キャリアガイダンスVol.434
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なります。ICT活用は学校の中だけでは提供できない、社会とつながりのある、生徒に影響力をもつリアリティのある学びを生み出すのです。  また、ICTを使うと調べたことを仲間と瞬時に共有できます。それを基に議論しながら、「このことは歴史の他の局面にも似ているな」などと思考が発展していきます。生徒たちは大化の改新というコンテンツを使って知識だけでなく、調べ方、協働の仕方、物事の類推の仕方などのコンピテンシーを学んでいくのです。 どの教科の先生も、こうした自分ごと化できる学びの機会や、コンピテンシーを学び取る経験値をどう上げるかという授業の組み立てを考えればよいのではないでしょうか。髙谷 堀田先生がおっしゃったことは、「主体的・対話的で深い学び」そのもののことですよね。今回のコロナ禍で、ICTの一側面である 〝オンライン授業〞がクローズアップされましたが、コロナ以前から計画していたGIGAスてる」ということなんです。髙谷 原理原則を学んだ後は、ICTを「使っていい」ではなく、生徒たちのために「使わないといけない」と思います。プライバシーや平等性はもちろん大事ですが、それを一つひとつクリアしていくのは、我々大人の役割。それを理屈にしてICT導入から逃げることは、もうやめにしたい。 〝平等〞は今の世の中に合った平等にしていくべきです。そこに行く過程では一時的に格差が出てきてしまう場面もあるかもしれませんが、最終的には、全員が上のレベルの平等を目指していくことが必要です。 GIGAスクール構想はそれを実現しようとしていて、平等性を担保するために、家庭でICTを用意できない生徒がいるなら、学校で使えるように整備すればいい。それが今の時代にあった上のレベルでの平等です。―最も重要なのは、ICTを活用するとどんな授業ができて、学びがどう深まり、生徒がどう成長するかですが、それについてはいかがですか?堀田 ICT以前の大前提は、今の時代の授業は「コンテンツだけを教えるのではない」点が従来とは決定的に変わっていることです。新学習指導要領の方向性も、コンテンツベースからコンピテンシーベースへと転換されています。 その前提の授業でICTを使う最大の利点は「さまざまなリソースに、生徒が自ら当たれる」ことだと私は考えています。それは社会に出てから必要となる力です。会社では「自ら情報収集して課題を見つけてこい」と言われる。授業でも先生からの指示や教科書からだけでなく、自分から情報にアクセスして課題を探して考えていく組み立てが求められているのではないでしょうか。 例えば歴史の授業で、大化の改新がテーマだとします。そのキーワードで生徒たちが、登場人物や出来事の前後で何が変わったのかなどを自分で調べてみる。調べていくうちに、「わからない」ことが出てくる。講義型の一斉授業だとわからなくても進んでいってしまいます。でも、自らやらなければならなくなった瞬間に、学びが主体的で自分ごとになって、わかるまで自分で調べなければならないことに気づきます。授業実施者の主語が先生から生徒へと変わるのです。 さらに、リソースに直接当たることで、例えば「誰もが書き込めるウィキペディアはどこまで信じていいのか」とか、職業について調べるなかで、その職に就いている人のブログを見つけて「マジか、こんなことやる仕事だったのか」と物事について深く考えるようにたかや・ひろき●文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課長在任中の2年間にGIGAスクール構想の計画と実行を主導し、コロナ禍を受けてさらにその前倒しと加速に邁進。5月にライブ配信した「学校の情報環境整備に関する説明会」での熱い語りが話題となった。2020年8月より理化学研究所 経営企画部 部長。前 文部科学省初等中等教育局 情報教育・外国語教育課長髙谷浩樹氏教育政策は今後、〝ICTがある〞が前提に。新たな〝平等〞に乗り遅れないためにも前進を浮かび上がった教育格差 学びを進化させる「6つの視点」ICT活用92020 OCT. Vol.434

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