カレッジマネジメント209号
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14リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018の達成のひとつとして見逃せないのが、連邦教育省として2015年からカレッジ・スコアカード(https://collegescorecard.ed.gov/)の公表を開始したことであろう。カレッジ・スコアカードは、各大学の学納金、卒業率、卒業後の収入等をグラフィック化して示すウェブサイトで、複数の機関間の比較も可能になっている。オバマ政権は当初、各高等教育機関に連邦政府として一元的に評点をつけるシステムの導入を企図していたが、専門家のヒアリングを重ねた末にこの計画は断念された(カレッジ・スコアカードが「スコアカード」と呼ばれる背景にはこの、評点を公開するという当初の計画の影響があると思われる)。それに代わって2015年に公開されたのが、図3に示すカレッジ・スコアカードである。ここでは、学修者の大学選びの参考に資するという名目で、学納金、卒業率、過去の在籍者の収入のほか、要求されるSATのスコア、課程の専門領域等の情報が統一されたフォーマットで公開されている。ただし、このカレッジ・スコアカードで提供される情報のうち多くはカレッジ・ナビゲータ等の先行する連邦教育省のウェブサイトで公開済みで、カレッジ・スコアカードの新奇な点は、インフォグラフィクスを多用したスマートフォン対応のインターフェイスと、そして過去の在籍者の収入に関する情報が提供されていることである。ここでいう過去の在籍者の収入とは、連邦奨学金を受けて、当該大学に10年前に入学した学生の現在の収入の中央値であり、その値が、全米の大学のデータとの比較で示される。なお全米の高等教育の学生のうち、公立機関の学生の84%、私立機関の学生の 90%が、何らかの連邦奨学金プログラムに参加している。その連邦奨学金の申し込みの際に、学生の社会保障番号が採集される。学生の入学後、大学から連邦に、連邦奨学金を受けている学生の社会保障番号が報告される。これらのデータを、国税局が把握する社会保障番号をキーに納税データと紐づけすることによって、連邦政府は各大学出身者の収入を把握することが可能になっているのである。当然のことながら、このカレッジ・スコアカードのシステムは批判も集めている。例えば入学10年後の収入にしても、機関全体で丸めたデータであるため、実際に学生が専攻を選ぶうえでの参考にならないとか、就業後の収入に影響するであろう学生の出身家庭の経済状況が考慮されていないとか、あるいは就学と収入の間にある相関関係を因果関係であるかのように誤解させうる等、「文脈を無視している」ことが問題点として指摘されている。また、2017年には、連邦教育省が、カレッジ・スコアカードで公開していた各機関出身者の奨学金の債務履行率に関して「計算間違い」があり、不履行率が高く見えていたとして訂正するという一幕もあった。このように見てくると、カレッジ・スコアカードの機能としては、進路選択のための情報提供というよりも、高等教育機関に対して、オバマ政権が引き続き説明責任と透明性を求めていくというメッセージのほうが大きかったと言えるかもしれない。ここまで、2000年以降の米国における学修成果の可視化の試みについて、高等教育界全体をマクロな視点で捉えて説明責任と透明性の点から検討してきた。それとは別に、個別のカリキュラム運営のように高等教育をミクロな視点で見たときに、学修成果を可視化するツールとして指摘できるのはルーブリックがその代表格であり、2000年代に入ってから注目、あるいは再注目された道具立ては概ね学修成果とは可視なものであり明確に記述されうるものであるという発想に基づいて開発されていると考えてよいだろう。個別のカリキュラム運営にはルーブリックを活用図3  カレッジ・スコアカード(州単位表示)

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