カレッジマネジメント209号
65/72

69リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018発想と行動を重視し、個人の成長と組織の成長の好循環が生まれる組織」である。仕事は決して楽なものではない。本来厳しいものであり、大学の役員・教職員にはさらに厳しさを求めるべきかもしれない。その中で、安易に思考を止めることなく、様々な知恵を巡らせ、行動し、試行錯誤を繰り返しながら、教育研究と経営を高度化させる。そのプロセスを通して自らを成長させ、それが組織の成長・発展につながり、そのことが個人の働き甲斐やさらなる成長につながる。「優れた組織」とはそのようなものを指すのではなかろうか。以下、4つのボックスについて、それぞれの要点を解説する。最初に中段であるが、組織と人事は車の両輪との考えに基づき、左右に配置している。組織というと、学部、本部、機構、部課、委員会など容れ物としての組織を考えがちであるが、それは組織設計の一部に過ぎない。また、大学の場合、組織や職位を設けてもそこに位置づける機能、権限、責任が明確に規定されていないことが多い。意思決定プロセスを含めて、これらを明確化することは組織設計の基本である。そのうえで、業務の標準化、ICTの高度利用、見える化を進めるとともに、コミュニケーションの密度を高める仕組みや持続的な改善を促す仕掛けを工夫する必要がある。内容については、本連載で述べてきたものもあることから本稿では詳述しないが、これらの要素が合わさって初めて「組織の設計」と呼べることを強調しておきたい。人事については、教員と職員で人事管理のあり方は異なるものの、職種を超えて個々人が大学で働くことに何を求めているのかを理解することが全ての出発点となる。人事管理の本質は、組織の目的と個人の目的を調和させることにある。個人は様々な動機・目的を持って組織で働く。重視する要素、関心の置き方、働き方に対する考え等は人によって異なる。そのことを十分に理解したうえで、求める役職者像・教組織と人事は車の両輪員像・職員像を明確化し、キャリアパスや評価基準を示す必要がある。そして、公平な評価と処遇のための最大限の努力を行う。全ての構成員が納得する評価・処遇などあり得ないが、公平であろうと努める姿勢を示すことは、組織を健全に持続・発展させるうえで極めて大切である。体系的な人材育成システムでは、特に、中小規模の大学に制約が多いことに留意する必要がある。学外の研修機会の活用や他機関との連携・交流等も含めて、自校に相応しい育成システムを工夫する必要がある。また、役職教職員の教育、新任教員研修や教育能力開発を含む教員向け教育の実質化にも取り組む必要がある。次に、上段の自校の使命・理念・将来像について考えてみたい。建学の理念が明確であり、その精神が構成員に受け継がれている場合はそれを拠り所にすることができるが、新たに使命や理念を制定したり、将来像を構想したりする場合、多くの人々の心に落ちる言葉や説得力あるビジョンを打ち出すことは容易ではない。重要なことは、自分たちは何者であり、何を目的に、どこを目指して進んでいるのかを教員・職員や役職・一般を超えて話し合う機会を設け、日々の活動においても考え続けることである。そのプロセスを通して何をなすべきかが見えてきて、それが競争力につながるはずである。下段の共有する価値・重視すべき考えは、バリューやウェイとも呼ばれ、判断や行動の基準となり得るものである。単なる作文や標語で終わらせるのでなく、これらの基準に則って行動したかどうかを人事評価で問うなどして徹底し、組織文化として定着させなければならない。どこを目指し、何を重視して行動するかを共有したうえで、多様な構成員の主体性に委ねる。「優れた組織」づくりは時間がかかるが、大学の持続可能性を高めるために避けることのできない道である。どこを目指し、何を重視して行動するか【参考文献】T・J・ピーターズ、R・H・ウォーターマン(大前研一訳)『エクセレント・カンパニー』講談社、1983ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス(山岡洋一訳)『ビジョナリー・カンパニー-時代を超える生存の原則』日経BP社、1995

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る