カレッジマネジメント233号
16/92

16リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022熊本県立鹿本高等学校は、地域と連携した探究活動に注力してきた学校だ。2019年には「みらい創造科」という新学科を創設。同校ではこれを機に、高校の探究学習の柱である「総合的な探究の時間(以下、総探)」だけでなく、他の教科の授業でも、探究的な学びを推し進めてきた(図1参照)。総探の授業では、1年次に「テーマ設定→情報収集→整理・分析→まとめ・発表」という過程をグループで体験。2年次は個々に興味あるテーマを追い、3年次は「自分は何がしたいか」という進路実現に向けた探究に取り組む。並行して、例えば「国語探究」では、地元の水俣病の問題について「問いを考える」「科学、道徳、法律など多様な観点から考える」ことに挑み、ものの見方・考え方を鍛える。「数学探究」では、自分の探究テーマに数学的にアプローチするためのデータ分析やグラフ表現を学び、「英語探究」では、探究したことを英語論文にまとめ、英語でプレゼンし、海外の学生との意見交換にも挑戦する。さらに全学年において、探究型クロスカリキュラムの学びも体感。物理×体育×情報の「50Mを速く走るには」といった授業や、数学×生物×美術×音楽×情報の「美しさとは何か」といった授業だ。全科目でこうした横断的な探究を進めるようになった背景を、指導教諭の川元隆一氏は次のように語る。「現在の世の中の課題というのは一つの分野だけでは解決できません。高校内でも教科の壁を取り払う必要があります。正解のない問いについて様々な角度や視点から考える中で、生徒一人ひとりの『思考力・表現力・判断力』そして『学びに向かう力』を育成することができます」。一連の授業開発で、中心的な役割を担ったのが「研究開発部」だ。進路指導部や教務部と同じく、学校運営の業務を分担した教員チームの一つとなる。この部の教員が集まって授業のあり方を話し合うほか、週1回は、同メンバーが各学年に散り、各学年団の先生全員で探究活動について議論しているという。時間割に組み込み、あらかじめその時間を各教科の学びを、探究に生かせるように教員同士で未完成の指導案を出し合う鹿本高等学校指導教諭川元隆一氏鹿本高等学校研究開発部森 孝文氏鹿本高等学校研究開発部冨田枝里氏熊本県立鹿本高等学校全科目による横断的な探究を推進多角的な視点から自分や社会の未来を思い描く創立1896年/普通科・みらい創造科/生徒数537人(男子308人、女子229人)/進路状況(2022年3月実績)大学122人、短大9人、専門学校37人、その他34人PROFILE※学校資料をもとに編集部で作成。鹿本高等学校はこの一連のプログラム開発を「STEMA教育」の展開として進めている※STI for SDGsとは、SDGs達成のための科学技術イノベーション(Science,Technology and Innovation for SDGs)のこと図1 横断的な探究プログラムの全体像科学的発想力の育成探究型クロスカリキュラム開発*全科目クロスカリキュラム(1年生はTT形式・リレー形式、2年生は教科横断型ジグソー法の授業も。3年生は「問い」をもとにおのおのが教科のつながりを考える授業も行う)1年:多様な体験(探究準備)2年:興味を探究(探究実践)3年:進路実現へ(探究展開)科学的探究力の育成探究科目開発*「総合的な探究の時間」(1年生はグループ探究、2年生から個人探究)*「スポーツ健康探究」(みらい創造科スポーツ科学コース)*「国語探究」「数学探究」「英語探究」(みらい創造科グローバル探究コース)科学的共創力の育成地域・国内・海外との連携*地元企業の協力によるSTI for SDGs(※)の理解講座×フィールドワーク*海外大学とのSDGs研究国際交流(Zoom活用)、海外研修*大学や企業の研究室の訪問・共同研究・学会発表  etc.イノベーション人材

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る