社会福祉士・精神保健福祉士ガイド(2/2)
精神保健福祉士とは?なり方、働きながら資格を取得するポイント、仕事内容を解説!
精神保健福祉士は、精神障がいやメンタルヘルスの問題を抱える人に対し、高い専門性をもって相談援助を行う専門職。
ニーズが高まっている職種で、資格を取って転身したいと考えている人も少なくないでしょう。
そんな人に資格取得のポイントとして着目してほしいのは、通信系大学の保健福祉系学部・学科で学ぶという方法です。
通信制大学の選び方や精神保健福祉士の資格取得法、仕事内容など解説します。
2-1精神保健福祉士とは
精神保健福祉士は、1997年に精神保健福祉法が制定され、創設された国家資格。精神障がいのある人やその家族に対して、社会参加のための相談に対応したり、援助を行う専門職の資格です。精神障がいの対象には、認知症や発達障がいのある人、うつ病患者なども含まれます。有資格者は精神科医療機関や福祉行政機関などさまざまな場で活躍し、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)とも呼ばれる存在です。
仕事内容は職場にもよりますが、支援対象者の日常生活や就業に関する援助など。そうした活動を通して精神面のハンディキャップがある人が、その人らしい生活スタイルを獲得し、地域社会のなかで自立して暮らしていけるよう、精神保健福祉士は支援を続けていきます。
支援対象者の人権を守ることへの配慮や、医師や他分野の専門家、多くの関係機関との連携も求められる仕事ですが、高ストレス社会といわれる今、ニーズが高まっています。日常的なメンタルヘルスの不調を予防し、心の病を引き起こすことを未然に防ぐといった観点からも、精神保健福祉士の果たす役割は、ますます重要になっています。
また、精神保健福祉士の国家資格は、「名称独占」資格です。有資格者だけがその名称を名乗ることができるという資格で、精神保健福祉士のほか、社会福祉士、保育士、栄養士などが名称独占資格です。ちなみに医師や看護師、薬剤師、などの国家資格は、有資格者だけが業務に就くことができる「業務独占」資格です。
2-2精神保健福祉士になるには
精神保健福祉士になるには、国家試験に合格して資格を取得することが必要です。精神保健福祉士の資格は名称独占資格なので、資格がなくても業務に就くことはできますが、精神に障がいがある人にかかわる施設などでは資格取得者を応募条件とするケースが増えています。精神保健福祉の分野で長く活躍したいなら、資格取得は必須条件といえるでしょう。
国家試験の受験資格
国家試験は年1回、例年2月上旬に実施されます。複数の受験資格が定められており、いずれも受験資格を取得するには一定の養成機関などでの学習や実務経験が必要とされています。従って、精神保健福祉士になるための第一歩は、国家試験の受験資格を得ることにあるといえます。
受験資格の取得ルートは11通り。少々複雑ですが、この記事では高校卒業後の学歴などを軸にして、受験資格を得る方法を解説していきます。学んだ学校種や学部、履修した科目などによってルートが異なっているので要注意。
大学を卒業した人
福祉系大学など(※)を卒業している場合
- Case1 4年制大学の保健福祉系学部・学科で所定の「指定科目」を履修し、卒業。
- 国家試験の受験資格があります。実務経験なしで受験できます。
- Case2 4年制大学の福祉系学部・学科で所定の「基礎科目」を履修し、卒業。
- 実務経験は不要ですが、受験資格を得るには短期養成施設などで6カ月以上学ぶ必要があります。
※「福祉系大学など」とは、指定科目または基礎科目を履修できる学校(4年制)のこと。この記事では大学を例に挙げて解説していますが、4年制の専門課程をもつ専門学校も「福祉系大学など」に含まれ、受験資格の適用対象になります。
一般大学を卒業している場合
- Case3 4年制大学の福祉系ではない学部・学科を卒業。
- 一般養成施設などで1年以上学ぶことで、受験資格が得られます。実務経験は不要。
短大・専門学校を卒業した人
福祉系の短大・専門学校を卒業している場合(3年制の場合)
- Case4 3年制の保健福祉系短大・専門学校で所定の「指定科目」を履修し、卒業。
- 精神保健福祉にかかわる相談援助の実務経験が1年以上あれば、受験資格が得られます。養成施設での学習は不要。
- Case5 3年制の福祉系短大・専門学校で所定の「基礎科目」を履修し、卒業。
- 精神保健福祉にかかわる相談援助の実務経験を1年以上積み、さらに短期養成施設などで6カ月以上学ぶことで受験資格が得られます。
福祉系の短大・専門学校を卒業している場合(2年制の場合)
- Case6 2年制の保健福祉系短大・専門学校で所定の「指定科目」を履修し、卒業。
