カレッジマネジメント209号
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542015年7月、首都ビエンチャンで、今後のラオスの高等教育の行く末を占う象徴的な会議が開催された。ラオスの2つの公立大学を含む大メコン圏のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)4カ国、タイと中国(雲南省及び広西チワン族自治区)の24大学をメンバーとする「大メコン圏大学コンソーシアム(Greater Mekong Subregional University Consortium: GMS-UC)」が発足した。GMS-UCは2018年以降本格的な活動が開始される見込みであり、アセアンの有力30大学をメンバーとするアセアン大学連合(ASEAN University Network:AUN)を補完しつつ、GMS-UCメンバー大学がアセアン水準に近づくことを目指す新たな大学間ネットワークであり、人的資源面におけるアセアン域内格差の是正に貢献することが期待されている※1。ラオスでは1975年の社会主義革命以来、ラオス人民革命党による一党体制が続いている。1986年以降、「新思考(チンタナカーン・マイ)」に基づく市場経済化を志向してきた。1997年のアジア経済危機や2007年のリーマンショック等の影響により、経済成長の停滞を余儀なくされたが、近年は年平均で7%台の経済成長率を維持しており、2020年までに最貧国から脱却することを国家目標としている。ラオス政府は、市場経済化に伴うスキル・知識を伴った人的資源開発を重視し、1995年以降の高等教育改革に取り組んできたが、市場経済化や社会経済開発を主導する人材が未だ絶対的に不足しており、ラオスの高等教育に期待される役割は大きい。しかし、ラオスの高等教育を巡る改革の速度と実績は、ベトナムやカンボジア等、同じく市場経済化路線を取る近隣諸国の高等教育改革に比べれば、その停滞感を否定できない。2015年のアセアン共同体の発足による域内統合やメコン経済回廊の整備によって連結性を強める発展プロセスにおいて、ラオスの高等教育改革の遅れは一国の問題だけではなく、域内格差是正の隘路となるリスクがある。そこで、ラオスの内なる高等教育改革の遅れは何が制約となっているのか、また開発協力機関等外部からの支援に加え、AUNやGMS-UC等の大学間ネットワークへの参加による外からの影響が、高等教育改革を加速化する契機となり得るのか。本稿では、岐路に立つラオスの高等教育改革の現状と課題について考える。まず、主な高等教育関連政策・計画・法令・案件承認文書(1995年‐2016年)に言及しつつ(表1)、高等教育システムの形成と位置づけを確認したい。ラオスで高等教育改革が本格的に着手されたのは1995年、旧ソビエトの影響を受けた単科大学や高等教育機関の統合を果たしたラオス国立大学の創設に端を発する。ラオス政府は、アジア開発銀行(以下、アジア開銀)に支援を要請し、1995年にラオス国立大学のキャンパス整備と大学運営を軌道に乗せるため「中等後教育合理化プロジェクト」を策定した※2。ラオス国立大学は1996年より学生を受け入れ、ラオスで最初の総合大学が誕生した。教育省(当時)は、ラオス国立大学の整備とともに、国内高等教育システムの形成と位置づけリクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018岐路に立つラオスの高等教育改革廣里恭史上智大学 総合グローバル学部教授 ASEANハブセンター長ラオス国立大学本部棟はじめに6

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