キャリアガイダンスVol.434
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 教務主任を務めて4年目を迎える石丸貴史先生。休校期間には、生徒を生活・学習の両面で支援するために、ICT活用の推進を牽引した。乱れがちな生活面を支えるためにはオンラインでホームルームや面談を実施し、「生徒と情報を共有するインフォメーションと、つながりを維持するコミュニケーションに特化した」と振り返る。一方、学習面の支援にはスタディサプリを全学年に導入。「質が完全に担保できない状態で授業動画の配信を行うよりは、質の高い既存のコンテンツを入れた方が良いと判断した」と言う。 「導入にあたっては、教科主任らミドルリーダー陣で連携して実務的な部分を調整し、企画を具体化して提案書にまとめ、校長はじめ管理職陣にプレゼンしました。費用、セキュリティ、生徒のICT環境…とハードルは少なくありませんでしたが、動かしながら調整していこうという空気のなか、予もっているはずです。一人ひとりがそれを言語化し、他のことにも拡張していけば、自ずと学校運営に携わる意識が涵養されると思います」 ミドルリーダーとして活躍する傍ら授業をもつプレイヤーでもある石丸先生だが、「たとえ教頭や校長であろうとも、根底にあるものは同じ。教師には4つの役割がある」と言う。 「知識や技能を教えるティーチャーであり、学びを調整するファシリテーターであり、学びの場を率いるリーダーであり、授業をマネジメントするマネージャーでもある。立場に応じて4つの役割の果たし方は変わりますし、相手は生徒に限らず、ときには教員や管理職になることもあり得ます。4つの役割を果たしながらビジョンの実現に向かうというのは、まさに授業において教員が実践していることです。それを学年全体、学校全体へと拡大していくことで、ミドルリーダー、さらにはリーダーとしての視点が養われるのではないかと思います」 現場の教員と管理職との間に挟まれ、どちらの意見もわかるぶん苦しむこともあるのがミドルリーダー。そんなとき、石丸先生は原点に立ち返る。 「意見が割れたときは、〝どちらが生徒のためになるか〞を基準に判断しています。生徒を軸にするというブレない視点をもつことは、学校のリーダーに求められる資質の一つではないでしょうか」算の組み替えなども迅速に行われ、短期間でスタートすることができました。コロナ禍の、ここで立ち止まるわけにはいかない、という共通認識の下、〝チーム城東〞の精神で、教員間はもちろん教員と生徒とのつながりを構築・維持できたと思います」 平時よりボトムアップで教員の声が届きやすい風土があるという同校だが、だからこそ「上からの指示を待っているだけだと何も起きない。自分の〝やりたい〞を挙げて、実現に向けて自ら動いていかないといけない」と強調する。 「自分はどうしたいのか、教員一人ひとりがビジョンをもつことが大事だと考えています。うちの校長はよく〝どうしたいの?〞と問いかけてくるのですが、対話を通して、自分は何を実現したくて、そのためには何が必要で何が障壁なのか…を深めることができます。やりたいことなんてないという人もいるでしょう。でも、どんな授業にしたいか、生徒にどういう力を付けさせたいかというのは、教員ならみんなプロフィール●大学卒業後、塾・予備校勤務を経て高校教員に。社会で活躍するために必要な資質・能力を育成することを念頭に、カリキュラム・マネジメントやICT活用を通して日々の授業改善に取り組む。休校期間は「ティーチャー」としての役割は失われがちで、集団形成がままならないなか「ファシリテーター」の役割も発揮が難しかった。一方、今できる最善を決断しなければならず、「リーダー」としての役割が求められ、生徒一人ひとりの生活と学習を支援するために生徒を管理する「マネージャー」の役割も求められた。教員の「生徒に関与する能力」が試された。休校期間中に教師に求められた役割は?教師に求められる4つの役割生徒集団を教え・導き、「知識・技能」の育成に寄与する。ティーチャー役割1生徒集団を支援し、「思考力・表現力」の育成に寄与する。ファシリテーター役割2生徒集団を統率し、「判断力」の育成に寄与する。リーダー役割3生徒集団を管理・運営し、「主体性」の育成に寄与する。マネージャー役割4教師の4つの役割を果たしながら自分の〝やりたい〞の実現に向かい、その対象を少しずつ広げていく福岡工業大学附属城東高校 教務主任 石丸貴史 先生指示待ちでは何も起きない求められるのはブレない視点262020 OCT. Vol.434

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