カレッジマネジメント209号
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7リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018されるものではない。こうしたところからマインドセットを修正していく必要がある。ただ、こうした問題点が発露することもルーブリックの導入やシラバスの実質化の大きなメリットだ。学生が将来的に身につける学修成果は授業の合計であるわけはない。正課外教育や正課外活動、さらには大学には直接なんの関係もないような様々な経験も、学生個人にとっては成長を促す多様な要因となりうる。ただ、在学中の学生が感じている自らの人生の「成果」は、在学先の入試難易度であることがほとんどで(だから満足度調査は第一志望かどうかに影響を受ける)、在籍する学位プログラムや正課外の諸活動の成果にはなかなか目を向けない。就活が一大イベントとなり、学生にとっては就職先の就職難易度が自らの「学修成果」の役割を果たしてしまうのは避けられない。そうした中、大学側では全てを把握しきれない学生生活を、学生個人が自らの学修成果の一端として把握するきっかけを与えてくれるのがeポートフォリオだ。所属大学においても筆者が担当する内部質保証を実質化するための諸施策の一環として、昨年度よりeポートフォリオを導入した。今のところ稼働率は97%(2017年9月末)を超えており、最終的に完成年度を迎える再来年度には一定の効果を発揮することが見込まれる。このeポートフォリオについてはまだまだ取りかかったばかりで具体的な結果はこれからだが、早く始めるほど効果的だ。学生が振り返りを行うにしても、まずはeポートフォリオ自体に素材を集めることが必要だからである。そうして集積された種々様々な学生の経験は、学生がそれを必要とした時に初めて自らの有用な知見、体験として学生の眼前に立ち現れる。その時初めて、学生たちは自らの大学生活を成長プロセスとして俯瞰で捉え、欲を言えば学位プログラムの有用性、大学の効用にも気がつくのだろう。こうした気づきと振り返りこそ、学生にとっての本当の意味での「学修成果」となる(図1)。学生生活をプロセスとして形成的にとらえ、総体的に学修成果となる。学生にとってはプロセスが大事なのはこれが理由である。米国ではeポートフォリオだけで学会の一日分を使ってしまうほど普及している理由の一部が分かったような気がしている。特集 学修成果の可視化に向けて学生の学修成果採用審査判定授業授業授業授業採用就職企業DPCPAP卒業入学学位合格成績=学習成果学外の様々な生活正課外の大学関連活動成績=学習成果成績=学習成果成績=学習成果学生の学修成果図1 学生にとっての学修の成果

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