カレッジマネジメント233号
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39リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022は日本が圧倒的に低い。一方で、「政治や社会より自分のまわりのことが重要だ」「現状を変えるより、そのまま受け入れるほうがよい」といった項目は、日本が最も高い。同じようなことは、グローバル意識についてもいえる。ミレニアル世代と比べてグローバル化が進んでいる今の社会に生きるZ世代のグローバル意識も、実際には決して高くない。情報環境はグローバル化していても、Z世代の関心はSNSでつながる狭いコミュニティーに限定される。選択肢自体は広がっているはずのZ世代のキャリア観についても、原田氏は次のように指摘する。「前述のように、保護者は子どもの意志を尊重していますが、その結果、やりたいことを自ら選択し、行動するのはそれができる一部の若者に過ぎません。むしろ、保護者との関係が深まったことで、保護者が勧める企業や仕事を選択する傾向が強くなっています」。一方、上の世代と比較してZ世代の強みといえるのが発信力の強さや動画メディアへの親和性だという。「発信力は日本人が弱みとしていた部分なので、グローバル社会で生きていくうえでの武器となりえます。また、今後、動画による情報発信がさらに社会全体で拡大していくなら、10代からTikTokに親しんでいるZ世代の活躍の機会が増えるかもしれません」(原田氏)。以上のようなZ世代の特徴を踏まえ、彼ら彼女らの強みをどのように伸ばしていくかは、大学にとっては大きな課題だ。原田氏は、芝浦工業大学などでの授業においては、旧来型のテキスト中心の指導は行わず、動画で伝えたり、動画を作らせたりする新たな教育に取り組んでいるという。原田氏自身、自らの教育を「社会の変化を見据えた実験」だと言うが、旧来型の価値観を押し付ける教育が「チル&ミー」の世代には響きにくいことは事実だろう。その意味で、Z世代を研究し、その本質を正しく理解することは、大学教育を見つめ直すために極めて重要となるだろう。(文/伊藤敬太郎)j.国のために尽くしたいと思うi.高校生でも社会をよくしていけると思うh.他人のことで自分の時間をとられたくないg.政治や社会の問題を考えるのは面倒であるf.社会問題は自分の生活とは関係ないことだと思うe.現状を変えようとするよりも、そのまま受け入れるほうがよいd.政治や社会より自分のまわりのことが重要だc.私個人の力では政府の決定に影響を与えられないb.社会のことはとても複雑で、私は関与したくないa.自分の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない(%)35.470.579.669.252.056.741.453.083.076.259.464.670.459.429.466.545.632.235.842.417.130.415.235.550.748.026.948.2 47.240.052.364.278.579.466.350.584.794.952.224.5日本米国中国韓国情報環境は恵まれていても視野は狭い特集02Z世代の進路選択とコミュニケーション戦略日本、米国、中国、韓国の4カ国で調査。日本の高校生は自己効力感の低さや「社会よりも自分」という意識が相対的に目立ち、原田氏の指摘する「チル&ミー」を象徴する結果となっている出典:高校生の社会参加に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-(令和3年6月発行)図4 日本の高校生の社会参加への意識は低い

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