カレッジマネジメント233号
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37リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022なっていくのはZ世代。若いときに身につけた生活習慣や消費習慣は年齢を重ねたからといって大きく変わることは考えづらいため、今、企業は、Z世代の若者に目を向け始めています。そのため、人口が少ないとはいえ、重要なマーケティング対象になりつつあるというのが現状です」(原田氏)。また、Z世代は、ゆとり教育が見直され、2011~13年に導入された新学習指導要領による教育を受けてきた「脱ゆとり世代」と重なる。上の世代と比べると授業時間は長くなっており、小中高の学習環境は異なっている。就職環境に目を向けると、リーマンショックによる就職難も経験した「さとり世代」と比べると好転している。「とにかく若者の人口が減っていますから、企業にとってZ世代の希少価値が高くなっています。コロナ禍でも新卒採用を増やした企業も多いです。そのため、Z世代の就職に対する危機意識は薄いですね。『さほど優秀でない先輩でも就職できているのだから自分もなんとかなるだろう』と楽観的に考えている大学生が多く、『そんなことでは就職できないぞ』という脅しは彼ら彼女らには通用しなくなっています。また、入社後も、気に入らないことがあればすぐに辞めてしまう傾向も強いです」(原田氏)。さらに、Z世代は、デジタルネイティブであることに加え、スマホ第一世代であることも注目すべきポイントだろう。後述するように、それによって利用するSNSにも変化が見られるようになっている。以上が時代背景を踏まえたZ世代の位置づけと社会状況から分析可能な大まかな傾向だ。しかし、これだけではZ世代の本質は見えてこない。前述の時代背景を踏まえて、この世代の価値観や行動は、前の世代からどのように変化しているのか。原田氏は、「チル&ミー」という言葉で、その特徴を表現する。「『チル』とは、もともと米国発のスラングで、『Chill out』の略です。日本語で表すと『まったりする』という表現が最も近いでしょう。Z世代の若者はよく『チルってる』という言い方をしますね。不安や競争の少ない環境で育ってきた彼ら彼女らは、マイペースに居心地良く過ごすこと、つまり『チル』を大切にする傾向が強いですね」(原田氏)。同時に、SNSの発達と普及によって、誰でも容易に自己発信ができるようになったことで、Z世代は一見見えにくい過剰な自己意識をもつようになってきた。原田氏はこれを「ミー意識」と名づけている。図2は主要なSNSの年代別の利用率を集計したものだ。Facebookは30代の利用率が最も高く、Twitterは20代、10代が高い。InstagramやTikTokも10代の利用率の高さが目立つ。以上の傾向は、若者はその時代時代で最先端のSNSに飛びつく傾向があるということでも説明がつくが、注目したいのは各SNSの特性の違いだ。30代に人気の高いFacebook、また、現在の30代、40代がかつて利用していたmixiは「人とのつながり」を重視した上の世代と比べて就職環境は恵まれている「チル&ミー」が日本のZ世代を読み解くキーワード特集02Z世代の進路選択とコミュニケーション戦略全年代(N=1500)10代(N=142)20代(N=213)30代(N=250)40代(N=326)50代(N=287)60代(N=282)男性(N=759)女性(N=741)LINE90.3 93.7 97.7 95.6 96.6 85.4 76.2 88.0 92.7 Twitter42.3 67.6 79.8 48.4 38.0 29.6 13.5 42.7 41.8 Facebook31.9 19.0 33.8 48.0 39.0 26.8 19.9 32.4 31.4 Instagram42.3 69.0 68.1 55.6 38.7 30.3 13.8 35.3 49.4 mixi2.3 2.1 3.8 3.6 3.4 0.7 0.4 2.2 2.3 GREE1.3 2.1 4.2 1.2 0.6 1.0 0.0 1.8 0.8 Mobage2.7 4.9 6.6 2.4 0.9 2.4 1.4 3.8 1.6 Snapchat1.5 4.9 5.6 0.4 0.3 0.3 0.4 1.1 2.0 TikTok17.3 57.7 28.6 16.0 11.7 7.7 6.0 15.3 19.4 YouTube85.2 96.5 97.2 94.0 92.0 81.2 58.9 87.9 82.5 ニコニコ動画14.5 26.8 28.2 14.8 12.0 7.7 7.8 17.9 11.1 SNS別の利用率は年代によって顕著な違いがある。Facebookは30代の利用率が48.0%と最も高いのに対して、Twitterは20代が79.8%でトップ。それに続くのは10代の67.6%。Instagramも10代が69.0%と最も高く、続くのが20代の68.1%。TikTokは10代が57.7%と圧倒的に高い出典:令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 令和3年8月報告書(総務省情報通信政策研究所)図2 主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の年代別の利用率

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