カレッジマネジメント233号
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20リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022──まず、2023年度設置予定の教育探究科学群について教えてください。教育探究科学群は本学の7つ目の学群です。探究を起点にした新たな教育学部を作ることがその中核にあります。教育学とは、個人の成長、学びの発達を司る学問です。つまり、人間のポテンシャルをどう上げるかを科学するもの。個人の問いを起点とする探究活動が、その展開と成長を科学する教育学を依って立つものにできれば、高校までの探究を学術的に引き上げるものにできるのではないか。そう考えました。自分の問いを持つ子どもたちが問いの探索を進めていく時、教科科目を超えた活動において何を得てどう昇華していくのか。そうしたプロセスを根本的に後押ししてくれるのは教育学に基づく成長ではないか。教育学の知見を得た学生が問いを軸にそれを活用し、問いをリサーチクエスチョンに昇華していく。それを念頭にチームでインプット・アウトプットを繰り返すことで、大学らしい探究スパイラルが回っていくのではないか。──探究活動に振り切った教育課程を組むうえでの工夫はどんなものがありますか。教育探究科学群は教育学の知見を学生が使うことに重きを置いています。学問パッケージとしての教育学を学ぶことが目的ではない。そうした活動に身を投じる設計にするには、資格取得目的・教職課程ありきの従来型の教育学部体系では物理的に不可能です。また、学群設置の目的が「探究を起点にした新たな教育学部を作ること」である以上、教職のために探究活動の時間が削られることがあってはならない。学生がカリキュラムの中で思いっきり教育学に基づく探究をできるようにしたい。そのため、教職課程は設けていません。そうした課程であることに戸惑う方もいますが、本学としては既存の教育学部のアップデートを図っている気概なので、大いに新しい議論が起こってほしいですね。新しい学群ができるプロセスもどんどん外に見せていきたいと考えています。──新学習指導要領の文脈で言い換えれば、リサーチクエ探究による大学経営の新たな価値創出大学経営者は「探究」をどのように捉えればよいのだろうか。その参考に、桜美林大学(以下、桜美林)をご紹介したい。桜美林は、ディスカバ!を軸にしたキャリア支援・高大接続活動(※1)、2021年度から実施されている探究入試(※2)等を展開しており、2023年度には教育探究科学群を設置予定で、高校までの探究を大学教育につなぐ動きを多面的に手掛けている。「探究活動を大学教育に接続する」ことを前面に押し出す大学は全国的に見てもまだ少なく、新課程導入による学びのパラダイムシフト著しい高校からは大変好評だという。一方で、一定の経済合理性も必要となるであろう大学経営において、探究はどのような意味を持つのか。「個別最適な学び」の実現と「大学経営」の両立をテーマに、畑山浩昭学長にインタビューした。Special Interview視点提供インタビュー探究に振り切った教育課程を構築1962年生まれ。ノースカロライナ大学グリーンズボロ―校大学院博士課程修了(Ph.D)、マサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了(MBA)。2006年より教授。専門は文学、経営学。副学長等を経て、2018年4月、学長に就任。文部科学省 大学設置・学校法人審査会(大学設置分科会)委員、公益財団法人大学基準協会常務理事、公益財団法人日本高等教育評価機構評議員、私立大学協会国際交流委員等を務める。桜美林大学 学長 畑山浩昭 氏

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