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茨城大学、身近な戦争遺跡を紹介するDVDを人社・日本近現代史ゼミが制作

(2024/2/29)

茨城県内には、戦時中に海軍や陸軍の基地と使われていた場所や、戦争で命を落とした人びとを悼むモニュメント、あるいは銃後の人たちの動員の歴史や平和の大切さを伝え継ぐ施設といった戦争遺跡が多数ある。



このほど茨城大学人文社会科学部の佐々木啓准教授(日本近現代史)のゼミでは、茨城県ピースアクション実行委員会との連携により、「茨城の戦争遺跡 身近に残る戦争の記憶」と題するDVDを制作した。学生たちが取材や台本作成、出演やナレーションまで務めた約30分の映像。3月21日に水戸市内のホテルで完成報告会が開かれた。



映像は、第1章「県内につくられた軍事基地」、第2章「ひろがる戦争動員」、第3章「特攻」、第4章「空襲の惨禍」、第5章「平和を願って」という5章で構成。茨城県内のさまざまな戦争遺跡を紹介しながら、多角的な視点で戦争の歴史や平和の大切さを理解できる内容だ。ドローン撮影を含む動画の撮影や編集についてはプロの映像制作会社が手掛け、見ごたえのある映像となった。



第1章では、阿見町の霞ケ浦海軍航空隊基地に関わる戦跡も紹介されている。基地があった場所は現在の茨城大学阿見キャンパス周辺にあたっており、キャンパス内には兵士が方角について学ぶために作られた大きな石造りの「方位盤」などが残されている。



また、若者や外国人の動員に着目した第二章では、満蒙開拓青少年義勇軍の訓練の地であった水戸市内原町にある内原郷土史義勇軍資料館、日立鉱山での採掘部門の厳しい労働に朝鮮人や中国人が動員された歴史を伝え継ぐ石碑、多くの女性が製造に関わった風船爆弾の放球台跡(北茨城市)などを紹介。

たとえば風船爆弾放球台跡の紹介場面では、現地に立って遺跡の紹介をする学生と風船爆弾のCGとを並べて画面に映し出すなど、視聴者がよりイメージしやすくなるような工夫を施した。



第3章では、戦況が厳しくなる中、若い人たちが特攻兵器・桜花によって出撃させられたことが紹介された。ナレーションでは、「お国のため」に命を落とした若者の心境に触れ、「賛成する人が多い中で(抵抗や恐怖を)語ることは簡単なことではない」「戦争のときに人びとの間に流れる雰囲気は現在とはまったく違ったものだった」と述べられている。



この映像制作は、茨城県内で戦跡ツアーなどの活動を行っていた茨城県ピースアクション実行委員会が、コロナ禍でイベント開催が困難になったことなどを踏まえて企画したもの。以前より県内の戦争遺跡の調査活動をしていた佐々木准教授が、実行委員会から依頼を受け、その後昨年4月から1年間たっぷりかけて、ゼミの学生たちが調査と制作を進めた。



完成報告会では、制作を終えた学生たちが感想を報告。

学生たちが最も苦慮したのは、「子どもたちにどう伝えるか」「どうすれば伝わるか」ということだったようだ。実際、台本は何度も書き直したそう。卒業研究でも特攻をテーマにしているという学生は、「伝えたいことはたくさんあったのですが、最初に作った原稿はどんどん削られていきました」と振り返る。



また、水戸空襲からの復興のシンボルとなっている銀杏坂の大銀杏を取材した学生は、「高校のときに毎日前を通って通学していましたが、空襲のことを伝えているとは知りませんでした。身近にこうした遺跡が多く残されていること、そしてまずは興味を示すことが大事ということがわかりました。DVDを通して子どもたちにそれが伝われば」と話す。

 

一方、メンバーの中には茨城以外の地域出身の学生も少なくない。愛知出身の学生は、「茨城のことは正直よく知りませんでしたが、今回の制作を通じて茨城そのものについても調べることができました。勝手に愛知県版も作ってみようかなと思い始めています」と話してくれた。



映像の中では当時の写真などの画像資料も多く挿入される。それらの資料の使用許可を取ることも大変だったようだが、それらの作業は茨城県ピースアクション実行委員会のみなさんが担当したとのこと。



佐々木准教授は、「苦労して許可を得ていただいた以上、良いものを作らないといけないと改めて思わされました」と話し、「みんなの想いをぶつけ合い、共有し、つながってできた成果です」と映像の仕上がりへの手応えを覗かせた。



茨城県ピースアクション実行委員会の小島正代さんも、「素敵なDVDが仕上がりました。今後大事に活かしていきたいです」と語っていた。今後は市町村の教育委員会などに依頼し、小中学校にDVDを配付するほか、主催する勉強会の場などでの上映を検討しているとのことだ。



■詳細リンク先(https://www.ibaraki.ac.jp/news/2023/03/27011934.html)