- 精神保健福祉にかかわる相談援助の実務経験が2年以上あれば、受験資格が得られます。養成施設での学習は不要。
- Case7 2年制の福祉系短大・専門学校で所定の「基礎科目」を履修し、卒業。
- 精神保健福祉にかかわる相談援助の実務経験を2年以上積み、さらに短期養成施設などで6カ月以上学ぶことで受験資格が得られます。
一般短大・専門学校を卒業している場合
- Case8 3年制の短大・専門学校の福祉系ではない学科を卒業。
- 精神保健福祉にかかわる相談援助の実務経験を1年以上積み、さらに一般養成施設などで1年以上学ぶことで受験資格が得られます。
- Case9 2年制の短大・専門学校の福祉系ではない学科を卒業。
- 精神保健福祉にかかわる相談援助の実務経験を2年以上積み、さらに一般養成施設などで1年以上学ぶことで受験資格が得られます。
その他
社会福祉士の資格がある場合
- Case10
- 短期養成施設などで6カ月以上学ぶことで受験資格が得られます。
(※)社会福祉士の有資格者は、精神保健福祉士国家試験の受験申し込みの際に申請することにより、一部、試験科目が免除になります(免除になるのは、社会福祉士国家試験との共通科目の11科目)。
精神保健福祉にかかわる相談援助の実務経験が4年以上ある場合
- Case11
- 一般養成施設などで1年以上学ぶことで受験資格が得られます。
受験資格の対象となる実務経験について
受験資格として認められる実務経験については、対象となる施設(事業)の種類や職種が細かく定められているので、注意が必要です。例えば、心理カウンセラーや産業カウンセラー、キャリアカウンセラーは相談援助技術を活かせますが、実務経験とは認められていない職種です。
実務経験として認められている施設と職種の例
・精神科病院……精神科ソーシャルワーカー、医療ソーシャルワーカーなど
・保健所……精神保健福祉相談員、社会福祉士、精神科ソーシャルワーカー、心理判定員 など
・障がい者支援施設……生活支援員、就労支援員、サービス管理責任者など
出典:「精神保健福祉士国家試験」. 公益財団法人社会福祉振興・試験センターホームページ. .(参照2022.1)
国家試験の難易度・合格率
精神保健福祉士国家試験は、精神保健福祉全般についてはもちろんのこと、精神医学、心理学、社会保障など、出題内容は多岐にわたります。
広範囲の知識が試される試験なので、偏りなく知識を身につけ、受験対策を進めていきましょう。
問題数は合計163問。合格するには、次の2点の両方を満たすことが必要です。
1つめは、問題の総得点(配点は、1問1点の163満点)の60%程度が基準。その年の問題の難易度により補正した点数以上の得点をとっていること。2つめは、試験科目16科目群の各科目群すべてについて、得点をとっていることです。
2021年に実施された第22回精神保健福祉士国家試験の結果は次のとおりです。
・受験者数:6633 人
・合格者数:4119人
・合格率:62.1%
ちなみに近年の合格率は以下のようになっています。
・第21回試験(2020年実施) 62.7%
・第20回試験(2019年実施) 62.9%
・第19回試験(2018年実施) 62.0%
・第18回試験(2017年実施) 61.6%
2-3精神保健福祉士資格を得るための通信制大学
通信制大学のなかには、精神保健福祉士国家試験の受験資格が取得できる課程をもつ大学が多数あります。こうした通信制大学の保健福祉系学部・学科で学び、「指定科目」など必要科目を修めて卒業すれば、実務経験がなくても受験資格が得られるので、社会人でも働きながら精神保健福祉士資格の取得を目指すことができます。
大学といえば、1年次から入学し、4年間学習しないと卒業できないというイメージがあるかもしれませんが、社会人にぜひ利用してほしいのが編入学の制度です。
すでに短大や大学などを卒業している人なら、2年次または3年次編入学で2年~3年間、学ぶことで受験資格の取得が可能。また、大学によっては4年次編入学の入学制度を設けているので、最短1年間の学びで国家試験受験資格を得ることができます。
通信制大学で学ぶことは、未経験から精神保健福祉士を目指す人だけではなく、実務経験者にとってもメリットがあります。所定の実務経験があれば、実習授業の履修を免除としている大学が多く、仕事と学習の両立がしやすくなるのは見逃せないポイントです。また、仕事の現場で経験したことを体系的に学び直すことができたり、新たな知識が身につく、専門学校卒業者なら大学卒の学位(学士)を取得できるなど、キャリアアップに役立つでしょう。
通信制大学の選び方のポイント
