カレッジマネジメント233号
30/92

30リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022島根大学(以下、島大)が2021年度入試から総合型選抜「へるん入試」を導入し、「探究」を軸に高大の学びをつなげる取り組みとして注目されている。「へるん入試」では、大学入学共通テストは課さず、高校生が持つ「学びのタネ(学びの原動力となる好奇心や探究心)」が評価の対象として重視される。島大の2022年度入試における「へるん入試」の募集人員は257人と入学定員の2割を超える。従来とは異なる視点で学生を集め、育てる「へるん入試」に島大が注力するのはなぜか。入試設計の意図や、「学びのタネ」を大学で伸ばす仕組みについて服部泰直学長に伺った。大学憲章にうたう「地域に根ざし、地域社会から世界に発信する個性輝く大学」を目指す島大。その一環として、2016年度入試より全学部で「地域貢献人材育成入試」を実施していた。「地域貢献人材育成入試」は、地域枠入試と地域貢献人材を育成する教育コースでの入学後の学びに一貫性を持たせたプログラムで、単に地元の高校生を受け入れるのではなく「地域への思い(自分なりの課題意識や意欲)」を持った生徒の選抜が目的だった。そのため高校生の「自らの問題意識の明確化」と「島根大学で学べることへの理解」を促す面談会を出願前の段階で実施する等、一連のプロセスを通して「自分が何を学びたいのか」を受験生に熟考してもらうことを意識して制度設計された。本選抜で入学した学生には学問に対する好奇心や探究心があることから主体的に学ぶ人材が多く、学内の様々な活動でリーダーシップを発揮し、ほかの学生に対しても好影響を与えているという。この経験から「学びのタネ」の重要性に着目し、「地域」を超えた新たな入試として誕生したのが「へるん入試」だ。「へるん入試」には「一般型」と特定の分野に特化した「特定型」があり、「地域貢献人材育成入試」は後者のうち「地域志向入試(島根県・鳥取県枠)」に踏襲されている。「へるん入試」の最大の特色は、「出願前教育・入学前教育・入学後教育」の3ステップで生徒の「学びのタネ」を育てていく「育成型入試」であることだ(図)。「出願前教育」の目玉は6月〜9月に行う面談会。参加は出願要件ではなく、生徒のやりたいことと島大で学べることとのミスマッチが起こらないようにする目的とともに、「地域をもっと元気にしたい」といった生徒の思いを軸にして対話をする内容で、何度も参加する高校生もいる。出願書類は「調査書」「クローズアップシート」「志望理由書」の3点。試験では面接や「読解・表現力試験」等が行われ、配点は調査書・クローズアップシート(80点)、読解・表現力試験(100点)、志望理由書を用いた面接(100点)の合計280点。これらに総合理工学部(物理・マテリアル工学科、物質化学科、知能情報デザイン学科)では「理数基礎テス学びの原動力となる好奇心・探究心の重要性に着目高校までに培った力を見出し、育てる「育成型入試」学長 服部泰直 氏島根大学出願前の段階から高校生の好奇心・探究心を引き出し大学の学びにつなげる探究の視点を発芽させる・伸ばす大学Case Studies_4

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る