キャリアガイダンスVol.434
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データとして出てこないので、そこまで踏み込んだ話ができていませんでした。一方、このノートを活用し、生徒が自分で結果を評価し、課題を洗い出した状態で面談に臨めば、担任はそれに対して具体的なアドバイスができます。面談が発展的かつ生徒一人ひとりに対応したものになり得ると考えています」(吉柴先生) 改善を重ねながら試行錯誤し、今年3年目を迎える学修状況評価。生徒へのアンケートでは、「勉強方法がわかった」「自分の学習を客観視できるようになった」「成長を実感できた」といった感想が多く寄せられている(資料1)。っと踏み込んだ話をする場にしたいと思っていたんです。例えば、国語の勉強法がわからず苦戦している生徒に対して、国語の先生に相談できるようつないであげるなど、担任が生徒の学びのコーディネーターになれればすごく良いし、生徒との信頼関係も深まるはずです。このノートを使って生徒と担任の先生とが絆を深めてほしい、先生たちにそういう経験をしてほしいというのが、裏の意図としてありました」(石塚先生) 吉柴先生もこう続ける。 「定期テストごとに面談をしていますが、基本的には生徒の成績の推移と希望進路を基に話をしていて、毎回同じようなアドバイスになりがちでした。また、成績という結果の背景にある学習の習慣や方法は 「自分で考えてPDCAを実践して、その成果をグループで共有して、最後に発表する…という一連の活動を通して、それぞれに成長した部分があると感じています。本来意図していた力が付いたかどうか、今後それを活かしていけるかどうかは生徒により差があるとは思いますが、一つ、間違いなく言えるのが、学校全体に勉強や学習法のことについて話していいんだ、という雰囲気ができつつあるということ。心理的安全性が担保されるというのは、大きな変化だと思っています。この取組を続けていくことでどういう効果が出るのかを引き続き検証・評価し、良くないところは改善し、私たち自身もPDCAを実践していきたいと思います」(吉柴先生)勉強や学習法について安心して話せる空気が広がる 雰囲気の変化に加え、「想定外の効果もあった」と吉柴先生は言う。それが、個人発表に向けて準備をするなかで見られた、試行錯誤する力だ。「自分が言いたいことを言語化し、資料をどうまとめてどう話したら評価者に伝わるか…という視点で考え動くことで、発表する大変さを目の当たりにし、また力も付いたと思う。ただ記録を残すだけでなくそれをアウトプットする場があることで、生徒の意識が高まった。発表という場の重要性を実感した」と吉柴先生。また、1年間の集大成としてまとめ上げたものを発表する生徒の真剣な姿は、教員の翌年に向けた意欲喚起にもつながるという。 一方、年間計画やツール(学修状況評価 活動記録ノート)といった「仕組み」が確立されたことで、懸念される課題もある。石塚先生は、「この仕組みは、いわば叩き台。決まったものを前年踏襲でこなすのではなく、学年の状況などに合わせてあれこれ議論をしながらアレンジし、進化・発展させていく必要がある」と述べる。また、テーマ研究が2年次の1年間しかないため、「内容的に薄くなりがちで、単なる調べ学習で終わってしまう生徒もいることが課題」と石塚先生。「1年生のうちにSDGsのテーマに触れるなど、総合的な探究の時間について3年間を通した学習計画の見直し・改善も随時進めていきたい」と締めくくった。仕組みを形骸化させず、発展させていくことが重要選出された生徒2名が学年全員の前で行った全体発表会の様子。発表を見た生徒からは「(全体発表会の発表者から)学習について得られたことがあった。もっと他の生徒の発表を見る機会が欲しい」という感想・要望も聞かれた。資料1● テストごとに記録するので、 自分を客観的に見ることができ、次の計画が立てやすかった。 ● 1年間を通して自分の学習法を記録し見直すことで、 客観的かつ効率的に学習法をブラッシュアップできた。 ● 客観的に自分の学習を見ることで、 自分の強みや弱点がわかった。● 各教科の自分に合った学習方法を見つけることができた。 ● 弱点改善のためのアドバイスを 先生からいただくことができて良かった。 ● 学習のリズムをつかむことができた。 ● 自分の時間の無駄遣いに気づけた。 ● 成績が良い人の勉強方法がわかるのも良かった。 ● 学習に対するさまざまな意見が聞けて良かった。 ● 人前でプレゼンをするのは思ったよりも難しく、 良い経験になった。● 発表した際、客観的な視点で見ていない点が 多かったことに気づいた。 ● 自分の成長を客観的に感じることができた。 ● これからも自分なりに学修状況評価を続けたい。 「学修状況評価に関する調査」より生徒コメント※編集部で表現を一部修正422020 OCT. Vol.434

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