精神保健福祉士養成を目的とした課程では、どの大学も受験資格を得るためのカリキュラムはほぼ共通しています。違いが出るポイントの一つは、それ以外の科目のラインアップです。例えば、医療・福祉系の経営・マネジメントが学べる科目がそろっている大学や、心理系の科目を充実させている大学などもあるので、それぞれの特色をしっかり把握しておきましょう。
そのほか、実習先に関する情報提供や事前学習など、実習のサポート体制がしっかりしているかどうか、国家試験対策講座の充実度などもチェックポイントです。
2021年から新カリキュラムによる精神保健福祉士養成課程がスタート
精神保健福祉士の国家試験受験資格を得るための養成カリキュラムは、法律で定められていますが、そのカリキュラムの改正が2019年に行われました。
主な改正点は、従来は複数の科目のうち1科目を履修することとしていた指定科目・基礎科目のすべての科目の必修化、精神保健福祉士の存在意義や役割を理解することを目的にした「精神保健福祉の原理」ついての科目の創設、精神保健福祉士の役割の変化に応じた「刑事司法と福祉」「地域福祉と包括支援体制」についての科目の創設、実習先施設の範囲の拡充など。
この新カリキュラムによる国家試験は2024年度(2025年2月上旬に実施の試験)からスタートしますが、新カリキュラムによる養成課程の開始時期は次に示すように、通信制大学の入学区分によって異なっています。
・新カリキュラムの開始時期
1年次から入学:2021年4月入学者から開始
2年次編入学:2022年4月入学者から開始
3年次編入学:2023年4月入学者から開始
4年次編入学:2023年4月入学者から開始
※国家試験:2024年2月上旬ごろに実施の試験までは現行カリキュラムによる試験。2025年2月上旬ごろ実施の試験からは新カリキュラムの内容になります。
このように、新カリキュラムは順次導入されるので、編入学を検討している人は注意が必要です。2022年4月に3年次で編入の場合は現行カリキュラムによる養成課程で学びますが、最短の2年で2024年3月に卒業できないと、2025年2月実施の新カリキュラムによる国家試験を受験することになるのです。そうなると、国家試験合格へのハードルが高くなってしまう可能性もあります。また、2022年10月に3年次編入のケースでは、現行カリキュラムで学んで最短の2年で卒業しても、受験するのは2025年2月実施の新カリキュラムによる国家試験になります。
国家試験の内容が現行カリキュラムになるのか、あるいは新カリキュラムになるのか、そうしたことも見越したうえで入学のタイミングや学習計画を考えることも大切です。
通信制大学の学費は?
必要な費用は大学や履修する科目によって異なりますが、初年度納入金の相場は10万円台~30万円台といったところです。大学によってはスクーリングや科目修了試験の費用を別途徴収するところもあるので、事前に調べておきましょう。
なお、学費というと年額固定のイメージがありますが、最近は1単位の金額を設定し、履修する単位数に応じた金額を納める「単位制学費」を導入している大学もあります。この制度がある大学なら、仕事の状況に合わせて長期的に学びたい場合にも、余分なコストをかけることなく調整できるというメリットがあります。
通信制大学の奨学金は?
通信制大学の場合、日本学生支援機構の奨学金が利用できるのは、夏季・冬季スクーリングや通年スクーリングを受ける場合に限られるので注意が必要です。独自に貸与型・給付型の奨学金制度を設けている大学もあります。
2-4精神保健福祉士資格を得るための通信制大学一覧
北海道・東北エリア
宮城 | 東北福祉大学 通信教育部 社会福祉学科 | 私立 |
関東エリア
千葉 | 聖徳大学 通信教育部 心理・福祉学部 社会福祉学科 社会福祉コース・精神保健福祉コース・養護教諭コース | 私立 |
東京・群馬 | 東京福祉大学 社会福祉学部 通信教育課程 | 私立 |
東京・群馬 | 東京福祉大学 心理学部 心理学科 通信教育課程 | 私立 |
東京 | 東京通信大学 人間福祉学部 | 私立 |
京都 | 佛教大学 通信教育課程 社会福祉学部 | 私立 |
東京 | 日本社会事業大学 通信教育科 | 私立 |
中部エリア
愛知 | 日本福祉大学 通信教育部 福祉経営学部 | 私立 |
岐阜 | 中部学院大学 通信教育部 人間福祉学部 | 私立 |
愛知 | 日本福祉大学 通信教育部 福祉経営学部 | 私立 |
- ※2022年1月現在の情報です。
2-5通信制大学出願までのダンドリ
通信制大学に編入学する場合には、学歴や修得単位などによって、編入学する年次が変わります。
