カレッジマネジメント233号
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38リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022SNS。これに対して、10代、20代に人気の、Twitter、Instagram、TikTokなどは、つながり以上に「自己発信」を重視したSNSといえる。これらのSNSによる自己発信が日常化したZ世代は、自らの発信に対して、より多くの「いいね」をもらいたいという自己承認欲求が高くなっている。原田氏はこれが、この世代のミー意識を醸成した要因の一つだと指摘する。「もう一つ、重要な要素が、保護者との関係が深くなっていることです。Z世代の保護者はとにかく優しくて怒らない。子どもの意志を尊重し、自由にさせる育て方をしている家庭が多いですね。また、少子化の影響で、6ポケッツ、8ポケッツと言われるように、1人の子どもに祖父母や叔父叔母までもがお金を出すようになっています。お金をかけて大切に育てられたことが、Z世代の子どもたちのプチ万能感を醸成し、過剰な自意識につながっています」(原田氏)。次にZ世代の中でも、現在の大学生以上の世代とその下の高校生との間で、価値観や行動に違いがあるのかについても触れておきたい。原田氏は、「本質的な価値観に大きな違いはない」と言うが、前述のように、利用するSNSに関しては年齢が下がるごとに顕著に違いが表れるという。「10代のTikTok利用率が抜けて高いことでも分かるように、今の高校生はテキストや静止画ではなく、動画から情報を得る傾向が非常に強くなっています。その点は、今の大学3年、4年あたりの年代と比べても明確に違いがあります。つまり、高校生に何かを訴求しようと思ったら、TikTokやYouTubeを中心とする動画メディアをいかに活用するかということが重要になっているのです。まだまだTikTokを活用できている大学は少ないですから、その点は情報発信に関する改善点といえるでしょう」(原田氏)。では、ここまで述べてきたようなZ世代の価値観や特性を大人世代は正しく理解できているのだろうか。マスコミや企業人は、図3に示したように、Z世代の特徴として、社会貢献意識やSDGs意識の高さを挙げることが多いが、実際に多くのZ世代と接し、リサーチを重ねてきた原田氏はこの見方を否定する。確かに、意識の高い若者は社会に目を向けているし、若くして社会起業家として活躍しているような例もある。しかし、それはあくまでごく一握りだという。「今の日本のZ世代は、他の先進国と比較しても政治意識は極めて低いですし、SDGs意識も低いです。マスコミは偏った優秀な学生を見て、Z世代全体がSDGs意識が高いかのように発信していますが、大多数の実態とは違います。例えば、日本の若者はTikTokやInstagramで映えるおしゃれなエコグッズは買いますが、それが環境のために1000円高かったとしたら買いません。北欧の若者はそれでも買うんです。ですから、企業などが日本の若者を惹きつける目的でSDGs訴求に取り組むのは的外れです」(原田氏)。原田氏の指摘を裏付けるデータが図4だ。日本、米国、中国、韓国の高校生の社会参加意識を尋ねたこの調査を見ると、「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」について、YESと回答した高校生の割合高校生に人気なのはTikTokに代表される動画SNS日本のZ世代のSDGs意識は高くない!?2016年の米国大統領選挙では、都市部の有権者の意見に左右され、マスコミは米国民のトランプ支持の実態を見誤った。同じような「トランプ現象」が、今、日本のZ世代への評価についても起きている図3 上の世代が若者の実像を誤解する「トランプ現象」が起きている

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