キャリアガイダンスVol.434
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542020 OCT. Vol.434広告代理店プロデューサーから基本姿勢を学び、大学生の協力を得て編集・制作した地元企業のCM動画。る。教室に外部の人の姿があることが、今ではすっかり日常の風景となった。背景には同校の地道な努力がある。 「我々教員は学校の中で情報を待っているだけではだめ。地域に出て行って、本校を知ってもらうとともに、自分の足で地域の情報をキャッチしてくることが大事です。市や商工会など地域の集まりにはどんどん参加し、アンテナに引っかかる人を見つければすぐ出向いて協力をお願いする。それは管理職の重要な役割だと考えています」(正木校長) こうして地域協働の学びを実践するなせてきた。各プログラムはオリジナルのワークシートを使って手順や思考を整理しながら進め、年2回、身に付けたい力についてルーブリックで自己評価を行う。 こうしたチームでの探究活動をベースに、第3学年では各自の進路目標に関連した個人活動につなげている。 学習のプロセスにはさまざまな大人が関わる。県の事業受託により発足した、香美市の市長と教育長、商工会長、市内にある高知工科大学の学長、地元選出の県会議員で構成する「山田高校学校地域協働本部」が核となって、市や県の職員は地域の現状を語り、企業は生徒のインターンシップやインタビューに協力し、大学生はメンターとなってグループ活動をサポートすかで、生徒に変化が見られるようになったという。年2回実施している前述の生徒アンケートでは、自己肯定感を測る「自分が大切」「自分が好き」の2項目の数値が高校生活のなかで上昇していく傾向にある。例えば、地域課題探究学習2期生である17年度入学生では、1年生4月から3年生9月までで2項目の数値がそれぞれ30ポイント以上上昇し、自己を肯定的に捉える生徒が多数派となった(図2)。また、教員が最も手ごたえを感じているのは、進路指導の場面だ。 「地域課題に取り組むなかで、探究する楽しさを知り、さまざまなことに興味をもつようになるようです。進路についても、『もっと学びたい』と大学進学を希望する生徒が増えています」(進路指導部長・宮田敏子先生) 「3年生の面接指導を行っていると、自分が何を学んできたのか自分の言葉で語れる生徒が増えたことに気づきます。机上の学びとは違い、実際に地域課題の現場に足を運び関係者に話を聞くなどした実体験は、言葉の強さに表れるのです。近年の国公立大学合格者の増加とも無関係ではないでしょう」(研修企画部長・戎井 淳先生) 地域連携に対する教員の意識も変化してきた。地域課題探究学習の導入を決めた当初は戸惑いも見られたが、生徒がいきいきと活動する姿に触発され、積極的に取り組む教員が増えているという。今では、「教員は狭い世界の中に閉じこもっていたことを改めて実感。自分自身、多様な人と関わるなかで視野が広がることを楽しむようになった」(戎井先生)、「地域との協働には思うようにいかないこともあるが、生徒と共に私自身も成長させていただき、『乗り越えられない壁はない』と新しいことにも挑戦するようになった」(商業科目担当・前田賀代先生)といった声も聞かれる。 そうした教員の意識の高まりが、同校を次のステージに押し上げた。今年度、学科改編によって、探究をテーマとする2つの学科が誕生。普通科と合わせた3学科編成で、「探究する学校」を標榜して歩み始めた。探究科設置の構想は県の高等学地域に支援され自ら突き進んだ「探究する学校」への道大学進学希望者が増加自分で考え行動した経験の効果アイデアソン(アイデア+マラソン)の手法も活用し、大学生メンターと共に解決策を練り上げていく。図2 自己肯定感に関する生徒アンケートの結果(2017年度入学者)地域でのヒアリングやインターンシップを通じて、実体験に基づいて課題の発見に取り組んでいる。

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