カレッジマネジメント209号
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60リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018の1つでもあり象徴でもあるのが、夏休みに1泊2日の合宿形式で行われる「新任教員フォローアップ研修会」だ。「かつては助手だけの研修で、講師以上で入った人は受けなくてよかった。6年ほど前から、教授で入ろうが助教で入ろうが、原則全員受けて頂くことになりました。欠席すると次の年に案内がくる。それも欠席すると3年目も案内が来ます。さすがに3年経って“新任”研修は恥ずかしいですよね、早めに済ませましょう、と」。このようにはっきりとマネジメントしている大学はなかなかないだろう。新任といっても「東海大学に新たに着任した」という意味なので、新卒とは限らない。「学者になって功なり名遂げて来る人、生まれたての教員、企業から来る人、年代も色々です」。研修会の柱の1つは、学園の背景を理解することだと言う。「2017年に迎えた建学75周年から100周年に向けての総合戦略とか東海大学の歴史とか、刷り物は配りますので、採用されるときにはそれなりに目を通してくるでしょう。でも、それでは頭に入らないので、講話があったり校歌を歌ったり、それから『東海大学の強みは何か』といったグループワークをします。他の大学から東海大学に入ると、反発する部分もあるでしょうけれど、今までになかったものとして受け入れる方もいらっしゃる。そういう話をあまり聞かないで学者になったような人は、素直に吸収して頂ける」。もう1つ重要なポイントは、授業をどういうふうにやっていくか。いわばFDだ。模擬授業を見た後、各自専門科目の導入部分のさわりで15分の授業を実施、グループワークで良いところを指摘し合う。「それが、どの授業もすごくいいんですよ」と、山田学長の言葉に力がこもる。「大目に見てくれそうな同僚だけでなく、学長とか副学長とか教学部長とかの前で、父兄参観日の発表みたいなものですから、先生達も気合いを入れて作るんですね」。全国のキャンパスから60人前後が集まるこの研修会には、学内の異業種交流の意味もある。「所属している学科の先生達とは毎週のように会議があってコミュニケーションできますが、他学部・他キャンパスの先生とは、ほとんどないでしょう。こういう機会でもないと、知り合うことがありません。ある意味同期でもありますし、横のつながりを作ってもらう意義も大きいと思います」。そのため、できるだけ1グループに1分野の教員は1人だけというような工夫がされている。「1日目の朝、集まってバスで行くんですが、最初のうち雰囲気は重いんですね。でも、模擬授業を見たりして、夕食後の懇親会をはさみ一晩経つと、翌朝はもう所属の枠を越え、親近感を持って参加しています」。この研修が高い成果を上げることができたため、昨年からは「教員5年次フォローアップ研修会」も始まった。「大規模大学でありながら、面倒なことでも、先生達がコミットする意識が高いことから、こうした取り組みが有機的に作用する環境が築かれていると言えるかもしれません。大学の風土という言葉以外に表現しづらいですが」。仕組みや制度ではなく、全体として息づく建学の精神が支えているということになるのだろう。今後の方向性について山田学長は、建学75周年を機に、卒業生たちのその後の人生に大学はどのようなベネフィットを提供できるのかを再考したいと言う。「言い換えると、人びとの暮らしや社会のQOL(Quality of Life)向上に寄与すると同時に、自分自身のQOLも高めるということ」。QOLは医療分野で健康保全の意味で用いられることの多い語だが、東海大学におけるQOLとは、「人生の質」「社会的に見た生活の質」を指す。だから「生活の質」という一般的な訳語ではない訳を使うことも考えていると山田学長は言う。「Lifeは人生とも訳せるので、人生の質と言ってもいい。人生を豊かに全うできたという満足感かもしれない。そういうことを感じてもらうには4年間は短すぎますから、卒業生の皆様に東海大学のおかげだという気持ちが人生の節目節目に出てくるような、そういうシステムを大学の中で作っていきたいと思っています。最後にどこでも使われすぎて今さらという感じもありますが、われわれの教育がグローバル時代に図太く生き抜く力となってくれることを願っています」。卒業生の「人生の質」を支える大学に(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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