キャリアガイダンスVol.434
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 コロナ禍による休校期間中も、試行錯誤を重ねながらスピード感をもって生徒の学びを支える取組を実践してきた新潟県立津南中等教育学校(前号Vol・433 15ページ参照)。小林校長は、「平時から大切にしてきた〝つながっている〞という意識、そこから生まれる〝みんなで頑張ろう〞という高め合う空気を途切れさせないことを最上位目標に据えた」と振り返る。 4月の入学式直後に緊急事態宣言が出され、1日の中でも目まぐるしく状況が変わるなか、スタディサプリの未導入学年への拡大、職員向けZoom研修の実施、朝のオンラインホームルームや授業の実施など、小林校長の迅速かつ柔軟な判断のもと教員が一丸となって次々と策を講じていった。 「できない理由を探せばきりがありません。生徒のためになると思ったことはまずはやってみる。うまくいかなければ改善する。平時からこれを大事に見守るときと、前に出るときのバランスが絶妙。柔軟だけど、決めるときは決めてくれるので現場も動きやすい」と教務主任の小山尚之先生。教頭の鈴木綾乃先生も、「相談しながら進めてくれるけど、やると決めたらやる。何を優先するかが明確で方針にブレがなく、筋が通っている」と言う。 小林校長のもう一つのモットーが、「参加して楽しむ」だ。例えば、生徒が取り組むオンライン学習コンテンツ を自身もやってみたり、チャレンジウォークなどの学校行事に率先して参加したりと、軽やかに飛び込んでいく。「だって、その方が楽しいですから」とにこやかな笑顔が印象的だ。 津南中等教育学校では、学校のあり方を「グランドデザイン」として可視化している。小林校長が着任した昨年度に初めて作成し、「学びの改善」をテーマに据えた今年度はブラッシュアップして提示した。そのなかにあるのが、「教員が明るく協調性を保って勤務し力量を高める学校」という文言だ。小林校長は、「同僚性を高める、つまり、コミュニケーションを取り合いワンチームで生徒を支援する。そして、変化を乗り越えていく。これからもそんな教職員集団でありたい」と締め括った。にし、停滞していないか、何か改善できることはないかという視点で全体を見るよう努めてきました」 独断で決めることを嫌い、常に現場の教職員に相談し、意見を求めてきたという小林校長。非常時もそのスタンスは変わらなかった。 「校長がビジョンを示したり判断したりしなくてはならないシーンはもちろんありますが、トップダウンで決めて指示ばかりになると、先生たちの学校運営への参画意識が低くなってしまいます。そして、 指示通りにやること、叱られないことが行動の判断基準になってしまう。生徒にとって何が良いかをみんなで一緒に考えて、あれこれ工夫して、変えていこうとするプロセスこそが面白い。そう思っています」 今回のオンライン授業も、現場の教員が自主的に始めたのが最初だった。学習内容が盛りだくさんになりすぎた時期もあったが、「そんな様子も含めて小林校長はよく見ていて、現場を信じて任せてくれた。一歩引いて俯瞰的プロフィール●新潟県の高校で数学の教員として勤務し、教育センター指導主事、高等学校教育課指導主事、教頭、副校長を経て2019年度より現職。少子化が進む地域で、志願者増に向けても尽力している。令和2年度新潟県立津南中等教育学校 グランドデザイン(概略)「主体的な学び」と「徹底した地域連携」から「夢の実現」へ・6年間を見通した総合的な学習の時間、 総合的な探究の時間の整理・体系化・地域の活性化に貢献・生き生きとした活動を積極的に発信『津南妻有学』津南中等イノベーション(目指す学校づくり)生徒の力を徹底して伸ばす学校・夢を実現できる確かな学力の育成・世界に向かって自己表現できる能力の育成・思いやりの心、たくましく生きる力の育成・「何のために学ぶのか」という目的意識を持たせる生徒の主体的な学びを支援する教師の役割と環境整備・生徒一人一人を大切にした親身な指導による個性の伸長・教員が明るく協調性を保って勤務し力量を高める学校・ICT環境の整備による学びの改善●主体的な学び → アクティブ・ラーナー・地域の力を生徒たちの学びに生かす・社会貢献活動、国際貢献活動の実施・地域のセンター的な役割 ⇒ 地域からの信頼●徹底した地域連携 → 地域からの信頼●夢の実現 → 次代を担う人間性豊かなたくましい人材を育成する新潟県立津南中等教育学校 小林英明 校長生徒にとって何が良いかを教員と一緒に考え、工夫し、変えていくプロセスを楽しむ学校運営への参画意識を高める自ら飛び込み、やってみる浮かび上がった教育格差 学びを進化させる「6つの視点」リーダーシップ252020 OCT. Vol.434

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