キャリアガイダンスVol.434
28/66

ざまなものがあるのですが、いずれもこの指とまれ方式で、やりたい人が集まってやっています。プロジェクトへの参加は強制するものではなく、興味がある人もない人もいると認め合うことを大事にしています。この共通認識がなければ同調圧力がかかり、職員室の空気はギスギスしたものになってしまうでしょう。これは現場の先生方へのアドバイスでもありますが、何かをやりたい、変えたいときは、みんなで一斉にやろうとしないこと。まずは自分がやる。自分が変わる。できる範囲で小さく始めて、少しずつ仲間を増やして広げていく。これが大事です。 私は基本的には口出しをしませんが、「プロジェクトには参加しなくても、みんなでやろうと決めたことには協力しよう」という話はしています。各自がやりたいことをやりながら、互いに気づかい、その実現を妨げることがないよう協力し合う。そういう関係性や雰囲気が生まれるよう下からサポートするのが校長の役目、つまりサーバントリーダーシップであると考え、定期的にワークショップなどを開いて教員間の対話の場を設けています。 一方、ここは校長の判断で進めるべきだというシーンでは、なぜそう判断したのかという根拠や覚悟を伝え、決定事項として迅速に伝えています。現ス。教員のやりたいことを引き出すのも、校長の役割です。私が大事にしているのが、教員一人ひとりに関心をもち、傾聴することです。話を聞いて相手をよく知り、どんなことに興味があるのかを知っておくと、何かに出会ったときにあの人に紹介してみよう、とつなぐことができます。ちなみに、相手の興味を掘り下げるコツは、驚きの感情を素直に表現すること。「へえ、そうなんだ!」「すごいな、それは。どういうことなの?」とこちらが関心をもっていることが伝われば、相手は認められたと感じ、話も関係性も深まっていきます。 責任感の強い校長ほど、失敗してはいけない、間違ってはいけないという思いのあまり、自分の思い通りにしようとします。でも、大事なのは、うまくいかないときにどう乗り越えていくかという失敗を修正する力です。これは、教員なら皆さんが子どもに対して感じていることではないでしょうか。教員を育てるときも同じ。失敗させないために先回りしていては、人は育ちません。校長は、教員を自分の思い通りにしようとしないこと。判断を委ねること。その結果、失敗したのであれば、みんなで修正していけばいいのです。 学校の雰囲気を良くしたいのであれば、何よりもまずは校長自身がご機嫌でいることです。人の感情、特にネガティブな感情は伝染します。校長の機嫌が悪いだけで、職員室の空気は冷え固まってしまいます。楽しみましょう。ワクワクしましょう。学び続けましょう。校長が変われば教員が変わり、教員が変われば子どもたちが変わり、学校が変わるのです。場の意見を散々聞いたうえで校長が自分の意見を通すと反発が出ますから、そのメリハリは大事だと思っています。 教員がやりたいことをやる環境をつくるためには、校長が手放すことが一番です。信じて任せる。一つのことにこだわらず、自分は自分で次々と新しいことをやる。自分自身が挑戦し、変化していく。これを大事にしています。やる気がないものをやらせても伸びないのは、子どもも大人も同じ。スイッチが入ればあとはどんどん自走して、私の手から離れていきます。そして、「評価してほしい・認めてほしい」よりも「楽しい」が優先され、校長である私の存在は眼中になくなります。これが大事なんです。教員は誰を見て仕事をするべきでしょうか。そう、子どもたちです。上司・同僚からの評価は関係なく、やりたいからやる、楽しいからやるという段階になったら、人は自分で考えて動くようになります。やらされるばかりでは、自らやる人にはならないのです。 なかには、やりたいことがない、という教員もいるでしょう。でもその多くは、自分が学校でやりたいことなんて考えたこともなかった、というケーやりたい、楽しいで伸びるのは子どもだけじゃないネガティブな感情は伝染する。まずは校長自身がご機嫌に282020 OCT. Vol.434

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る