カレッジマネジメント209号
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24リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018学力」「思考力」「主体性」相互の関係を見るため相関係数を計算したのが図表2である。これを見ると、3つの能力の中で教科学力と思考力の相関係数(0.618)が高いことが分かる。一方、主体性は教科学力(0.017)、思考力(0.014)との相関関係がほとんど見られない。つまり、3つの能力の中で「主体性」だけが独立した能力に近いと考えられる。以上を総合すると、「主体性」の評価をどの程度大学入試に取り入れるかによって、合格者の顔ぶれが大きく変わることが予想される。昨今、「思考力」を取り入れた新テストが話題となっているが、この部分だけの改定で主体性の評価を取り入れないのであれば、相関の高い2つの能力での判定となり、従来の合否判定と大差ないだろう。AI時代に向けた人材育成を目指し、思考力や主体性の能力開発の重要性に言及している教育改革において、この点を見逃してはならない。思考力を評価する試験については具体的イメージが湧きやすいので議論が活発であるが、ここだけに固執した議論は教育改革の本質からずれる危険性をはらんでいる。以上のように、多面的・総合的評価による入試に変わると、入学者層もこれまでとは大きく変化する可能性がある。すると変化した学生の育成も変化しなければならない。学修成果の可視化が問われる中、それをどのように検証していくかも重要な課題である。大学においては教育の質保証と関連し、21世紀型能力等、仕事をするうえで必要な能力の育成が、高校に先んじて叫ばれてきた。例えば河合塾とリアセックが共同開発した大学生対象のジェネリックスキル測定プログラム「PROG」は重要なのは変化した入学者をどう育成するか─育成の検証におけるPROGデータの活用2012年から始まり、現在までに約60万人のデータを蓄積してきた。当初は、各大学、学部のリテラシーやコンピテンシーの実態(水準)を把握することが主な目的であったが、その実態が明らかになるに従い、どのようにしたらリテラシーやコンピテンシーが向上するのか、その構造を明らかにし、カリキュラム改革や授業方法の見直し等、教育改革に活かしたいという現場の要望に応える方向へと展開している。一例として、ある私立大学でのインターンシップの教育効果測定の事例を示した(図表3)。インターンシップの前後に思考力や主体性等をPROGにより測定し、どのような能力項目が高まったかを分析したものである。同時に、伸びている学生と停滞している学生の差異について、学生アンケート等も加えて分析している。他大学の事例では、コンピテンシーの伸長度を上位グループと下位グループに分け、学生アンケートを使って有意差検定を行った。そこでは、学習頻度や活動時間は関係なく、学習態度や大学生活への適応度がその差に影響を及ぼしていることが明らかとなった。つまり、経験や時間だけではコンピテンシーは伸長せず、学生の主体的な関与が重要となるという、極めて当たり前のことが裏付けられた。今までに数多くの事例を得て学習成果のプロセスを解明しようと試みているが、その構造は想像以上に複雑で、定式化できるのは一部である。それは同じインターンシッププログラムを受講しても学生が一様に能力の伸長を示すわけではないからだ。学生Aにとって刺激的な経験も、学生Bには退屈な場合もある。しかしながら、全体の平均値とし注)それぞれの能力を偏差値化した得点で計算教科学力思考力主体性教科学力1.000思考力(リテラシー)0.6181.000主体性(コンピテンシー)0.0170.0141.000インターンシップ前後差分   インターンシップ参加前   インターンシップ参加後   差分平均実践力計画立案力課題発見力行動持続力自信創出力感情制御力統率力協働力親和力対課題基礎力対自己基礎力対人基礎力対人基礎力対自己基礎力対課題基礎力5.04.03.02.01.00コンピテンシー要素図表2 3つの能力相互の相関係数図表3 インターンシップの効果測定(私立大学A)

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