カレッジマネジメント209号
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57リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018第2に、大学における最高意思決定機関である大学評議会が、本来の役割を果たしておらず、形骸化している。学部・学科の創設、財務省に提出する年次予算の策定等、重要な決定事項は大学評議会ではなく、学長が招集する理事会やアカデミック委員会に委ねられている。第3に、ラオス国立大学の自治化を例にとれば、教育スポーツ省の管轄下ではなく、首相府の内閣に直属する特別な法的ステータスを得られるかどうかが課題である。近隣国では2つのベトナム国家大学(ハノイ校とホーチミン市校)に見られる例である。第4に、公立の高等教育機関の年次予算の未消化部分やコンサルティング活動による収入は、内部保留や翌年への繰り越しではなく、財務省に返納・上納しないといけないことがネックとなり、高等教育機関の収入を高めるインセンティブか欠如している。第5に、公的な高等教育機関の教員給与水準の低さがある。かつて特別夜間コースで教えることによる副収入は財務省のコントロール外に置かれていたが、特別夜間コースの廃止によって、副収入を得ることができなくなった。しかも、前述した2012/13年からの新規学生募集と学士号授与の停止によって、教える機会が激減し、副収入の道が閉ざされてしまった。このような高等教育ガバナンスの課題を鑑みれば、内からの高等教育改革の速度や実効性には懐疑的にならざるを得ない。翻って、外からの改革として、AUNやGMS-UCへの参加によってもたらされる影響が高等教育改革を加速化する契機となり得るのかを検討したい。2015年12月にアセアン共同体が発足した。連結性の強化を含むインフラ整備と域内の格差是正を目指す共同体である※14。域内格差が共同体形成の進捗を妨げかねないことから、ラオスを含むCLMV諸国の持続的な経済成長はアセアン統合の成否に係る課題である。冒頭に紹介したAUNでは、ラオス国立大学がラオスからの唯一のメンバーである。GMS‐UCにおけるラオスのメンバー大学は、ラオス国立大学と東西経済回廊の要所に位置するサバナケット大学である。ラオスが2020年までに最貧国から脱却し、アセアン共おわりに:ASEAN域内格差の是正と大学間ネットワークの可能性同体において相当の地位を築いていけるかどうかは、高等教育改革ペースを加速化させ、今以上に高等教育機関の水準において域内格差が拡大しないことが肝要である。学位の相互認証、質保証、単位互換制度の調和化を目指すアセアン共同体にとっても、ラオスの高等教育改革が進展することが、将来的にアセアン内の域内格差の是正に関わることを十分に認識する必要があろう。今後の内からの改革の行く末はいかなるものであろうか。高等教育改革の政治的意思や必要な改革を行う能力自体が備わっているのだろうか。AUNやGMS‐UCのメンバーとしてアセアン水準に至るかどうかの試金石は、例えば海外大学での取得単位を認可する意思決定を行えるかどうかであろう。アセアン域内及びアセアンと東アジアの学生移動を促進させることを意図して準備されている「アセアン+3留学のための成績証明ガイドライン」の正式採択(2018年度中の予定)は、ラオスにおける外からの高等教育改革を促すものであり、内からの意思決定を導く契機となりうるかどうかを注視していきたい。※1GMS-UCの能力開発に関して、2017年12月に、アセアン事務局が所管するJapan-ASEAN Integration Fund (JAIF)による助成が承認された。GMS-UCの事務局は、東南アジア教育大臣機構 高等教育開発センター(Southeast Asian Ministers of Education Organization Regional Center for Higher Education and Development: SEAMEO RIHED)に置かれている。※2Asian Development Bank (ADB)(1995). Report and Recommendation of the President to the Board of Directors. Postsecondary Education Rationalization Project. Manila : ADB. ※3Ministry of Education and Sports (MOES) (2014). Annual Report, 2014. Vientiane: MOES.※4瀧田修一・乾美紀(2008)「ラオスにおける高等教育の改革の現状と課題―教育機会拡大の動向を中心に」『大学教育研究』(神戸大学 大学教育推進機構)、第17 号、1-30頁。※5Ministry of Education and Sports (MOES) (2010). Higher Education Master Plan, 2011-2020. Vientiane: MOES. ※6ADB (2009). Report and Recommendation of the President to the Board of Directors, Lao People’s Democratic Republic: Strengthening Higher Education Project, Lao PDR. Manila : ADB.※7詳細は、廣里恭史(2012)「ラオス―大学入試制度改革と効率性・公平性の問題」北村友人・杉村美紀共編『激動するアジアの大学改革―グローバル人材を育成するために』上智大学新書002、165ー181頁。及び乾美紀・オンパンダラ、パンパキット(2013)「ラオスにおける高等教育の質保証」山内乾史、原清治編著『学生の学力と高等教育の質保証II』学文社、119ー142頁、に詳しい。※8ADB (2016). Report and Recommendation of the President to the Board of Directors, Lao People’s Democratic Republic: Second Strengthening Higher Education Project, Lao PDR. Manila : ADB.※9The Government of the Lao PDR (2011). Report of the 8th Party Central Committee to the IXth Congress. Vientiane. [In Lao language]※10Ministry of Planning and Investment (MPI) (2016). 8th Five-Year National Socio Economic Development Plan, 2016-2020. Vientiane: MPI. ※11MOES (2013). Minimum Standards of Higher Education Institutions. Vientiane: MOES.※12MOES (2015). Education and Sports Sector Development Plan, 2016-2020. Vientiane : MOES. ※13MOES (2015). Annual Report, 2015. Vientiane: MOES.※14ASEAN Secretariat (2010). Master Plan on ASEAN Connectivity. Jakarta: ASEAN Secretariat.

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