カレッジマネジメント233号
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18リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022青翔開智中学校・高等学校は、鳥取市内に2014年に開校した私立の中高一貫校だ。建学の精神に「探究」「共成(共に成長する)」「飛躍」を掲げており、図1のように6年間の「探究基礎」の授業を展開。また、課題発見や課題解決に必要な資質・能力を「探究スキル」と位置づけ、他教科でもそのスキルを伸ばすことを重視して、授業の開発・実践を行っている。実は開校当時、「探究基礎」の授業は、高校2年生までの設計だった。高校3年生は受験など次の進路に向かう準備期間という想定からだ。しかし、それでは「探究」と「進路」を分けているようでもある。そこで全6年間のカリキュラムに再構築。探究を踏まえた進路支援にもより本腰を入れていく。高校2年次の個人探究では、生徒一人ひとりに担当教員がつき、1年かけて論文完成まで伴走するのだが、そうして生徒への理解を深めた教員が基本はそのまま進路決定までサポートすることにしたのだ(生徒の志望学部・学科によっては教員間で担当を引き継ぐこともある)。さらに同校は、大学等の合格実績(学部名等含む)を、各生徒の探究論文のテーマとセットで公表している。そこに込めた思いを進路支援主任の森川真吾氏は次のように語る。「探究活動に本気であることを知ってほしい、という思いが一つにはあります。また、本校としては『どの大学に行ったか』をアピールするつもりはなく、それよりも『各生徒がこの学校で何を学び、それを卒業後の人生にどう接続しようとしているか』を、世間の皆さんに見ていただきたいと考えているのです」。「探究」と「進路選択」の接続を支えるのが、個々の活動の進展をこまやかに把握していくシステムだ。個人探究では教員1人につき3~5人の生徒を担当するのだが、それぞれの生徒と少なくとも週1回はディスカッションを行う。その際に教員側で見取ったことをクラウド上に記録できるフォーマットがあり、蓄積したデータはほかの教員とも共有。また、生徒のほうも月1回、アンケートに答えるようにして活動の進捗や困りごとをオンライン上で記録。生徒の了解の下、情報はオープンにされていて、どの教員でも確認できるという。こうした仕組みで、生徒がどんなテーマを追いかけ、どう成長したかを教員間で共有し、その探究的な学びを進路実現にも活かせるよう支援していくのだ。なお、生徒の月1回の報告では、探究活動における評価の探究したことがその後の人生につながるように探究活動による生徒の変容を全教員で共有青翔開智中学校・高等学校進路支援主任森川真吾氏青翔開智中学校・高等学校探究主任田村幹樹氏青翔開智中学校・高等学校「探究」と「進路選択」の接続に注力生徒の探究活動を踏まえて進路をサポート創立2014年/普通科/生徒数272人(男子105人、女子167人)/進路状況(2022年3月実績)卒業生46人中、大学40人(海外大3人含む)、その他6人PROFILE探究基礎の授業で思考や議論のための手法も学ぶ「校舎全体が図書館」を謳い、校内各所に本棚を設置外部の人を招いた全校規模の探究の発表も毎年開催

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