カレッジマネジメント233号
19/92

19リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022特集01大学における探究2.0観点をまとめたルーブリックも活用している。では、そのルーブリックは何を土台に作成されたのか。建学の精神である「探究」「共成」「飛躍」はどんな資質を伸ばせば実現するのか、その点を教員間で議論してまとめた図2の表だ。探究主任の田村幹樹氏によると、「ずっと使い続ける表というよりは、教員同士で『この力でいいのか』と話し合う材料にもして、適宜内容を変えていくもの」という位置づけだという。その田村氏は、「今では生徒にとっても、探究が真ん中にあるな」と感じているそうだ。「授業だけでなく、それ以外でも、生徒が自分でやりたいことを見つけて、学外のプロジェクトに参加したり、プロジェクトを立ち上げたり、人を集めたりと、自発的な探究が学校の内外にあふれるようになったのです」。探究と進路選択が結びついた生徒も多い。探究論文で「カラフルらっきょうの販売方法」を模索した生徒が、食マネジ自分の関心や強みを生かせる進学先を志向図2 青翔開智の「育てたい資質」と「評価項目」図1 6年間の探究活動階層 1 階層 2階層 3 タグ探 究課題設定疑問・課題を見出すことができる1課題解決に必要な仮説を立てることができる課題解決に必要な調査の設計をすることができる2情報リテラシー仮説の検証に必要となる適切な情報を集めることができる3思考ツールを活用して集めた情報を分析することができる4仮説を検証するために収集した情報を適切に管理することができる5クリティカルシンキング情報の信ぴょう性を主体的に判断することができる6多角的・客観的な視点を持ち自らの判断を内省することができる7ロジカルシンキングものごとを筋道立てて考えることができる8帰納・演繹を使って仮説検証をすることができる9データサイエンスデータを統計的に処理することができる10統計的に処理されたデータを考察することができる11表現資料作成等に必要となるアプリケーションを活用することができる12デバイスやアプリをコントロールするためにプログラミングを活用することができる13思考を視覚的に表現することができる14思考を的確な文章で表現することができる15成果物を使って共感を得る発表をすることができる16知識・概念領域分野に関する知識・概念が形成されている17共 成セルフコントロール公共の精神や社会規範の意識を持っている18状況を判断してとるべき行動を選択しようとする19まきこみ力チームでの取り組みを主導しリーダーシップを発揮しようとする20他者に共感しそのことを表現しようとする21求心力(図らずとも人がよってくる・信頼されている)がある22帰属意識成果を他者へ還元しようとする23社会(チーム)を構成している一員であるという意識をもっている24ボーダレス感覚国際感覚が身についている25他者を受容し敬意を持って接しようとする26広い視野で物事をみようとする27飛 躍バイタリティ好き・やりたいという気持ちを持っている28意外性を大切にし他者の期待・想像を超える結果を出そうとする29既存のものを組み合わせて新しいものを創り出そうとする30答えのないものに対し自身なりの答えを見つけようとする31継続力・持続力をもっている32ビジョンものごとの判断や行動に自分がどうありたいかをもっている33学ぶことへの意味・意義をもっている34自身のことを客観的に理解しようとする35アントレプレナーシップ失敗を恐れず何事にもチャレンジしようとする36どんな環境や状況においても心の余裕を持ち楽しさを見出そうとする37中学1年 探究基礎Ⅰプランニング講座「鳥取市に魅力的な◯◯を創ろう」※企画・提案の楽しさにふれる中学2年 探究基礎Ⅱ課題解決型職場体験「鳥取の経営者へ改善案をプレゼン」※デザイン思考の活用中学3年 探究基礎Ⅲ社会課題解決ゼミ「世界の課題に目を向けよう」※SDGsを切り口に高校1年 探究基礎Ⅳデータ分析+AI活用ゼミ「人口減少を人工知能で解決しよう」※テクノロジーを使った課題解決高校2年 探究基礎Ⅴ探究基礎修了論文※自分の興味・関心と社会課題を融合 個人論文の執筆から発表まで高校3年 探究基礎Ⅵ探究基礎から進路デザインへ※個人論文の追加調査や加筆修正 合わせて実現したい進路の模索学校資料をもとに編集部で作成。中学1~2年を「クリエイティブフェーズ」、中学3年~高校1年を「アカデミックフェーズ」、高校2~3年を「パーソナルフェーズ」と置いているメント学部に進み、「微生物燃料電池の発電効率」を研究した生徒が、生物資源科学部に進む、といったように。なかには一見つながらない生徒もいるが、その場合も「活動のなかで育んだ『探究スキル』が生きている」と森川氏は捉えている。「看護師を目指していた生徒が、鳥取出身で大好きな漫画家をどうしても探究したい、といってそのテーマに没頭したこともあります。その生徒は志望大学の看護学科に合格し、今は専門分野の探究をがんばっています」。6年間の探究活動で、自分の核となるテーマや強みを育んだ生徒が多いので、進路選択では、そのテーマを掘り下げられる大学や、総合型選抜などで強みを評価してくれる大学に挑戦する生徒が増えている。こうした探究を一層充実させられるように、田村氏は「高校と大学の単位互換など、高大接続でより特色のある教育を実現できるとうれしいです」という夢も思い描いている。(文/松井大助)

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る