キャリアガイダンスVol.434
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1906年創立。総合学科高校として2年生からアラカルト方式の選択制だったが、2020年度入学生から3系列5コースのコース選択制に改編し、進学型総合学科へと生まれ変わった。今宮高校(大阪・府立)まとめ/長島佳子 撮影/景山幸一 本校では、未来予測が困難な後期近代社会を生き抜くために、グローバルな視点で自らの周囲「50cm」で変革を起こす力を生徒たちに育成することを目指し、総合学科として多様な学びを提供しています。しかし、多くの生徒たちが進学を希望する一方で、進学実績が低迷するという課題を抱えていました。入学時に学習到達度や学習習慣が高かった生徒たちが、半年もたたないうちにそれらが下がってしまっていました。 生徒たちが望む進路を叶えるには、入学時以上に学びの意欲をのばさなければなりません。そのために、昨年私が着任してすぐ行ったのは、データに基づいた今までの課題分析と、これからの時代に育成すべき生徒像のビジョンについて、「校長通信」として全教職員に発信したことです。カリキュラム、生徒指導、進路指導、探究的な学びへの取組など、ビジョンを実現するために必要なことについての方針を示したのです。さまざまな教育活動をするのは現場の先生たちですから、理解してもらうために徹底的に議論もしてきました。 学校改革において最重要であり、最も難しいのはビジョン共有だと思います。本校でもまだ完全に共有化できているとは言えません。しかし、新学習指導要領によって学校現場は根本的な変革を求められています。ビジョン共有のためには、先生たちの教育活動が今までとは変わらなければならないというマインドセットの醸成が必須です。そこで、「校長通信」では学習指導要領の解説書も作成しています。現在求められている教育についての、歴史観や世界観、教育観を先生方と共有するために、学習指導要領の意図することの本質について、さまざまな事象を捉えて表現を変えながら発信し続けています。 今は自立的な学校経営とともに、校長のリーダーシップが問われている時代です。変革期のリーダーに必要なことは「旗を掲げること」だと思っています。この時代に本校が社会から期待されているミッションを示し、それに基づき失敗を恐れずに現場の先生たちに任せて前に進み続けたいです。 学校改革の最中のコロナ禍においても、私は日頃のモットーである「やらずに後悔するより、やって後悔することを選ぶ」ことを貫き、「やれることは全部やろう」と先生たちと共に実行してきました。例えば、1年生のみだったスタディサプリを全学年に導入し、授業以外で生徒のフォローをするためにZoomやG Suite for Educationを早くから取り入れました。 今後は探究学習にもより力を入れ、授業、学校行事、部活とともに学校の特色となることを目指しています。地域との連携を強化し、先生たちの指導力アップにも努めていきたいと考えています。うえの・よしちか/1960年生まれ。大阪教育大学特別課程数学科卒業。大阪府立高校で数学科教員として歴任し、2014年より校長職に任用。2019年より現職。初任時から学校改革をテーマに取り組んできた。若手の頃は、描いたビジョンを引き上げてくれる管理職や先輩たちと、中堅時代は志を同じにする仲間と共により良い学校づくりを目指してきた。自身の経験から「自分のいいところも悪いところもクラスに表れる」と語り、どんな生徒も認めて受け入れる訓練をすれば、クラス運営はしやすくなると若い先生にアドバイスしている。データに基づく課題分析とともに育成すべき生徒像を明確化学習指導要領の本質理解のために教員向けの解説書を作成・発信392020 OCT. Vol.434

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