キャリアガイダンスVol.434
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らした彼女たちの声に、市の職員が反応し、ピンクとブルーのごみ袋が生まれました。そうやって大人がちゃんと応えると、生徒たちは「自分がここにいる意味」や「活動をする意味」を見出せると思います。 あとは、常々思っているのですが、大人が「未来」という言葉を使うのをもう禁止にしませんか? 大人が勝手に想定した未来に向けて「こんな力をつけろ、受験をがんばれ」と言うことで「今」が犠牲になっているように思うんですよ。むしろ高校生には「今自分はどんな気持ちで何をしたいのか」と、もっと今に目を向けてほしい。そうして高校生が「自分の中から湧き上がるエネルギー」を感じられるようになり、「それを社会の中でどう生かすか」という発想に結びつけたときに、初めて成熟した主体性が生まれ、自分たちの手で社会を創造していけるのだと思います。井県鯖江市で、女子高生がまちづくりをするJK課を市役所内に立ち上げたことがあるのですが、校則を守らないような女子高生でも、最初は大人の顔色をうかがうんですよ。散々怒られてきたので「ここでは自由にして」と言われてもトラップだと警戒して。 地域連携のように、先生ではない大人を〝混ぜる〞のも手です。地域の大人って、乱暴なことも言うし、先生がの決めた手順で大人が決めた正解にたどり着かせる」のではなく、「先生も答えを知らない、評価できないことを一緒にやる」ようにしてほしいです。そうして生徒たちが、この人たちは評価する人ではなく、「共にやっていく人」なんだと信頼すると、素を見せるようになります。 僕の経験上、その空気ができるまでに3カ月から半年はかかりますね。福期待する方向に生徒を連れていくとは限りません。でもそれが嫌で先生が納得できる人だけ呼ぶなら、結局「例外は認めない」ということ。「先生はこう思うけれど、それもあるよね」といろいろな考えを受容することが、選択肢をなくさないことになるんです。「こんな人もいるのか」と価値観の多様さに驚かされると、生徒の視野は広がり、今までの環境にとらわれず「自分はどうしたいのか」を考えられるようになります。 探究的な活動は「成長が非線形で現れる」のもポイントだと思います。この量をやればこれくらい伸びる、ではなくて、その子の意欲や可能性がいつ開花するかわからない。高校3年間で全員の活動がしっかりと着地するものでもない。だから〝待つ〞必要があるのですが。そもそもみんなを同じペースで学ばせようとするから、他人と比べて「できない」となるわけで。一人ひとり学びのスピードは違うので、いつまでに何をと先生が計画するのではなく、個々の生徒の変化を丁寧に見てほしいです。 鯖江市のJK課では、女子高生がコスプレしてごみ拾いをすることを企画したとき、「市のごみ袋がださい」と漏わかしん・ゆうじゅん●プロデューサー・研究者。TV番組のコメンテーターとしても活躍。全国高校生マイプロジェクトの審査員も長年務める。専門は「創造的コミュニケーション」。共著に『スタディサプリ三賢人の学問探究ノート(2)社会を究める』(ポプラ社)。株式会社NEWYOUTH 代表取締役慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授若新雄純いつ開花するかわからない生徒の変化を見取ってほしい未来という言葉、禁止にしませんか?生徒の「今」のエネルギーが高まるように浮かび上がった教育格差 学びを進化させる「6つの視点」体験活動192020 OCT. Vol.434

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