖行動と子育てをやめて休眠するという進化をしたわけです。
昆虫のライフストーリーの謎を解く
ほかにも、不思議な生態を持つ昆虫はたくさんいます。衣類に穴を開ける害虫であるヒメマルカツオブシムシの幼虫は、成長がとてもゆっくりで数年かけて成虫になります。羽化するのは必ず春。不思議なことに、そこで羽化しなかった幼虫は幼虫のままで、次の春まで羽化を待つのです。研究の結果、昆虫には珍しい1年サイクルの体内時計を持っていることがわかりました。また、そのヒメマルカツオブシムシの幼虫に卵を産み付けるキアシアリガタバチという寄生バチがいます。それまで一度も幼虫を見たことが無く、視力も弱いはずのアリガタバチは、幼虫を発見するとすぐにとりついて、神経が集中している1点を正確に突き刺して仕留めます。キアシアリガタバチは、なぜヒメマルカツオブシムシの幼虫を見分けられるのでしょう。鳩と牛ほども大きさが違う小さなアリガタバチが、暴れ回る幼虫の急所1点をどうやって見つけているのでしょうか。
昆虫の不思議なライフストーリーの謎を、実験と観察で掘り起こす。それが昆虫生態学の研究です。

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