カレッジマネジメント209号
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17そこで、自由教育及び自らの存在に危機感を抱いた小規模カレッジが集まって、相互支援と自由教育の意義を世に訴えるために設立したのがAACであった。その後、AACは、発足当初より自由教育の価値に賛同する大学であれば、設置形態に拘わらず受け入れるという「包摂性inclusiveness」をモットーとしてきたこともあり、州立、私立を問わず、総合大学であっても、例えば文理学部(College of Arts and Sciences)のように、学士課程教育において自由教育の理念に基づく教育を提供していれば会員として受け入れてきた。そこで、1995年、名称にUniversitiesを加えた現行のものに変更した。会員は、基本的には米国の高等教育機関であるが、その他にも州の高等教育運営機関や海外の賛助機関も含む。現在の会員機関数は約1400大学に及び、その中には、ハーバード大学やカリフォルニア大学等の有力な研究大学も含まれている。(注1)では、AAC&Uが強調する「自由教育」とはどのような教育を指すのであろうか。様々な解釈と理解があるが、歴史を遡れば、ローマ、ギリシア時代の「自由市民」までたどり着く。自由市民は、生活に必要な活動は不要であり、彼らは音楽や詩歌を享受していた。さらに時代は下り、中世大学では、医師、法律家、神父等の職業教育に先立って「三学(文法、論理学、修辞学)」と「四科(代数学、幾何学、天文学、音楽)」が教授されていた。つまり、自由教育は、特定の職業教育によってもたらされる狭くて偏ったものの見方から人々を解放し、文字通り人々を偏見や思い込みから「自由にする」教育である。ジョン・スチュアート・ミルの言葉を借りれば「大学は職業教育の場ではありません。(中略)大学の目的は、熟練した法律家、医師、または技術者を養成することではなく、有能で教養のある人間を育成すること」なのである(『ミルの大学教育論』)。しかし、社会経済のみならず、高等教育の役割も時代と共に大きく変化していることもあり、AAC&Uは、従来理解されてきた自由教育と21世紀に求められる自由教育の違いを図表1のように整理している。そこで、今日の自由教育は、100年前のAAC発足時のように小規模のリベラル・アーツ・カレッジだけではなく、初等中等教育や職業教育プログラムも含めて、全ての生徒と学生を対象に、全ての教育機関で提供すべき教育であるとAAC&Uは考えている。「自由教育とは、一人ひとりに力を与え、複雑で多様な変化に対応できるよう、その準備として大学が提供する学習の一つの考え方である。そのような教育を通じて学生に広範な世界に関する幅広い知識(科学、文化、社会)と特定の領域への興味関心に関する深い学習を提供する。自由教育は、学生が、社会的責任感とともにコミュニケーション能力、分析力、問題解決力、さらには獲得した知識や能力を現実世界の諸問題に応用できる能力といった、強力かつ移転可能な知的・実践的能力を獲得するのに役立つ」からである。(注2)このような確信の下、AAC&Uは自由教育の普及、理解を促進するため、様々な取り組みを行っているが、その中でも、(1)自由教育の重要性と意義を普及する取り組みであるLEAP(Liberal Education and America’s Promise)、(2)自由教育を通じて学生に修得を期待する21世紀で活躍するために必要な「本質的で不可欠な学修リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018特集 学修成果の可視化に向けて21世紀の「自由教育」とは図表1 「自由教育」とは何か:20世紀までの自由教育と21世紀の自由教育20世紀の自由教育21世紀の自由教育何か・知的・人間的成長・恵まれた若者の選択肢・非職業的という理解・知的・人間的成長・全ての学生にとって必須・グローバル化した経済で成功し、情報に熟知した市民になるために不可欠どのように・人文学と自然科学における学習(専攻)と大学低年次における一般教育での学習を通じて・学校から大学まで全ての教育課程を通じて、徐々に達成水準を高くしながら、本質的で不可欠な学修成果を重視した学習を通じてどこで・リベラル・アーツ・カレッジまたは総合大学の文理学部・全ての学校、コミュニティ・カレッジ、カレッジ、総合大学、そして全ての専攻分野で出所:https://www.aacu.org/leap/what-is-a-liberal-education

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