カレッジマネジメント209号
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40政府は日本版NCAAを2018年度中に設立するべく、学産官連携協議会を設立し、急ピッチで検討を進めている。並行して、大学スポーツアドミニストレーターの配置事業を今年度は筑波大学等の8大学に委託し、大学での取り組みも促進している。これらの大学スポーツ振興政策は、スポーツを経営資源として活用し、大学コミュニティの活性化やブランド力強化、人材育成、地域活性化に役立てようとするもので、大学だけではなく学生競技連盟やOB・OG会、地域社会も含めた構造改革である。したがって、個々の大学での取り組みはもちろん必要だが、それだけではなく、地域の大学が連携して取り組む必要がある。しかし、当初は大学スポーツの商業化の側面が大きく報道され、誤解を招いた感がある。上記の事業を受託した大学も大都市圏の伝統校やスポーツ系大学であるので、地方や中小規模の大学にとっては関係のないことと思われているのではないかと危惧する。しかし、これは全ての大学を含めた構造改革である。課外活動の名の下に放任している「眠れる資源」を活用することはどの大学にとっても有益なことで、大学と地域を活性化する好機が今訪れている。既にいくつかの地域では大学が連携して検討を進めている。現在進行中の大学スポーツ改革の経緯と現状、今後の改革スケジュール、課題等について解説する。大学スポーツ振興に政府と自民党が取り組み始めた発端は、2015年11月に文部科学省が公表した「スポーツGDP拡大構想」と銘打った計画案である。政府が掲げる「1億総1大学スポーツ検討の経緯活躍社会」の実現に向け、スポーツ産業の市場規模を当時の約5.5兆円から2025年までに約15兆円にすることを目指すとした。そこで、スポーツ庁と経済産業省が2016年2月にスポーツ未来開拓会議を設置し、スポーツの成長産業化を目指す検討を始めた。その議論の中で、大学スポーツについても米国のように収益を上げることができるはずだとして、米国の大学スポーツの統括組織であるNCAA(全米大学体育協会:National Collegiate Athletic Association)が参考例としてあげられた。NCAAは全米の大学の約半数の約1100大学が加盟する大学スポーツの統括組織で、この協会の年間収益は約1000億円で、大学スポーツ全体の市場は8000億円と推定されている。日本もこれに倣って、アマチュアスポーツといえども収益を上げられるのではないかと経済面からの関心が高まった。なお、日本の大学スポーツ関係者の間では、40年ほど前からたびたびNCAAが話題に上り、「商業化は好ましいとは言えないが、教育面の取り組みは参考になる」としてNCAA化を主張する声もあったし、NCAAの教育プログラムの日本への導入も試みられている。スポーツ未来開拓会議の設置から少し遅れて、同年4月に馳浩文部科学大臣(当時)の下に「大学スポーツ振興に関する検討会議」が設置され、具体的な検討が本格化した。検討結果の結論は、「2018年度中に大学横断的かつ競技横断的組織(日本版NCAA)の創設を目指す」であるが、大学スポーツの持つ様々な問題を日本版NCAA創設によって解決することが期待されている。様々な問題とは、スポーツ中の事故や負傷、運動部の不透明な会計、学生や指導者の不祥事等である。これらが起きたときに受ける大学のダリクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018日本版NCAAとは何か〜将来と現状の課題について〜公益社団法人 全国大学体育連合 専務理事文教大学国際学部 教授小林勝法寄稿

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