カレッジマネジメント209号
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28リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018課題は、1年次から3年次の学生の教育をどのように4年次の卒業研究につなげるかであった。4年次にDSを置くだけでは、学生の4年間の成長は測定できないうえに、学修成果の質保証もままならない。そうであるならば、1年次から3年次までもDSを用いて学修成果を測定すれば、成長が可視化できるうえ、学生の自己理解も高まるだろう。こう考えて、DSと同様の形式による、プレ・ディプロマ・サプリメント(以下、PDS)を置くことにした。それが、図表1の下部に示されている。学年ごとに6つの力を測定し、学年が上がるごとにその力が向上し、次第に大きな正六角形になることが理想である。このPDSは、1年次から3年次には、半期に1回作成される。「鉄は熱いうちに打て」の例えのように、成長の度合いを細かく測定する。3年修了時のPDSは、企業提出用として就職活動のスムースな進展に用いられる。そして卒業時にDSがある。また、DS、PDSには、上述の6つの力で測定される定量情報以外に、学生個人に関する情報、履修履歴、課外活動履歴、取得資格の情報、学位の情報等の定性情報を、学生が自分で記入するポートフォリオ機能があることを特筆したい。定量情報は客観的で比較衡量が容易であり、ある学生が全体のどこに位置するかを知るという点で有効であり、定性情報は学生個々人の特性を知ることができるという点で有効である。これらによって、学生は1年次から4年次までの自己の立ち位置を理解し、それを踏まえて次のステップに踏み出し、学修のPDCAサイクルを回すことができる。この計画が他大学と比して評価されるものであることは、2016年度の大学教育再生加速プログラム(AP)のテーマV「卒業時における質保証の取組の強化」に採択されたことで証明できよう。このテーマの採択率は16%であり、期待の大きさを知ることができる。DS、PDS以外にも、適性検査とその結果を活用したセミナーが毎年企画されており、2年次、3年次にはインターンシップガイダンスやインターンシップ成果報告会、3年次には進路ガイダンスと、学生の進路に関する支援は手厚い。1年次から3年次の学修成果:プレ・ディプロマ・サプリメント綿密な支援スケジュールと支援者の役割こうした綿密な支援のもとで、学生の目的意識を明確にし、意欲を持たせて社会に送り出す。これらの支援活動を大学活動に恒常的に組み込み稼働させるには、やはり最後は人力である。もちろん、学生がPDSとDSによって、自ら学ぶことができるようになることが理想であるが、実際にはそこに向けての支援がないと難しい。学生を主体的にするための、他者からの支援が不可欠なのが実情である。学修の目標を立て、学修の過程を記録し、結果を振り返るといった要所には、支援者が必要である。それを行うのが、クラス担任、学修アドバイザー、キャリアカウンセラーである。クラス担任制度は従来からあり、学部によって学年や人数で運用が異なるが、1・2年次を中心に学生30人程度を担当する。3・4年次は所属研究室の教員がその役割を果たしてきた。これまでは学修相談、時にはメンタル面の対応をしてきたが、これからはPDSを介して、より個別に継続的な学修支援に応じていく。学修アドバイザーは、全学的観点での学修支援に関するコーディネートと、教職員が行う学修相談へのアドバイジングの役割を担う。また、11人のキャリアカウンセラーはこれまでも将来のキャリアや就職に関する相談を担当してきたが、今後は学修成果につながる自己理解や成長の観点からも支援に関わることになる。このように重層的な支援体制を設けることで、4年間の成長の機会を担保しようとしている。ただ、支援者の付加が増大することは必須なうえ、個別学生の学修成果に対する適切な判断が必要となる。新任教員に対しては、これまでも初任者研修や夏に合宿を開催してFDを行ってきたが、それはすべての教員に対してなされているわけではない。一方で、DSを開発しつつ、他方でFD専門委員会における勉強会の開催やワークショップの開催を重ね、2017年9月に開催した全学FD・SDフォーラムでは課題認識とDSを通じた支援の必要性について共有化を図った。システムを稼働させるのは人なのである。学修成果の可視化の手法としてのDSの開発ではある。それは、往々にして外部から求められたことへの対応と思われるが、実はそうではないことが図表2を見ると理解できシステマティックな教育の質保証

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