キャリアガイダンスVol.434
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教育現場でのICT活用の遅れと格差が浮き彫りになっています。ICTは、学びの可能性をどう広げていくのか、情報教育の専門家である堀田龍也先生と、文部科学省でGIGAスクール構想を牽引していた髙谷浩樹氏に語り合っていただきました。ICT活用―まずは、学校でのICT活用の必要性からお話しいただけますか?髙谷 日本の教育現場は社会と比べてあまりにもICT活用が遅れています。30年以上前の環境とほぼ変わっていない。私が初等中等教育局に来て最も危機感を感じたのは「ICTが遅れて社会と乖離した教育を行っていることに、教育に関わる人たちが無自覚である」こと。困るのは生徒たちです。 現代は誰もが普通にスマホを使い、社会は高度にデジタル化しています。新しいことを始めようと言っているのではなく、「学校環境を一般社会と同等にしましょう」というのがGIGAスクール構想です。学校だけがデジタル化してないっておかしいと皆さんも休校期間に感じましたよね? 本来は2022年度までに環境整備予定でしたが、休業要請によって最早ICT化が待ったなしの状況になったことを受けて今年度中に前倒ししたのです。堀田 ICTはインフラです。例えるなら今までが井戸でICTは水道。現在はまだ多くの学校が井戸ですが、世界やビジネスの現場では既に水道が普及しています。蛇口をひねれば情報がいくらでも出てくる。 でも、水道になるとこれまでに蓄積してきたノウハウが使えなくなるのでは、と不安を感じている先生方もいらっしゃいます。世の中の変化は止まらないので、「井戸を使ってどうするか」ではなく、「水道があるからそれを前提に考えましょう」ということです。―ICTは便利で有効ですが、生徒が学ぶうえでの懸念点や、プライバシーや平等性についてはどう考えればよいでしょうか?堀田 原理原則や基本を身に付ける段階ではICTに頼らないほうが良いと考えています。例えば、棒グラフの描き方を学ぶときは自分の手で描いてみて、「これくらい棒が高いということにどういう意味があるか」を学んでいきます。それを理解した後は、エクセルなどのICTを使った方が早いし合理的。それが、「社会で生きる力を育ICT環境整備のその先に見えてくるこれからの学びの可能性対談取材・文/長島佳子撮影/平山 諭(8~10P)ほりた・たつや●公立小学校教諭、大学や独立行政法人メディア教育開発センターでの研究活動、文部科学省参与(併任)等を経て2014年より現職。教育工学、情報教育・メディア教育を専門とし、中央教育審議会委員、新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会委員等で活躍。東北大学大学院 情報科学研究科堀田龍也教授生徒がリソースに自ら当たれるICTで、『主体的で対話的で深い学び』が加速する82020 OCT. Vol.434

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