カレッジマネジメント233号
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23リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022走っている状態を維持したい。それが改革のレジリエンスにもなります。今までのやり方の延長線上ではダメです。日本はそれで行き詰まっているのだから。経営者は本質がどこにあるのかを常に意識しないといけない。GAFAが企業の中に大学を作る時代、大学の存在意義が改めて問われている。探究もSociety5.0も、本質が分かっていないとうまくいきません。──2021年に創立100周年を迎え、今後20年の新たな価値創出の姿を描くべく変革と進化をコアバリューとした新たな長期ビジョンを策定されました。長期ビジョン“J.F.Oberlin Schools 2040-Unique & Sharp-”では、迅速で柔軟な組織運営のもと、ユニークな発想で超スマート社会に対応できる人材を育成、生きた学びと研究で日本をリードする「主体的で躍動感ある教育研究」を標榜しました。また、世界から人の集まる学びの場として、世界中でどんな時でも学而事人の精神で活躍する人材を育成する、「多様な価値観を尊重するコミュニティ」を作り、次の100年に向けたブランディング戦略を展開します。本学は唯一無二の個性的な教育で変革社会をリードする人材を育成し、イノベーションとともにより進化して、世界中がキャンパスの環境を目指すべく、新たなことに積極的にチャレンジすることで持続的な発展を志向したい。学園を社会変化に適応・進化させるべく、教職員一丸となって学園を改革していきます。こうした全体構想に支えられ、様々な改革が同時並行で進んでいます。リベラルアーツ学群では入学すると人文・社会・自然領域の3つから自分の学びの中心となる1領域を選択し、3年次には3領域+統合領域(新設)の4つのうち異なる2つのカテゴリからメジャー(主専攻)とマイナー(副専攻)を選択する仕組みに変えました。30のプログラムを掛け合わせるアプローチの幅広さが魅力です。大学院では、縦型の研究科ではなく、国際学術研究科のなかに7つの学位プログラムを置く「学位プログラム制」に移行しました。異なる分野を横断的に学ぶことができ、時代に即した融合的研究が可能になりました。長期ビジョンの「ユニーク&シャープ」の観点から大学院で提供できる価値とは何かを考えた結果がこの改革です。大学は社会の公器として、学内のエンロールメントだけでなく、初等・中等教育と社会をつなぐ動きをしなければいけません。では、どのような軸足でそれを実現するのか。本学は全学として、探究に軸足を置いて、社会に価値を提供していくことを決めたのです。学生本位の教育を実現し、学生が自分の道を歩み始めることができるように支援し、学生がそれぞれのタイミングで開花した時に、行動できる材料としての専門性がたくさんポケットに入っている状態にしてあげたいですね。──探究が高大社できちんとつながるかで、探究の価値が決まるわけですね。探究について、高校で先生方が迷われるのは教科的評価ができないという点が大きい。プロセスは評価できるが、探究活動の結果出てきたアウトプットは、教科的評価が効きません。本学はそこに、大学だからこそのフィールドの大きさ、専門性の付与に加え、多様性の中でアウトプットを出すことで磨き続けるスキームを提供したい。大学としてそうしたポイントを決めてブランド化することで、一時的な数の増減等ではないリターンが経営側にもあります。各学問領域でとがった大学になれば、それが大学に資産として帰ってくる。それらが、これからの大学創りの布石となる投資であると思います。個別最適化した学びは、ST比は高いですが、学生が真に成長実感を持てれば、それが社会からの評価になる。翻ってコストパフォーマンスは良くなるはずです。学生が本当に育つための大学になっているかを自問自答することです。その経営に終わりはありません。民間経営の感覚が通じることも多い一方で、大学のインジケーター設定の仕方は民間企業とはだいぶ違います。営業努力で収益を上げることはできますが、無尽蔵に入学者を確保することはできないので、KPI設定と調整の難易度が高い。持続可能な経営を考えることは学生のためでもある。そして、学生のための教育研究を展開できなければ、持続可能な経営にはならない。志願者数だけでビジネスできる時代はもう終わっているでしょう。(インタビュー・文/鹿島 梓)※1https://souken.shingakunet.com/publication/.assets/2019_RCM219_30.pdf※2https://souken.shingakunet.com/higher/2021/06/spiral-5c58.html特集01大学における探究2.0

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