実務経験がある場合は、実習が免除される場合もありますので、志望校選びの際に確認しておきましょう。また、大学を中退している場合などは在籍期間や修得単位数が編入学年次に影響します。過去の単位や実務経験の扱いは自分だけでは判断が難しいこともあるので、志望校のパンフレットなどで詳細な出願条件を確認し、不明な点は大学に問い合わせてください。そのうえで編入学年次を決定。この段階で志望校をあらためて検討し直しても問題ありません。
通信制大学は、正科生の入学のタイミングを4月と10月の年2回設けているところが多く、出願期間も1~5カ月と長めに設定されているのが一般的。入学時期ごとに複数回の出願期間を設けている大学もあります。また、通信制大学の入試はほとんどが書類選考のみなので、試験対策は特に必要ありません。そのため、志望校やコースさえ決まればすぐにアクションが起こせます。
資料を確認して出願書類をそろえたら、即、出願手続きを進めるのがいいでしょう。ただし、精神保健福祉士国家試験は年1回、例年2月上旬ごろの実施です。4月入学と10月入学の違いで、国家試験受験の年度が違ってくるので、要注意です。
通信制大学(編入学)出願の際の主な提出書類
- 大学・短大の卒業(見込)証明書、成績証明書
- 大学・短大卒者の場合に必要とされる書類です。いずれも出身大学・短大で発行してもらいます。書類の作成・発行に数日を要する場合もあるので早めに手配しておくことが大切です。
- 編入学資格証明書
- 専門学校卒の場合は、出身校に発行してもらった編入学資格証明書が必要。さらに成績証明書のほか高校の卒業証明書も求められます。
- その他の提出書類
- そのほかに必要な書類は、志願票、健康診断書など。学歴や修得済みの単位など、志望する大学・学科などによってさらに必要になる証明書もあるので注意しましょう。
2-6精神保健福祉士の収入
「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果報告書」(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)によると、精神保健福祉士全体の平均年収は404万円でした。前回調査(平成27年度:2015年度)では平均年収347万円でしたので57万円、多くなっています。
一方で、男性・女性別では、男性の平均年収は463万円、女性の平均年収は377万円で、男女で86万円の差があるということがわかりました。
ちなみに資格手当が支給されている割合は34.8%。前回調査(27.6%)と比べて約7ポイント高くなりましたが、資格手当の平均支給額は月に1万2227円で、前回調査の金額(1万3147円)より920円低くなりました。
2-7精神保健福祉士の仕事内容は?働く場は?
精神保健福祉士の活躍の場は、医療・福祉分野のほか、さまざまに広がっています。どのような場で活躍しているのか、主な職場と仕事内容を紹介します。いずれの職場で働く場合でも、主治医や作業療法士、臨床心理士といった他職種や行政機関、地域の相談援助機関、教育機関、司法機関など、多方面にわたっての連携を行い、精神に障がいがある人を支援します。暮らしに根差したサポートを行うために、職場によっては支援対象者の自宅を訪問することもあります。
医療分野
精神の障がいにより病院に通院している人や入院患者、その家族をサポート。近年の傾向として認知症のサポートやうつ病からの職場復帰支援も多い。受診や入院に関する相談援助や、就職、復職、進学、住まいのことなど、日々の生活課題の解決を一緒に考え、患者が住み慣れた地域で社会生活を送ることができるよう支援します。
主な働く場
精神科病院、精神科診療所、総合病院精神科など。
行政分野
地域住民の心の健康に関する相談援助、精神に障がいがある人の社会復帰の支援、福祉サービスの情報提供や申請手続きへの対応、精神に障がいがある人を支えるボランティアの育成事業など、業務は多岐にわたっています。
主な働く場
自治体の役所、精神保健福祉センター、保健所、福祉事務所など。
障がい者への生活支援分野
精神に障がいがある人とその家族からの相談に応じ、支援。施設によって取り組む支援内容は異なりますが、日常生活をスムーズに送るための助言や援助、就職するための訓練など就労支援、職場への定着のための支援などを行います。
主な働く場
就労移行支援事業所、自立支援事業所、障がい者支援施設、グループホームなど。
司法分野
精神科の病気などが主な原因となって、受刑者になった人の治療や社会復帰の支援を行います。
主な働く場
保護観察所、更生保護施設、少年院、少年鑑別所など。
教育・児童福祉分野
児童虐待や不登校、いじめ、子どもの非行などに関する相談に対応。心の問題にかかわる相談援助の専門家として、子どもたちとその保護者の支援を行います。また、生活上の事情などで保護者からのケアを受けられない子どもや、保護者のいない子どもなどもサポート。
