カレッジマネジメント209号
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5「大学改革」、特に「大学教育改革」が声高に叫ばれるようになったのは、1991年の大学設置基準の大綱化からと言われている。以来現在に至るまで様々な考え方や具体的な取り組みが続々と取り入れられてきたが、こと大学教育改革の文脈においてこの間に起きた最も重要な制度的変化は認証評価制度の導入だろう。それぞれの大学の設置時点における外形標準に基づいた事前規制、この戦後一貫して行われてきたいわゆる大学設置認可制度による大学の質保証の考え方から、認証評価制度に基づいた多様な大学の事後チェックによる大学の質保証への価値観の転換である。大学が自ら質を保証していくという新しい価値観をもって動き出したその改革が、現在最も重要な局面に入っている。大学が自らの質の保証を本当に果たせるのかどうかがまさに今、問われている。高等教育の無償化が政策の争点の一つになっているが、800弱の大学全てに税金を投入すべきなのか社会から大きな疑問が渦巻いている。税金を投入するということを考えれば、投入する価値のある大学だけに投入したいと考える財務省の考え方は至極もっともだ。それ以前に、経常費補助金や私学助成による税金投入は既に行われているわけで、設置形態を問わず説明責任は求められている。今回の無償化関連の議論が、困っている学生を助けるというよりは、もともと存続が難しい財務状況の悪い大学や、全入時代における定員を充足できず、偏差値のつかない「Fラン」と総称される大学を、改善努力もないままに一緒くたに助けてしまう方向に向かうのではないかという危惧だ。ただ、十把一絡げにされてしまう大学が全て同じわけではないことは注意するまでもない。問題なのはそうしてひとくくりにされてしまう大学が、それぞれ実際はどのような良い大学だったり、あるいは実際に本当に悪い大学だったり、その辺りを調べる方法が全くないことだ。これは全面的に大学側の責任だ。大学側はそれぞれしっかり広報をしている、あるいは認証評価を受けているというかもしれないが、社会の反応はない。見分けることもできない。大学の多様性を担保するためには、我々は先にやらなければならないことがある。詳しくは後述するが、「独自性」と「ベンチマーク」に関して各大学は徹底的に情報公開を進める必要がある。学修成果の可視化はそこにかかってくる。ディシプリンを裏付けとしない学部名や学位名が取りざたされて久しい。今では700を超える学位名称が存在するという。大学の都合で増やしに増やした学部学科でリクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018関西学院大学教育学部 准教授江原昭博高等教育の無償化と大学の多様性700種類の学位大学の成果の可視化への社会的背景と政策的うねりなぜ、今学修成果が、求められるのか?その社会的背景と、解決への糸口

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