カレッジマネジメント209号
56/72

56リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018と質に注目し、その傾向を指摘する。図1は、2005/06年から2014/15年までの学部レべルの高等教育機関(公立大学、公立カレッジ、私立カレッジ)の学生数の推移を示している。合計では、2005/06年の約30,500人から2012/13年に至る約78,500人をピークとして、2013/14年以降は減少傾向にある。公立大学の学生数の減少傾向は2009/10年から始まっている。主な理由は、①2009/10年以降に実施された「5(初等)+3(前期中等)+3(後期中等)」システムから「5+4+3」システムへの変更により学士課程が5年から4年に短縮されたこと、②パンカム教育大臣(当時)が、急激に増加する学生数に対し、高等教育機関の質低下に懸念を表明したこと、③2011/12年より、入試制度改革の一環として特別夜間コースが廃止されたこと、④2012/13年に教育スポーツ省の教育基準・質保証センターが、「高等教育機関の最小教育基準」※11 に基づき、25の公立大学・公立カレッジ及び29の私立カレッジを対象に行ったガバナンス、運営、カリキュラムの評価結果によって、6つの公立高等教育機関を除き、2013/14年から新規学生募集と学士号の授与が停止されたことにある。2015/16年以降、この最小教育基準に適合すると評価された高等教育機関は徐々に新規の学生募集と学士号の授与を再開している。高等教育機関の学生数が過去2-3年間は安定してきており、社会の高等教育への進学需要に対応し、今後は学生数の増加傾向が見込まれている。2015年に教育スポーツ省が策定した「教育スポーツ部門開発計画、2016年‐2020年」※12 によれば、2020年までに教育スポーツ省が管轄する4つの公立大学の学生数予測が45,000人となっている。2014/15年の学生数が約36,500人であることから、約20%の増加が見込まれている。さらに、高等教育の質に関しては、高等教育機関における学習達成度を吟味する必要がある。しかし、ラオスでは学習達成度に関する信頼できるデータや情報が入手できないことから、教育の質として5つの公立大学の教員とスタッフの学位の取得状況を確認したい。2014/2015年において博士号取得者が156人、修士号取得者が1,131人、学士号取得者が1,871人、及び他の学位取得者が277人となっており、合計としては学位取得者が3,435人となっている※13。教育スポーツ省の高等教育機関における教員の学位取得割合である「1(博士号取得者):6(修士号取得者):3(学士号取得者)」というバランスを達成するにはほど遠い現状がある。約50%の教員が学士号のみの取得者であり、この割合を30%に減らすことが目標である。博士・修士号取得者を大幅に増やす必要があるが、相当な時間、労力、費用(直接・機会費用)を要することから、早期の実現が非常に難しい。このようなラオスの高等教育改革の遅れの背景には、いくつかの根本的な高等教育ガバナンスの諸課題があることを指摘したい。第1に、行政組織では、教育スポーツ省や公立の高等教育機関の幹部がラオス人民革命党員を兼任しており、党の意向に従うことが絶対的な前提である。高等教育行政において政治的ハイアラキーが存在し、従属的な上下関係が存在することを示唆している。即ち、意思決定において上司の意向に従うことであり、上司が同意しないであろう決定を避ける傾向がある。このことが高等教育改革ペースを遅らせている。高等教育改革の課題:ガバナンス出典:教育スポーツ省「年次報告書(各年)」にもとづき作成。表の作成にあたっては、パンパキット・オパンダラ博士、ラオス―日本人材開発センター副所長にご協力をいただいた。2005/06年 2009/10年 2010/11年 2011/12年 2012/13年 2013/14年 2014/15年 公立大学 25,322 42,704 41,615 39,733 38,317 34,209 33,035公立カレッジ 143 8,233 12,818 12,777 16,668 14,300 9,382私立カレッジ 5,109 13,822 14,502 18,710 23,469 18,418 12,739合計 30,574 64,759 68,935 71,220 78,454 66,927 55,15690,00080,00070,00060,00050,00040,00030,00020,00010,0000人数(人)図1 ラオスの高等教育機関の学生数(学部レベル)

元のページ  ../index.html#56

このブックを見る