主な働く場
小学校、中学校など教育機関(スクールソーシャルワーカーなどの職種で活動)、児童相談所、児童養護施設、乳児院、知的障がい児施設など。
産業分野
企業などの従業員に対し、メンタルヘルスに関する相談や予防を行います。
主な働く場
企業の健康相談室やメンタルヘルス対策部署など。
その他
高齢者福祉施設で認知症ケアなどに携わる、女性相談所(婦人相談所)で女性に関するさまざまな相談援助を行う、公共職業安定所(ハローワーク)で精神障がいのある人への就職支援を行うなど、活躍の場は広範囲にわたっています。
出典:「精神保健福祉士の職場」. 公益社団法人日本精神保健福祉士協会. .(参照2022.1)「対象となる施設(事業)・職種」. 公益財団法人社会福祉振興・試験センターホームページ. .(参照2022.1)
2-8精神保健福祉士に似ている職種・資格
社会福祉士
社会福祉士も、精神保健福祉士と同じく、福祉の相談援助の専門職。資格も精神保健福祉士と同様、国家資格をもつことで社会福祉士を名乗って活動することができるという名称独占資格です。両者の国家試験には共通の科目があり、職務内容もよく似ていますが、精神保健福祉士が精神障がいや心の病を抱える人に対する支援を専門的に行うのに対し、社会福祉士は医療・福祉にかかわるあらゆる支援を行うという違いがあります。
社会福祉主事任用資格
福祉事務所などの行政機関や福祉施設などで、保護や援助を必要とする人に相談・指導・援助を行う仕事が社会福祉主事。
社会福祉士との大きな違いは資格の種類です。社会福祉士は国家資格ですが、社会福祉主事は「任用資格」といわれる資格。福祉事務所などで社会福祉主事として任用されるケースで必要とされる資格です。
資格を取得するには指定養成機関で学ぶなど複数の方法がありますが、大学などで社会福祉に関連する所定の3科目を履修し、卒業することで資格を得ることができます。
社会福祉主事は福祉の分野の基礎資格ともいえる位置づけで、就職・転職の際に応募要件となる場合もあります。福祉系学部・学科なら、カリキュラムに沿って学ぶだけでほとんどの人が取れる資格です。
臨床心理士
臨床心理士は公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格です。臨床心理士が支援の対象とする心の問題は、うつ病、発達障害、神経症、不登校、ひきこもり、学校・職場でのいじめ、人間関係の悩み、親による虐待などさまざま。年齢層も子どもから老人まで多様です。このような問題で悩んでいるクライエント(相談者=支援の対象となる人)に対して、専門的なカウンセリング技法や心理療法を用いて、心の回復を手助けするのが臨床心理士の仕事です。
臨床心理士はさまざまな心の問題を抱える人を対象とするのに対して、精神保健福祉士は精神障害のある人の支援を対象としています。
2-9通信制大学で精神保健福祉士取得を目指すためのQ&A
- 通信制大学には一部の科目を選択して学ぶ「科目別履修生」の制度があります。この科目別履修生として福祉系学部で学んだ場合にも、精神保健福祉士国家試験の受験資格を得ることはできますか?
- 科目別履修生としての受講では、受験資格は取得できません。精神保健福祉士試験の受験資格は、正科生として入学して「指定科目」を履修し、卒業することが条件です。
- 保健福祉系の大学・短大を卒業していない場合でも、通信制大学に編入学はできますか?
- 保健福祉系の学校で学んでいなくても、出願資格を満たしていれば編入学が可能です。出願条件は大学にもよりますので、志望する大学に問い合わせてみてください。
- 精神保健福祉士の養成課程には実習がありますが、働きながら両立は可能でしょうか?
- 精神保健福祉士の養成課程には、学外の医療機関や福祉施設などでの現場実習があります。実習期間は、約5~6週間。長期になるうえ、平日の昼間に実習先に通う必要があるので、長期間の休暇が取得できる場合を除いては、実習期間中は仕事との両立は厳しくなるでしょう。実習に備えてまとまった時間を確保する必要があるのはもちろんのこと、実習を受講するには指定されたレポートの提出や一定数以上の単位習得などが条件となっているため、会社を退職して学習に取り組む人も少なくありません。実習は、国家試験の受験資格を得るためだけではなく、未経験から転身を目指すなら社会福祉士の実践を学べる貴重な機会。卒業後に実習先に就職するケースもあり、本気で資格取得と転身を考えているならば実習に専念できるよう、環境を整えておきたいものです。
監修:乾喜一郎 リクルート進学総研主任研究員(社会人領域)