カレッジマネジメント209号
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10リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018現状の課題整理でも取り上げたとおり、本来教育の成果は長い年月をかけて現れるものであり、卒業時点で成果測定を行うことは非常に難しい。その一方で、そうした意見を隠れ蓑にして一向に学修成果の把握に努めてこなかったという大学側の怠惰も見過ごすわけにはいかない。長期的な大学の教育の効果の成果指標としては、幸福度調査が挙げられる。その分野ではハーバード大学が行ってきた調査が有名であるが、卒業生の健康面を通じた幸福度が分かるものだ。自大学のミッションに照らして、こうした健康度の指標を視野に入れることも、独自の指標設定の考え方の一つになろう。健康ですこやかな暮らしに加え、大学時代の経験がさらに影響を与えると考えられるのが、卒業生の社会的な位置づけだろう。各種メディアでは、新卒時の就職先で大学ランキングをつける特集も盛んだ。さらに、収入やポストといった社会的な環境を指標として卒業生の成功事情を指標とすることも考えられる。アメリカではオバマ前大統領の肝いりで大学ごとの学費や卒業生の平均年収を一覧できる情報サイトが構築された。賛否は置くが、マイナンバー制度導入によって、既に理論的にはこうした情報についても正確な補足が可能である。マイナンバーを使う前に、我々大学人自らこうしたセンシティブな情報に切り込んでいく時期が来たと考えるべきだと思う。既に触れたように、「大学が何をしているのかわからない」「大学のレベルが怪しい」「大学を信用できない」「大学の存在価値への疑問」と大学への社会の見方は厳しさを増す一方だ。そうした意味では、大学の内部質保証サイクルにおけるアカウンタビリティは極めて重要性が高い。とりわけ情報公開については、社会の声とは裏腹に、問うたところで現状でも十分やっていると答える大学がほとんどだろう。情報公開は社会と大学の乖離を示す最たる例だ。その点は大学ポートレート事業一つをとれば明白だ。皆さんのなかに一度でも大学ポートレートを利用した人がいるだろうか。測定先進国の米国ほどベンチマーキングサイトを乱立させる必要はないが、莫大な予算を投じて構築した大学ポートレートを(たとえその出来には意見があるとしても)このままの状態にしてしまうのは大学人として良しとしていいのかどうか、今一度考えるべきだ。例えばこんな使い方が考えられる。まず大学の教育状況の客観指標においてGPAや単位の修得状況があげられる。これらは単純に大学間比較に使える指標ではないが、少なくともどの大学の評定が甘く、どの大学が厳しいのかはわかる。124単位の平均取得年限や、学年ごとの単位取得状況を見れば、単位の実質化を確認できる。それだけでも何も見えなかったこれまでの大学とは大きく変わる。ネガティブと考えてきたようなデータも積極的に公表していく必要がある。例えば地方大学や小規模大学が一概に財務状況が悪いというわけでもない。同じタイプの大学でもまさに大学はそれぞれである。また定員割れしている大学であっても、中退率が低く卒業生の進路も十分に安定している大学はいくらでもある。今時の子供たちからすれば「コスパがいい」大学だ。さら大学独自指標の具体例ベンチマーキング指標表2 学修成果の主体、射程、対象学生の学修の成果大学の教育の成果主体学生大学射程:授業登録した授業のみ射程:プログラム所属プログラムのみ学内の各プログラム射程:機関機関全体対象学生個人を評価学生を集団として評価主に誰が使う当人が自らを振り返るために活用社会が大学を評価するために活用用法:測定成績、調査等ベンチマークで相対評価用法:独自eポートフォリオでプロセス評価学修成果目標を独自設定し、独自測定どこにいかす自らの学生生活の向上に役立てる内部質保証において教学改善PDCAに

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