カレッジマネジメント209号
19/72

19リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018 AAC&Uが次に取り組んだのは、21世紀の諸課題に立ち向かうために、自由教育を通じて全ての学生が身につけなければならない必須の知識や能力、すなわち「本質的で不可欠な学修成果」とは何か、という課題であった。そこで、AAC&Uは、産業界からの様々な提案、ビジネス、看護学、教員養成等のアクレディテーション基準などを分析し、さらに会員大学等との幾度もの意見交換を経て、前ページのような学修成果の作成に至った。このリストにある学修成果(知識や技能)は、前ページでも述べたように高等教育関係者だけで決定したわけではなく、産業界との対話を通じて得られたものである。AAC&Uが調査会社に委託し、準学士、学士保持者が新規採用者の25%以上を占める企業数百社に対して実施した調査では、長期的にみて職業上成功するためには、単に専攻分野の知識や技能だけでなく、専攻に拘わらずELOsが重要だと多数の企業が回答している。いうならば、複雑さを増し、不確定な時代と言われる21世紀では、AAC&Uが唱導する幅広い知識を与える一般教育と特定の分野を深く学ぶ専攻からなる自由教育こそが、最も適切な教育のあり方であるとの合意が産業界からも得られているのである。米国では2006年、当時の連邦教育省長官の諮問委員会が、いわゆる「スペリングス報告」を公表し、大学に強く「説明責任」を求めた。個人と各政府が投資している資源に見合っただけの教育成果を高等教育機関があげていることを、より客観的に示すよう求めたのである。AAC&UがELOsを提言したのも、スペリングス報告に対する大学関係者の一つの対案であると言える。さらに、スペリングス報告は、教育成果を客観的に示す方法として、例えば、CLA(Collegiate Learning Assessment)のような標準化された共通テストの活用も示唆していた。しかし、わが国以上に高等教育機関も、また、そこで学ぶ学生も多様化している米国で、その成果を画一的に測定し、評価することはなじまない。そこで、AAC&Uは、高等教育機関の説明責任を果たし、かつ各機関の多様性と自主性を特集 学修成果の可視化に向けて図表4 VALUE Rubricの例(批判的思考力)(注4)ELOs(本質的で不可欠な学修成果)ELOsの達成をどのように測定するのか:VALUE Rubric

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る