カレッジマネジメント209号
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52リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018公立はこだて未来大学(以下、未来大)は、函館圏公立大学広域連合を設置主体として2000年に開学した、情報科学の単科大学である。未来大で扱うのは学際的な「情報」で、データサイエンスからデザイン、IoTやビッグデータ、人工知能、ヒューマンインタフェース等、多種多様だ。学ぶ学問は数理科学や解析学から心理学、美大的なプロダクトアプローチまで幅広い。これらは未来社会をデザインするためのインフラであると片桐恭弘理事長・学長は言う。「我々の使命は、函館をフィールドに、人間と科学が調和した未来社会の形成を担う人材を育成輩出することです。そのため、社会のあらゆる分野で重要な役割を果たす情報の教育研究に特化し、この領域では国立大学に引けを取らない体制を構築してきました」。こうした教育を行うに当たり、未来大は開学当初からアクティブラーニングを教育の主軸に据え、3年次には函館をフィールドとしたプロジェクト学習(必修)で実社会に紐づけて情報技術を活用し、街の課題を解決する学びを展開している。こうした実践行動重視の姿勢を顕著に表すのが、メタ学習センター(CML)の存在だ。CMLは「学び方を学ぶ」ための先進的な教育・学習方法、カリキュラム、プログラムを実践開発する組織である。「未来大の学生に身につけて欲しいのは、何を学ぶか、なぜ学ぶか、どう学ぶかといった問いを自ら立て、自律的に学習能力を向上させていく力です」と、平田圭二センター長は話す。学び続ける人間(self-regulated learner)を育てるのが「メタ学習」なのである。文化風土として特徴的なのは「オープンスペース・オープンマインド」だ。数々の建築賞を受賞した校舎がその象徴である。ラボを模した大きな空間の中でインタラクティブに専門性を学び、フィールドを学内から函館の街へ広げて学び、社会実践の中で領域横断的に結合しながら学ぶのが、未来大の核である。未来大が3ポリシー策定に着手する今後を生き抜く行動原理を全学で策定する2016年春ごろは、受験生に入試のコンセプトを説明するAPはあったが、CP・DPは対外的に明確には定められていない状況だった。「開学から教員の顔ぶれも変わった中で、このポリシー策定は、今一度『この大学は何者なのか』を現メンバーで徹底的に考え議論するいいきっかけになると考えました」と、片桐学長は言う。そこで、未来大で教育のあり方を考える役目を持つCMLの平田センター長に、音頭取りの白羽の矢が立った。その頃、平田センター長は未来大への強烈な危機感を持っていたという。「未来大がこれから100年生き残るには、イノベーションのセンスを持つ有為な学生を育成輩出していく必要があると考えていました。それは即ち、未知のものに問いを立て、他者と協働しながら解を見いだせる人、メタ学習力が高い学生です。函館、情報科学という強みを活かしてそうした人材を育成するには、まだまだ教育を磨きこむ必要があります。ポリシー策定はそのための認識を共有する良い場にできると思いました」。そうした目的に照らし、策定プロセスはトップダウンではなく、全員が自分事としてポリシー策定に拘れるメカニズムを構築することを確認した。元々、未来大はオープンな雰囲気で教片桐恭弘理事長・学長平田圭二CMLセンター長3ポリシーを全学ボトムアップで策定する民主的プロセス高大接続の入学者選抜7公立はこだて未来大学社会の基盤を担う情報科学をインタラクティブに学ぶ

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