カレッジマネジメント209号
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32リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018ぞれをバラバラに運用する状況からの脱却であり、学びをより深く、より広くするための工夫であり、成長の様相をコンパクトに確認することができるシステムの構築である。「大学教育再生加速プログラム(AP事業)」に採用されたことも新たな取り組みを後押しした。そして結果として生み出されたのが前述の「eシラバス」であり、「自己成長シート」である。まず、eシラバスについて簡単に説明すれば、様々な学修の素材をつなげることを可能にしたWEB上のシラバスのことである。シラバスには、「科目の概要」「科目の評価方法」「達成度の目安」「毎週の学習内容」といったものが記載されている。これは大学と学生との契約のようなものであり、eシラバスにも変更不可のものとして記載されている。しかしながら同時に、eシラバスには変更可能領域が設けられている。毎週の授業について教員は適宜コメントを載せることができ、また授業の理解を深めるために参考となる「eラーニング教材」「教員が作成する配布資料」「参考ビデオ」「授業の録画データ」「各教育センターが行う講習会や勉強会」等の教育情報が加えられる。また、授業科目に関連する正課外教育等へのリンクが貼られ、レポートの提出先もeシラバス上。ポートフォリオもeシラバスに組み込まれて運用されるようになった。いわば、各種教材を統合管理するカギとなっているのが、eシラバスなのである。学生達は、この一つのツールで、自分自身の学びの拡がりや意義を端的に捉えることができる(図2)。なお、eシラバスには、FD機能も期待できると言う。大澤学長は「全ての教員のeシラバスが閲覧可能ですから、先生方もヒントを得るために、他の教員のシラバスを見るようになるんです。すると、やはり頑張っている教員のシラバスから刺激を受ける。すごいなと思って、参考にするわけです。そういうことを自由にやっていきましょうということです。教室でのFDも大事ですが、リアルタイムFDをしていかないと、社会の動きについていけなくなります」と強調される。もうひとつ導入を試み、現在進行形で改良されつつあるのが、「自己成長シート」だ。自己成長シートには、卒業のための単位数、現在の取得単位数、理想的な取得単位数が示され、自分自身と学科のGPA平均値の推移、さらに各科目の出席状況も分かるようになっている。加えて、これまでの課外活動や学長褒章(成績優秀者や課外活動等において顕著な活躍があった学生に送られる賞)の取得状況等も確認でき、自ら記録した毎週の行動履歴も振り返ることができるようになっている。自分が入学してからどのように成長してきたのかを視覚的に捉えることができるものだが、先述のように、このシートは現在も改良が試みられている。一般社団法人日本技術者教育認定機構(JABEE)の取り組みを参照して設定した技術者として必要な素養(A〜N項目に分けて設定)について、どれほどの力がついているのかを各授業の成績から算出し、視覚的に把握できるシステムへの発展が企画されているのだ。自分のどこが強くて、どこがまだ弱いのかが一目瞭然で分かる。教員との面談で「今度はここを伸ばすために、こうした授業(あるいは課外活動)に取り組んでいこうか」という話ができるエビデンスにする。なるほど、大学時代の学びは複雑であり、獲得すべき知識能力も多様だ。しかし、「複雑で多様だ」で終わってしまっては、目指すべき方向性が定まらないのも事実であろう。目標を立てるためにコンパクトに現状を示す。学生目線を大事にし続けてきた金沢工業大図2 eシラバス概念図「eシラバス」の導入分かりやすさを追求し、進化する「自己成長シート」

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