カレッジマネジメント209号
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8リクルート カレッジマネジメント209 / Mar. - Apr. 2018ある大学関係者が、大学の成績は社会で通用しないので、それとは別に学修成果の可視化が必要であるといったコメントを出していて、驚いたことがある。もし大学の成績表が社会から評価されないのであれば、我々大学人が真っ先に取り組むべきは成績表の信頼を取り戻すことではなかろうか。そもそも成績評価もまともにできない大学が、どうして突然さらによく分からない「学修成果」なるものを正確に測定できるのか理解に苦しむ。大学人がまず取り組むべきは成績評価の厳格化ではないのか。やるべきことをやらず、本来やるべき努力を怠って、目先を変えて話を誤魔化すというのは本末転倒だ。我々が真っ先に取り組むべきは、「大学の信用」を取り戻すことだ。「卒業時の成果」に焦点化してしまって凝り固まっていること自体が最大の問題の源泉。3つのポリシー、特に卒業認定・学位授与の方針で定める学修成果との整合性を図りたいのは山々だが、先に触れた通りあまりにも杓子定規に数値化すること、特に卒業時の能力を数値化することは限界があるということを認める時だと思われる。教育の成果というものは本来長期的観点で捉えるべきであるということもよく考えるべきである。ここまで学修成果の可視化に関連した現状の整理として事例をいくつか挙げてきた。これらの事例は以上の表にあげた切り口でまとめられる。ここまで取り上げてきたように学修成果についてここで何かを結論づけるというのは無理がある。学修成果の議論がここまで混乱する理由は、それぞれが考える「学修成果」が思い思いに異なってしまうことが最大の理由だ。とは言うものの、できないと言って逃げることが今この場で求められていることではないことも当事者として十分に理解しているつもりである。そこで本章ではこれまでの課題設定を踏まえたうえで、学修成果について主体、射程、対象という3つの切り口からなる構造に基づき整理し、その後幾つかの具体的な成果指標の事例を通じて理解を進めることを目指す。学修成果をどの主体から考えるかを決める必要がある(以下、表2、図1、図2を参照)。まず学生個人を主体とする学修成果では、授業レベルにおいては、学生たちが各授業で学習した成果は成績学修成果の主体、射程、対象解決への糸口:大学の成果の可視化の新しい捉え方卒業時測定への執着大学の信用、成績、学位の信頼性「誰得?」無理やりやらされた「何とかマップ」や「・・アイア〜ル」、関係者以外、誰か読んでくれましたか?「学修成果の可視化」に奪われた時間を研究や教育に回せれば、どれだけの「成果」があったはずか!ないものねだりその3つのポリシー、現在の教職員で対応できますか?学修成果という言葉に踊らされて背伸びしていませんか。まず目の前のシラバスや成績評価に腰を落ちつけて取り組みましょう。手段と目的の混同評価活動は大学マネジメントの一環であってそれ自身が目的ではありません。ましてIRやFDなんて単なる手段の一つ。IRが目的になっていませんか。ルーブリックを作って満足していませんか。学修成果の難しさ今回少し無理をして事例を示しましたが「学修成果とはこれだ」という答えはありません。そこで諦めずに、私達自らが大学ごとの実情に沿った「学修成果」を見つけだす必要があります。卒業時のみに焦点定義論は一旦脇に置いて現実を見た際、DPや学修成果を卒業時のみで測るのは無理がありませんか。そもそも教育の成果は瞬間的には現れません。卒業後の長いスパンでこそ成果も具現化してきます。学生の学修の取り組み授業での学習を実質化するには、授業設計、特にシラバスの実質化と評価基準の明確化が必要です。さらに学修成果を実感するためには振り返りに資するeポートフォリオ等の装置も必要です。表1 浮かび上がった課題

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